
大阪・関西万博で鮮烈な印象を残した、カワサキの4脚モビリティ「CORLEO(コルレオ)」。その未来的なフォルムもさることながら、搭載されるパワーユニットが「2ストロークエンジンの復権」を予感させるものとして大きな話題を呼んでいた。そんなCORLEOについて、川崎重工は2025年12月3日、製品化に向けた開発へ正式に着手したと発表した。
●文:ヤングマシン編集部 ●写真/外部リンク:川崎重工業
12億リーチの衝撃! バイクとロボットの融合
CORLEOは、2025年の大阪・関西万博で披露され、SNSでは累計約12億リーチという驚異的な注目を集めたモビリティだ。 その名の由来はラテン語で「獅子の心臓」。ライオンや虎といったネコ科の大型動物を思わせる有機的なフォルムをしている。
最大の特徴は、当然ながらタイヤではなく「4本脚」で移動することだ。 しかし、ただのロボットではない。カワサキが長年培ってきたモーターサイクル事業のノウハウが惜しみなく投入されている点が見逃せない。
たとえば、脚部の構造には「スイングアーム機構」を応用している。後脚部が独立して上下動することで衝撃を吸収し、不整地でもライダーは常に進行方向を確認しやすい安定した姿勢を保てるという。
操縦方法も極めてバイク的だ。 ハンドルと「あぶみ」と呼ばれるステップへの荷重移動、つまり乗馬やオフロードバイクのような重心移動で操縦を行う。 ロボティクスによる悪路走破性と、バイクの操る楽しさ(ファン・トゥ・ライド)を融合させた、まさにカワサキにしか作れない「新世代のオフロードビークル」なのである。
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ライダー感涙! 「2ストローク」が水素で蘇る仕組み
ライダーにとって一番のトピックは、パワーユニットの独自性だろう。圧倒的なパワーとピーキーな特性からバイクブーム世代を魅了した「2ストロークエンジン」の進化形なのである。
その名も「O’CUVOID(オキュボイド)」。排気量150ccの「2ストローク・ターボチャージド・水素エンジン」だ。旧来の2ストロークエンジンは、構造上、燃料と一緒にエンジンオイルを燃焼させるため、排ガスに有害物質が含まれるのが致命的な弱点だった。
だが、カワサキはこの問題を「水素燃料」と「過給器(ターボ)」の組み合わせで解決した。 まず、燃料を水素にすることで、排出されるのは理論上「水蒸気」のみとなる。 しかし、水素エンジンであってもオイルを燃やせばCO2が出てしまう。そこで登場するのがターボだ。
旧来の2ストはクランクケース内で混合気を圧縮する必要があり、クランクシャフト潤滑のためにオイルを混ぜる必要があった。 これに対し、この新型エンジンはターボを使って空気を強制的にシリンダーへ送り込む。
つまり「クランクケース圧縮」が不要になるのだ。 これにより、4ストロークエンジンのようにオイルパンにオイルを溜めて潤滑することが可能になり、燃焼室にオイルが入るのを防げる。 結果として、オイルを燃やさない「ゼロエミッションの2ストロークエンジン」が実現するというわけだ。
CORLEOにおいて、このエンジンは発電用として搭載され、実際の駆動はモーター等で行うシリーズハイブリッドのような構成と目されている。 だが、150ccというコンパクトなサイズで高出力を狙える2ストロークのメリットを活かしたパッケージングは、内燃機関の新たな可能性を切り開くことだろう。
CORLEOで想定している構造の透過CG。車体前方、前肢の付け根あたりの中心部に2ストロークターボチャージド水素エンジン「O’CUVOID」を搭載されており、エキゾーストにはターボチャージャーの設置が確認できる。
目標は2035年の市販化。まずはシミュレータで体験?
開発がスタートしたとはいえ、実際にこの獣に乗れるのはもう少し先になりそうだ。 カワサキの発表によれば、まずは2030年に開催予定の「サウジアラビア・リヤド万博」での会場内モビリティとしての採用を目指し、最終的な製品化(市販)の目標は2035年としている。
「10年も待てない!」という声が聞こえてきそうだが、朗報もある。 CORLEOの開発過程で得られたデータを活用し、乗車体験ができる「ライディングシミュレータ」の開発も並行して行われるのだ。
こちらは2027年中の完成を目標としており、ゲームやeスポーツ業界への展開も視野に入れているという。 バーチャル空間とはいえ、獅子に跨り野山を駆ける体験は、意外と早く実現しそうだ。
また、開発コンセプトには「SAFE ADVENTURE」が掲げられている。 天候や路面状況、さらには野生動物の出現まで検知し、安全なルートを案内するナビゲーションシステムの開発も進められる。 これは将来的に、カワサキのバイク全体にフィードバックされる技術となるだろう。
2ストバイク復活の狼煙となるか
CORLEOはたしかに奇抜なモビリティだが、そこで磨かれる技術は、間違いなくバイクの未来に直結している。 とくに「O’CUVOID」エンジンの技術が確立されれば、それを搭載した「純粋な2ストローク・スポーツバイク」の復活も夢物語ではなくなるはずだ。
甲高いエキゾーストノートと、あの胸のすくような加速感が、クリーンな水素エネルギーで帰ってくる。 カワサキが踏み出したこの一歩は、単なるロボット開発の枠を超え、内燃機関を愛するすべてのライダーに向けた希望の光といえよう。
2035年のCORLEOデビュー、そしてその先にあるであろう「シン・2ストバイク」の登場を期待して待ちたい。
サウジアラビアを走るCORLEOのイメージ。2030年開催予定の「サウジアラビア・リヤド万博」の会場内モビリティとして採用されることを目指すという。
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