
BMW初のミッドシップスポーツカーとなったM1は、当初ランボルギーニとの共同開発だったことは広く知られています。同様に、計画途中でBMWがランボとの提携を解消し、結果としてBMW独自のモデルとなったことも有名でしょう。しかし、提携解消後にランボを退職したメンバーが一丸となって協力していたことはさほど知られていません。ちょっとした胸アツなエピソードをM1とともに振り返ってみましょう。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotherbys
開店休業状態のランボとBMWがタッグを組むのだが…
M1をざっくり説明すると、1976年にBMWがグループ4/5に参戦可能なマシンの開発に乗り出し、当時の趨勢(すうせい)だったミッドシップを画策。とはいえ、BMWにとっては未知のパッケージだったため、ランボルギーニにシャーシ設計を依頼することに。
エンジンは伝説的な3.5リッターのストレート6「M88」を縦置きとして、ターボを装備する拡張プランもありました。スタイリングは1972年に発表していたコンセプトモデル「BMWターボ」を踏襲。元は社内デザインでしたが、ジョルジェット・ジウジアーロがM1に描きなおしたスタイルとなっています。
当時のランボルギーニは1973年に端を発したオイルショックによって、壊滅的なダメージを受けていました。平たくいえば開店休業、倒産目前の状態だったのです。ここに飛び込んできたM1プロジェクトは一見、おぼれかけているランボにとって強力な助け舟に見えて、サンタアガタの首脳陣は二つ返事で引き受けたに違いありません。
が、BMWからオーダーされたシャーシ開発、および生産はランボ内製ではなく外注というのが弱点となってしまいました。設計は主にレーシングカーづくりで有名なダラーラ、マルケージはモデナで鋼管フレームに長けたファクトリー、このほかT.I.R. (Trasformazione Italiana Resina)、カンパニョーロ (Campagnolo)など数々の協力会社で成り立っていたのです。
イタリア側との提携を解消。混迷を極めたM1の開発
すでに衰弱しきっていたランボに加え、協力会社にしてもオイルショックの影響で息も絶え絶え。ここにBMWから設計変更やら、矢のような催促が重なればイタリア人たちの士気が下がるのも当たり前。BMWは第二次大戦からこっち、なにを学んできたのか首をかしげざるを得ません。とどめは、どうにかイタリアでプロトタイプを完成させたものの、仕上がりに納得しないとかでBMWが1978年のジュネーブショーに展示しなかったこと。これでイタリア側がブチ切れると、BMWも提携解消することで最悪な決別となったのでした。
ご承知の通り、その後のBMWはシャーシ(後には組み立ても)をドイツのカロッツェリア、バウアーに依頼しなおし、またボディについてはジウジアーロに一任することでなんとかM1の製造にこぎつけています。が、スイッチを切り替えるようにうまくいけば誰も苦労はしないはず。例えば、フレームの生産に向けた細かな調整や、それをバウアー社へ申し送りする役割、あるいはFRPボディの製造から架装にいたるプロセス管理などややこしい作業は数えきれません。
ここに「義を見てせざるは勇無きなり」とばかりに、イタリア人たちが立ち上がりました。マルコ・ライモンディ: 最高技術責任者、ピエール・ルイジ・カッペリーニ: 財務担当、フィオレンツォ・フィオリーニ: 開発担当、そしてシニョール・デロルコ: 調達担当、いずれもランボの中枢をなしていた人物が、あえてランボを退職してM1のためだけに別会社「イタルエンジニアリング」を創設したのです。責任感なのか、M1への情があったのか詳らかにされてはいませんが、なかなか出来ることではないはずです。なお、イタルエンジニアリングのメンバーはM1ローンチの後で解散し、それぞれイタリアのクルマ作りで活躍したと伝えられています。
莫大な費用をかけながら、一代で消滅。BMWの黒歴史に…
ともあれ、M1は1980年からローンチされ、ワンメイクレース「M1プロカーレース」やアンディ・ウォーホールがペイントしたマシンでル・マンに参戦するなどしましたが、結局は鳴かず飛ばずの400台で打ち切り。莫大な費用と手間をかけたにも関わらず、後継モデルが出るでもなく(後のマクラーレンF1はエンジン供給のみ)いわば黒歴史のページを増やしただけに終わったといえるのではないでしょうか。
もっとも、伊独コラボのマシンそのものに欠点らしきところはなく、オークションでも8000万円ないし1億円というプライスで、レース仕様のプロカーに至っては現存台数が極めて少ないために3億円以上という噂もあります。
「BMW M1」画像ギャラリー
M1は1980年に発売されたBMW初のミッドシップスポーツ。当初はランボルギーニと共同開発でしたが、78年に頓挫しています。
ジウジアーロによるスタイリングは74年に発表したコンセプトカー「BMWターボ」に寄せたデザイン。
さすがBMWらしく、コクピットは実直で飽きのこないもの。言い換えれば、スポーツカーのテイストに乏しい地味なもの⁉
400台ほどの生産となったため、中古市場では7~8000万円と高値安定。プロカーは3億の値がついたことも。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(自動車/クルマ)
クルマでもバイクでもない!街中をスイスイ駆ける超コンパクトEV スマートに、スタイリッシュに街を駆け抜ける。 そんな都市型モビリティの未来を現実のものとしたひとつの答えが、今回オートバックスで受注が始[…]
ターボ時代は別として、911がレースシーンで見せつけた強さの源泉は軽さとトラクションの良さに尽きるかと。また、水平対向エンジンの頑健さ、かつ低重心というメリットも無視することができません。そんな定説の[…]
免許返納と物流危機の狭間で起きたヒットのホンネ 運転免許を返納した途端、移動手段を奪われて引きこもりがちになる…そんなシニア世代の課題と家族の葛藤は、いまや日常の風景だ。また物流業界では、人手不足によ[…]
APトライクのカーター最新作「GOAT180」 「APtrikesシリーズ」で国内トライク市場の普及を牽引する神奈川県相模原市のカーターが、満を持して発表したのがこの「GOAT180」だ。車名にある「[…]
普通免許で3人乗れる「ビベル」の電動トライク 自動車の普通AT限定免許さえあれば、ヘルメットを被る必要もなく、車庫証明や面倒な車検手続きも一切不要で公道へ繰り出せる。そんな夢のようなモビリティが、株式[…]
最新の関連記事(バイク用品)
ミリタリー調グラフィックをまとったハイエンドストリートフルフェイス 『X-SNC PILOT』は、戦闘機パイロットのヘルメットから受けたインスピレーションを具現化したグラフィックが特徴だ。帽体の右側頭[…]
これだけの機能を1台に! M2-PROは何ができる? M2-PROの特徴は、単なる「バイク用CarPlayモニター」ではないことだ。主な機能を挙げると、ワイヤレスCarPlay/Android Aut[…]
目玉ヘルメットの原点、“忠さん”レプリカがアライのフラッグシップで復刻 ヘルメットの目玉マークといえば、かつては元GPライダーの原田哲也氏や中野真矢氏、そして全日本ロードレース選手権王者13回、鈴鹿8[…]
ジョアン・ミル選手の最新シグネチャーモデルが数量限定で発売! 『F-17 Mips JOAN MIR-2』は、2025年10月に発売されたジョアン・ミル選手(Honda HRC Castrol)のシグ[…]
なぜオートバイ専用品が必要なのか? 日常用ケーブルが抱える課題 オートバイのハンドル周りにスマートフォンをマウントし、ナビや音楽アプリを活用するスタイルは、現代のライダーにとってすっかり定番となった。[…]
人気記事ランキング(全体)
クルマでもバイクでもない!街中をスイスイ駆ける超コンパクトEV スマートに、スタイリッシュに街を駆け抜ける。 そんな都市型モビリティの未来を現実のものとしたひとつの答えが、今回オートバックスで受注が始[…]
112馬力の衝撃! リッターマシンを脅かした「最強・最速」のドッカンターボ 1980年代前半、国内4メーカーがしのぎを削った二輪ターボ開発競争。その最後に満を持して登場したカワサキ「750TURBO([…]
四半世紀愛されたファンバイク! 今もライダーの心を揺さぶる「SV650/X」 スズキのミドルスポーツ「SV650 ABS」および「SV650X ABS」は、かつて発表会で『Vツインファンバイク』と謳わ[…]
【第1位:太陽光だけで走る次世代三輪EV】 堂々の1位を獲得したのは、ルーフに高効率ソーラーパネルを装備した日本発の三輪ソーラーEV「スリールオータ」だ。車検不要の手軽さながら、太陽光だけで最大40k[…]
欲しかった機能の追加で好感度がまた爆上がり!! フル機能版E-Clutchで幅広い層の好みに対応! 先月試乗したCB750 HORNETなどに続き、’26年5月にはCBR400RもE-Clutchを搭[…]
最新の投稿記事(全体)
ミリタリー調グラフィックをまとったハイエンドストリートフルフェイス 『X-SNC PILOT』は、戦闘機パイロットのヘルメットから受けたインスピレーションを具現化したグラフィックが特徴だ。帽体の右側頭[…]
一度味わうとクセになる高揚感、トライグライドウルトラをレンタル 大排気量Vツインを心臓部にするハーレーに、長年憧れを抱いてきた。しかし、大型二輪免許が必要で、自分はクルマの免許しか持っていない。あるい[…]
熱いぜ! 注目の目玉セール対象アイテム ツーリングの快適性を爆上げするバイク用インカムから、突然のバッテリー上がりに威力を発揮するジャンプスターター、愛車をピカピカに仕上げる高圧洗浄機まで、狙っていた[…]
スタンダードは青玉虫と108万円台の価格を完全に据え置き継続 昨今の物価高により、新車二輪車の価格上昇が常態化するなか、カワサキが2027年モデルの「Z650RS」スタンダードモデル(メタリックオーシ[…]
専用工具無くても出来ていた。ついさっきまでは・・・ 筆者は生来「色々使える便利な道具」と「専用工具」があまり得意ではありません。 だって場所取るし。揃え始めたらきりがないし・・・。そんなわけで、これを[…]
- 1
- 2











































