
映画「007私を愛したスパイ」で一躍有名になったロータス・エスプリ。なにしろ、劇中で海の中へ突っ込むと、潜水艦にトランスフォームするというビックリドッキリメカでしたから、世界中のだれもが「エスプリ、カッケー!」となったこと間違いありません。その後、エスプリはシリーズ2、ターボ、はたまたV8へと進化を遂げるものの、やっぱり初代こそエスプリの神髄かと。右ハンドル仕様は今やイギリス国内でも見当たらないというレアモデルをご紹介しましょう。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
先代のヨーロッパとは似て非なる生い立ち
ロータス・エスプリは言うまでもなく名作「ヨーロッパ」の後継モデルとして、1976年に発売されました。ロータス創設者のコーリン・チャップマンは、新時代のスーパーカーを目論み、そこにイタルデザインを立ち上げたばかりのジョルジェット・ジウジアーロが合流。誕生から50年以上を迎えた今でも「私の代表作」とジウジアーロが語るほどの伝説的なマシンとなっているのです。また、ジウジアーロはインタビューで「チャップマンは速いクルマのデザインを知り尽くしていた」と語るほど、ふたりのマリアージュは大成功だったといえるのではないでしょうか。
エスプリのパッケージングを紐解くと、ヨーロッパから引き継いだものもありつつ、新世代と呼ぶにふさわしい革新が読み取れます。例えば、バックボーンフレームと呼ばれる鋼板を溶接したパーツについても、エスプリではエンジン前端部からパイプフレームとのハイブリッドとなり、サスペンション構築の自由度が飛躍的に向上。また、ヨーロッパと同じくFRPで成形されたボディは上下で接着する構造を採り、かつモノコック的に応力を担うものへと進化しています。ただし、ハンドプライという工芸品のような作り方も継承したため、1台ずつの誤差が大きかったところは先代同様だったとか。
1976年に発売されると、すぐさま007映画に登場して世界中の話題をかっさらったのがロータス・エスプリ。劇中と同じく、ホワイトのボディが郷愁をかき立てます。
初代、シリーズ1はほとんどが北米に輸出されたため、右ハンドルの中古車を探すのは非常に困難。イギリス国内でも激減しているとのこと。
車重900kgには十分すぎるエンジンパフォーマンス
一方で、新世代のスーパーカーを目指したというわりに、ミッドシップされたエンジンは2.0リッターの直4 16Vツインカムといささか拍子抜けするもの。このスペックから「エスプリはスーパーカーにあらず」という意見がまかり通っているのかと。時代はV6やV8、あるいは12気筒エンジンが幅を利かせていたのですから、スーパーカー好きのチビッ子が後ろ指を指すのも致し方ありません。が、このエンジンは元F1エンジニアだったトニー・ラッドが開発した生粋のスポーツユニット。ボアストロークは95.2×69.3mm、圧縮比:9.5で、デロルト製キャブレターを用いて最高出力162PS/6200 rpm、最大トル19.4 kgm/4900 rpmという味付け。なにせ、車重は900kgしかありませんから絶対的なパワーよりも、鋭いレスポンスにこそ注目すべきでしょう。
また、シトロエンSM用の5速ミッションを採用したのもチャップマンの慧眼で、ケースやリンケージの剛性が相対的に高く、当時のミッドシップ車としては異例のシフトフィーリングをもたらしたとされています。スポーツカーフリークなら、シフトの感触がいかに大切かはよくご存じのはず。ただし、シトロエンの仕切り値が高かったらしく、チャップマンは愚痴をこぼしていたとのこと(笑)
シリーズ1の右ハンドルはわずか268台のみ
1978年にマイナーチェンジされるまで、シリーズ1は994台が製造されています。このうち268台が右ハンドルで、そのほかはすべて北米向けの左ハンドル。となると、たしかに現存数は期待できそうにありません。実際、10数年前にオークションに出品されたイギリス仕様は約500万円で落札されており、以来値上がり傾向が続いているとのこと。もちろん、シリーズ1にこだわることなく探せばエスプリは見つかるはずですが、スポイラーレスのフロントまわりや、ダクトのないプロファイルなど初代ならではの魅力は捨てがたいもの。なにより、ジェームズ・ボンドになりきるなら初代一択なのですから。
バンパー下の控えめなリップスポイラーがシリーズ1の特徴。マイナーチェンジでサイドに回り込むよう大型化されています。
ドライバー側にしかミラーを設置しないのも当時らしいスタイル。ジウジアーロが今でも気に入っているデザインです。
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