
プラモデルの値段が軒並み高騰しています。物価高や人件費といったコストの値上がり、プラモ人口の減少といった逆風には抗えないということでしょうが、模型少年&少女だった方々にとってはなんとも世知辛いお話。ですが、中には逆風をものともしないガチ勢もチラホラと存在する様子。ずばり、フェラーリ界隈のスケールモデルだけはF1さながらにグイグイ突っ走っているのです。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
F1チームが正式にオーダーするほどの完成度──フォーミュラファクトリー製 1/1「フェラーリF2004」
言うまでもなく、シューマッハが2004年にタイトルを獲得したF1マシンですが、スケールは1/1の実物大。イベントなどで散見できるエンジンレスモデルというもので、ギヤボックスや電装などのメカが省かれています。
しかしながら、グラスファイバー製のボディはノーズコーンやリヤウィングなどが実車同様に取り外し可能だったり、タイヤもブリヂストン製の本物を採用するなどパっと見はリアルマシンと見分けがつかないほど。圧巻なのはコクピットで、レーシングシートやステアリング、ひいてはハーネスまで装備するという徹底ぶり。
それもそのはずで、製作元のフォーミュラファクトリーはFIAとの契約こそないものの、各チームのイベント用レプリカマシンを数多く製作している由緒あるメーカー。また、チームだけでなくミカ・ハッキネンやニキ・ラウダといったドライバーたちが個人的に入手したり、自身のミュージアムに展示するなど、ご本人のお墨付きというわけです。さらに、このスケールモデルを使用したシミュレーターも製作しており、F1チームはもちろん、世界の富豪たちがこぞって購入しているのだとか。
F1チームやドライバーからも絶大な信頼が置かれているフォーミュラファクトリーが製作した1/1フェラーリF2004シューマッハモデル。
これだけのスケールモデルゆえに、お値段はもちろん高額なもので、こちらのF2004スケールモデルが中古で600万円ほど。もっとも、リアルマシンは軽く30億円くらいするので、500分の1とお買い得(笑)メンテナンスや走行のためのコストも不要なうえに「オレ、フェラーリのF1持ってるぜ」などと超絶マウントとれること請け合いです。
ディスプレイモデルゆえに、エンジンや電装品といったパーツはないものの、ノーズコーンやリヤウィングは取り外し可能。
4000時間かけて製作された実物大F1ステアリング──アマルガム製 1/1スケール「フェラーリF2012」ステアリング
アマルガムといえば泣く子も黙る超高級スケールモデルのトップランナー。そもそもは、イギリスで1985年に建築模型からスタートしたモデルファクトリーです。90年代にジョーダンF1チームのモデル製作がきっかけとなり、レーシングカーや高級車の超精密なスケールモデルを次々とリリースし続けているのです。
そんな彼らのヒット作は1/8スケールのF1マシン。製作に当たって各チームから公認されるのはもちろん、機密扱いのCADデータまで提供されるという関係性はアマルガムだけの実績。その甲斐あって、F1に関してはチームがスポンサーやドライバーへのプレゼントに贈るなど、高いステイタスを築き上げているのです。
もちろん、スクーデリア・フェラーリともズブズブな関係で、いくつものF1モデルを作っているのですが、実物大F1用ステアリングホイールもまた大ヒット作。ご承知の通り、近年のF1はハイテク中のハイテクマシンゆえに、ステアリング上のデバイスコントロールも多岐にわたります。こちらのF2012用ステアリングもスイッチやメーターが満載となりマニアの心を激しく揺さぶるモデルにほかなりません。
イギリスの超高級スケールモデルメーカーのアマルガムが製作したフェラーリF2012のステアリング。世界250個の限定商品です。
実物大とはいえスケールモデルですので、機能はすべて省かれているものの、その再現度はスクーデリアが正式な認定書を発行するというレベル。フェラーリファンでなくとも、思わず手に取りたくなる仕上がりでしょう。とはいえ、大量生産されたものではなく、250個の限定品。これまたスポンサーやフェラーリオーナーに配られることから、市場に出回ることは滅多にありません。
ちなみに、北米で珍しくオークションに出品されたものには4800ドル(約70万円)の値が付きました。「たかが模型に!」と思われるような金額ですが、その完成度やフェラーリの認定書を見ればぐうの音も出なくなること間違いありません。
芸術的モデルカーは門外不出の風洞実験用ミニチュア⁉──フェラーリ スピードフォーム 2/5スケールモデル
これまでご紹介してきたのはモデルメーカーによる作品でしたが、こちらはなんとフェラーリ本家が極太VIPのために8台のみを製作したスケールモデル。しかも、実際に風洞実験で用いるモデルをベースにしているといいますから、希少性は計り知れません。
言うまでもなく、風洞実験とは走行風を起こすプロペラを備えたトンネル設備で、ここに実車を再現したモデルを据えて各種の空力性能を測定するもの。実車サイズの巨大な設備から、コンパクトなサイズ、例えばこちらの2/5スケールなど目的によって使い分けられています。それゆえ、モデルは正確なボディ形状の再現が求められるだけでなく、度重なる実験に耐えうる堅牢性も求められるのだとか。
フェラーリの研究チームが作ったモデルはアルミフレームの上にカーボン・ラピッドプロトタイプ(カーボンRP)で作られた488ピストのボディを架装したもの。ちなみにカーボンRPとは、3Dデータと3Dプリンターを活用して、炭素繊維(カーボン)を用いた試作品を迅速に製造する技術で、金型を使わずに効率的、かつスピーディな開発が可能とされています。
488ピスタの風洞実験で実際に使われたモデルを世界限定8台でスポンサーや関係者に販売。2/5スケールの全長は約1800mmと、かなりの大きさです。
一見すると不思議なカラーリングですが、これは「ボディワーク全体の空気圧と流れを示す数値流体力学の視覚化」したもので、スケールモデルの開発チーム内のペインターが描き出したもの。「コンピューター分析が人間の手によって命を吹き込まれる」様子を表現しており、これまたフェラーリらしい芸術性にほかなりません。
前述の通り、一般的な市販ルートには乗らず、ごく限られた顧客に販売されたとのことですが、どうやらひとりが手放したようで、巡りめぐってオークションに出品されました。落札価格は驚きの24万ユーロ(約4200万円)と、488ピスタの日本での新車価格4036万円を大きく上回ることに! マニアにとってはプライスレスとでも考えなければやりきれない思いです(笑)
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