
ホンダの新たなフラッグシップ、CB1000Fが市販開始された。CBR1000RR(SC77)の系譜を引く心臓部を持つ最新鋭ネイキッドは、往年のCB-Fの佇まいを持ちつつ、現代の技術を融合させた至高のネオクラシックだ。ここでは、レジェンドライダー、プロのインプレッションライダー、そして専門誌編集者が、それぞれの視点からCB1000Fの実力と魅力を徹底解説する。
●文:ヤングマシン編集部 ●外部リンク:ホンダ
レジェンド:フレディ・スペンサー視点「軽さと許容範囲の広さが新時代のCBの証だ」
私は長年、新しいバイクのテストをしてきたが、その際に意識するのはバイクから伝わる感覚、アジリティ(軽快性)、そして安定性だ。CB1000Fはビッグバイクでありながら、その軽さが強く伝わってきたことに驚かされた。1982年のCB750F(#19)に乗っていた私には、昔のすべてのバイクの記憶があるからこそ、その軽さが際立つのだ。
CB1000Fは、昔ながらのレトロなスタイルと現代のテクノロジーが完璧にコラボレーションしている。走ってみて分かったのは、そのエンジン特性にホンダが持つDNAを強く感じ取れることだ。このバイクは乗っていて楽しく、サーキットでも存分に楽しめるはずだ。
とくに進化したと感じるのが安定性。昔のバイクは限界線を超えると一気に安定性を失い、ライダーには挙動とグリップ力の均衡を見極める高い技術が求められた。しかし、CB1000Fのような現代のバイクは、リミットに達してももう少し先へ行ける余裕がある。私がエンジニアと話す時に「フォーギビング」(広い許容範囲)と表現する、限界を超えてもなんとか乗りこなせる特性を持っているのだ。CB1000Fはアジリティがとても高く、限界まで行ってもその許容範囲の広さが感じられるバイクだ。
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プロ:丸山浩視点「ドロドロ感と軽快な加速、古き良きCBの進化形」
CB1000Fはやはりストリート、すなわち公道のヒーローたる資質を持っていた。何より素晴らしかったのは、低速域におけるトルク感や、あのドロドロっとした大排気量直4CBならではのフィーリングがしっかりと受け継がれていた点だ。排気音もバラけた感じに聞こえるのは、わざわざ左右気筒でバルブタイミングをズラした設計によるもので、これはベースとなったCB1000ホーネットにはない、ホンダのこだわりが詰まった部分。
昔ながらのクランクの重いゴロゴロ感まで適度に演出されており、2000〜3000rpmで街中を流すだけでもとても気持ち良い。これは「空冷がいい、キャブ車がいい」と言うライダーが求めるものが詰まっており、古いCB乗りでもスンナリ受け入れられるはずだ。
だが、ここからが従来のCBとは違う。味わい深さを持ちながらも回せば速いエンジンであり、車重が214kgと一気に軽くなったことで、スロットルを捻ればグッと“前”に出る、つまり良く加速するのだ。これが実に楽しい要素だ。高速道路や道が開けた場所では、無意識にスロットルを捻りたくなってくるだろう。ワインディングでも速く走ろうという気にさせてくれる。従来のCBは味わいに重点を置く代わりに、速く走ることを諦めていたと思えるほど、CB1000Fは軽快さと加速力を両立しているのだ。
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専門誌編集者:ヤングマシン(ヨ)視点「ビッグネイキッドの威風堂々を捨て、王道ネイキッドへ回帰した旗艦」
跨った瞬間、「これぞCBだ!」と直感的に感じた。視界に入る燃料タンクの大きな存在感、アップライトなライディングポジション、そして実家に帰ってきたような安心感を覚えるディテール。これらは長く所有していく上でとても重要な要素だ。
かつてCBの最高峰といえば、250kgを超える車重と馬鹿げたトルク感を持つCB1300SFであり、その巨大さがビッグバイクの基準であった。しかし、新作のCB1000FはCB1300SFの後継とも言える雰囲気がありながら、スリムで軽量、そして扱いやすそうなサイズ感に収まっている。かつての「乗れるものなら乗ってみろ!」という巨大さはない。
エンジンはスーパースポーツCBR1000RR(SC77)の系譜にありながら、空冷CB1100と同じ手法でカムタイミングを調整し、旧車のような脈動感とバラツキ感を加えている。音量はメーカー純正としては豊かで、低くハスキーな「ズオオォォン」という音質が好ましい。
ハンドリングはベースとなったストリートファイターのCB1000ホーネットとは対照的に穏やかだ。ヒラリと軽快に寝かせられ、鋭さよりも綺麗に曲がっていく感覚。バイクに急かされている感じは一切なく、ライダーはただ思うままのペースで走れる。威風堂々の大きさ重さを削り、扱いやすさと無類の汎用性を手に入れたCB1000Fは、昔のバイクが持っていた「これ1台で何でもこなす」多用途性を持つ、普遍的な王道ネイキッドの立ち位置に戻ってきたと言える。
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