
アメリカでいま一番イケてるポルシェのコレクターは、間違いなくマグナス・ウォーカーでしょう。ドレッドヘアにパンキーファッション、さらにはタトゥーという、従来の「高級車オーナー」のイメージを覆すヒゲ男、ポルシェ好きでなくともどこかで見たことがあるのではないでしょうか。「クルマは飾るものではなく、走らせるもの」という強い信念を持ち、傷や汚れを気にせずガンガン走り回っていることも有名です。そんな彼が築き上げたコレクションの一部をオークションに放出したことが発表されたので、気になるポルシェをセレクトしてみました。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
ポルシェ911 カレラ「フラットノーズ」ワイドボディコンバージョン(1974) クレーマーレーシング風935仕立て
マグナス・ウォーカーが初めて手に入れたポルシェは、1992年、彼が25歳の時に買った911フラットノーズだったとのこと。当時、ポルシェのオプションとして純正フラットノーズがラインナップされていましたが、アメリカではコンバージョンキットで改造したもののほうが圧倒的に見つけやすかったのだとか。
売りに出されたのは2台目に買ったフラットノーズですが、これは製造元から連絡があり、ご覧の通りクレーマーレーシングの935ロードバージョンにほど近いコンバージョンが大いに気に入られたとのこと。たしかに、リヤウィングはグループ5仕様で見るものを圧倒する迫力だし、リヤフェンダー後部の処理も935そのもの。
もっとも、 エンジンはいささかおとなしく、もともと載せていた911Eの2.4リッターユニットを2.7リッターのRS仕様にカスタムしています。それでも、FRPボディがそこそこ軽量なのか、ウォーカーは「よく走る」とコメント。なお、指値は7万5000~10万ドル(約1200~1600万円)となっていました。
1974年の911Eをベースにアメリカ国内で935仕様にコンバージョンされた1台。ウォーカーにとって2台目のフラットノーズ911でした。
ポルシェのエクスクルーシブメニューとは違い、クレーマーレーシングの935に近いボディで、ウィングやリヤフェンダーの迫力は圧巻です。
ポルシェ911 GT3(2004) マニア好みのブルモス・ポルシェを再現
「2016年から倉庫の屋根が雨漏りするようになった」とウォーカーが冗談めかしていうのは、この年に初めて水冷ポルシェ、すなわち911GT3を手に入れたから。
それまで、空冷911だけを集めていたのですが、「まるで911カレラRS 2.7を強化したような感じで、パワーが増えていて、すべてが強化されているが、ストリート向けのレーシングカーとしてちょうど良いバランス」に惚れ込んでの購入。
注目すべきはウォーカーのセンスで施したペイントの数々でしょう。往時のレーシングカー風にボンネットはマットブラック、フロントリップはオレンジ色、リヤクォーターからフロントフェンダーまで、ブルモス・ポルシェ風のツートンブルーストライプで、まさにストリートレーサーのルックスを完成させています。ちなみに、ブルモスはポルシェのセミワークスチームで、ル・マンなどで大活躍したファクトリー。
こちらの指値は10万~12万5000ドル(約1600万~2000万円)と、日本国内の相場からするとなかなかのお買い得(?)価格。
2004年モデルの911GT3は、ウォーカーが初めて手に入れた水冷911。有力プライベーターのブルモスをイメージしたカラーリングがマニア心をくすぐります。
GTウィングと呼ばれたGT3専用ウィングも健在。ウォーカーは1973年のRSを強化したようなポルシェだと絶賛しています。
ポルシェ911S(1967) 由緒正しきショートホイールベースのSモデル
1967年はウォーカーの生まれ年だそうで、この年の911には思い入れが深かったそうです。が、手に入れた2000年代初頭に1967年モデルは希少車となっていて、なかなか欲しくなる個体が見つからなかったのだとか。
ようやく見つけた911Sは「ターボ風のリヤフェンダーに改造されていた」もので、安くは買えたもののどうにも気に入らず、ノーマルフェンダーを探し出して「ショートホイールベース本来の美しいライン」を復活させたのでした。また、この年のSは2.0リッターと2.3リッターの端境期にあったようで、ウォーカーは「運よく」2.3リッターユニットに当たったのでした。
そして、ウォーカー好みのレストアが施され、1960年代のファクトリー風ペイント、ゼッケンサークルによってクラシカルな911レーサーに仕上がりました。内装を見れば、これまた当時風のタータンチェックに張り替えられたバケットシートが雰囲気を盛り上げてくれるはず。
指値は15万~20万ドル(約2300万~3100万円)と、クラシカルな911Sとしては相場並みといったところでした。
クラシカルなルックスの911Sはウォーカーと同い年の1967年モデル。ショートホイールベース、2.3リッターユニットを搭載したレアなモデル。
元ファッションデザイナーだったウォーカーだけに、インテリアへのこだわりも抜群で、バケットシートは当時らしいチェック柄でレストア。
ポルシェ924ターボ(1984) 最初のロットでアメリカに上陸した貴重品
FRポルシェもまたウォーカーの大好物で、こちらはデビュー当時600台限定で北米に輸入された最初の924ターボ。注目すべきはオプションコード420とされた仕様で、LSD、エアコン、パワーミラー、リアワイパー、そして取り外し可能なサンルーフと全部載せ!
しかも、オリジナルとなるブラック&ホワイトのパシャというのもオールドファンにはたまらないインテリアでしょう。サードパーティでリプロダクションのチェック生地はあるものの、パシャ柄は見当たりませんので、これだけでもお値打ちといって差し支えないでしょう。
指値は2万~2万5000ドル(約312~390万円)と、ウォーカーコレクションの中ではボトムラインに近く、内外装のコンディションを考えればとてもお買い得な1台となっていました。
シルバーとチャコールの2トーンもデビュー当時のオプションだった924ターボ。高コンディションながら、2万ドルほどの価格は超お買い得でしょう。
白と黒のチェッカー模様はパシャ柄と呼ばれ、当時のポルシェではポピュラーなもの。ですが、今となってはじつに貴重な存在です。
その他のコレクションも含めたギャラリー
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