
正常に機能しているとその存在すら忘れてしまうけども、それが「なく」なってしまった時に、その存在の大切さを痛感する時があります。たとえばフロントフォークのオイル。この少量の液体が入っていないだけでバイクがどんな動きになってしまうのか、知識で知っているのと実際体験したのとでは大違い。今回はそんな実走レポートをお届けします~。あくまで整備不良が及ぼす影響を確かめるための実験なので、読者のみなさんは真似しないでください!
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
入れないとどうなる?フロントフォークのオイル
はいどうも、みなさんこんにちは。本日は愛車DT50のフロントフォーク定期メンテナンスをやっております。
トップのキャップボルトを外してカラーを取り出して、スプリングを取り出して、そしてオイルを排出。
(オイル排出時の「ジュボ~~ッ」っていう締め付けたっぷりの音はたまらないんですよねぇ~)
おっとオイルは真っ黒に変色していました。ちょうどいい交換時期のようですね。
さて、通常であればこのまま新品オイルを規定量を注入して作業は終わりとなるのですが、ここでフと思ってしまいました。…フロントフォークのオイルを入れないで組み立てたらどんな動きをするのだろう?
ふつふつと湧き上がる好奇心。知識で知っているのと実際やったのとでは大違い。試したくなるのが人の心というもの。ついでに皆様にもシェアしてみることにいたしましょう。
縮める・落とすの動作実験
ここに並べましたるは二本のフロントフォーク。ひとつはまだ分解前でオイルは入ったままのもので、もうひとつが先ほどオイルを抜いた状態のまま部品を入れて組み立てたものです。
【実験その1】縮めてみる
とりあえずシンプルに縮めてみます。まずオイル入りのフロントフォークを沈み込ませてみると、オイルが入っている独特の感触と音とともにフロントフォークが縮んで、手を離すとダンパーが効いたゆっくりした動きで戻ってきます。これは至って普通のフロントフォークの動きですね。
それに対してオイルを抜いたフロントフォークを縮めてみると、あっけないほどに「スコッ」と縮んで、手を離すと「ぴょん!」とインナーチューブが伸びてきます。とくに伸びる時のスピードが速くて手を離すと飛び跳ねてしまうほど。うっわ、全然違うじゃん。
【実験その2】落としてみる
今度はフロントフォークを腰の高さから落としてみますね。右手に持っているのがオイルが入ってないフロントフォークで左がオイル入りのフロントフォーク。二本のフロントフォークを持ち上げて、手を離す。
ほぼ同時に二本とも床に落ちるのですが、ここからの動きがまったく違いました。オイルは入ってるフロントフォークはまるでクッションの床に落ちたように「トンッ」と着地しました。体操選手の着地みたい。無反動で見事な着地!
それに対してオイルが入っていないフロントフォークは「ゴンッ」という弾むような音とともに跳ね返りました。スプリング入りらしい動きですね。
・・・と、ここまで文字にしてみましたが、写真で見てもいまいちピンとこないのでここで動画へのリンクを置いておきます。短いショート動画なのでよかったら見てみてください。フロントフォークの動きがよくわかりますよ。
・・・いかがでしょうか、全然違うでしょう?? 見た目はまったく変わらないけども、オイルが入っている・入っていないというだけでここまで動きが違うんですね~。…ってことはあれかい、バイクで実際に走ったらもっと大きな変化があるってことかい?
そんなことを思い始めたらもう止まらない。もう1本のフロントフォークのオイルを抜いてバイクに取り付けました。そんじゃ行ってみようか!
実走テスト!やってみよう
はいっ! オフロードコースにやってきました。ここだったら思いっきりテストができるってもんです。まずはフロントブレーキをかけた状態で手の力でストロークさせてみました。
スコンスコンと動かしてみます。動きがめちゃくちゃ軽い。力をかければスッと沈み込んで、反動をつけて戻ってきます。今度はなんたって二本ともオイルが入ってないですからね~、勢いよく戻ってきて、そしてそのままボヨンボヨンと2~3回往復運動をします。
これならさぞ派手な動きをするだろうと期待をしながら、次は急ブレーキにトライ。
走ってきてブレーキをキュッとかけてみますが・・・意外なことにこれはいつもとあまり変化がありませんでした。オヤ? 人が乗ってるのが重しになって戻りが弱いのか、先ほどのような挙動が見られません。正直に言っていつもとするほど変化ないと言えるレベル。はて、人が乗るとそんなに変化がないのでしょうか?
その違いは意外と地味だった・・・けど?
正直な話、この段階でかなり大きな変化があると思っていたので「オイルが入ってなくも大差ないのでは・・・?」という企画倒れの危機感を抱きつつも、次はもっと難易度の高いテストに挑んでみることに。
谷間だ。「どわ~っ!」と下って「ぐわーっ!」と上る谷間だ。石ころがゴロゴロあるし、ついでに川も流れてるし、勢いつけて走って言ったらけっこう怖い道ですが、ここを走ったらどうなるかというと・・・
「どわ~っ!(下った)」「ぐわーっ!(上った)」普通に走れちゃいました。ひょっとしたら転ぶかもという不安もあったのですが至ってすんなりと。
自分としてはけっこうな勢いで下って登ってきたのですが、バイクとしてはとくに乱れた挙動もなく走れちゃったのですよ。
でもね、違いがあります。イヤ、いつもと全然違う。なんかこう・・・ 全身が泡立つような恐怖心があるのです。なんや知らんけどとにかく怖かった! だけど残念なことにビジュアル的には全然問題なく映ってるから、なんか悔しい。
怖い怖い怖い・跳ねる跳ねる跳ねる
こうなったらここだ「ウォッシュボード」。テストの企画当初はここまで走るつもりは毛頭なかったのですが、皆様にお届けできるビジュアルを撮れない限りは帰るわけにいかないのですよ。
というわけで意を決してコースインしてみると「どっひゃ~っ!!!!」。怖い怖い怖い怖い・跳ねる跳ねる跳ねる跳ねる!
スピード的には全然早くもないし、知らないコースでもないし、むしろ慣れ親しんだウォッシュボードなのに! 全然いつものように走れない。ペースが取れない。そして怖いいぃィィ~!!
フロントフォークがダンピングするメカニズムって?
ここでフロントフォークのメカニズムを振り返っておきましょう。正立や倒立などの向きの違いや、車種やメーカーごとの違いはあるものの、基本的な構造はほぼ共通しています。
こんなカンジ
内部には「シートパイプ」と呼ばれる部品があり、その中には「オリフィス」と呼ばれる小さな穴が設けられています。
このオリフィスをフォークオイルが通過する際、その穴の大きさに応じた油圧抵抗が発生します。これにより、ストロークのスピードが抑制される力が働くのです。
つまり、フォーク内にフォークオイルが入っていることで、衝撃をやわらげる「ダンピング効果」が生まれます。路面のデコボコから伝わる衝撃を、オイルが流れる際の抵抗によって吸収・減衰してくれるのです。
バネだけだと、走行中に「ポヨンポヨン」と跳ねてしまいますが、フォークオイルがその動きを適切に制御し、安定した走行を実現してくれているわけです。それをふまえて、ウォッシュボード通過時の映像を見てみると…。
路面の凸凹があるとフロントフォークがスコンと沈む(ダンパーが効かないから速い)。そしてその直後にフロントフォークがスコンと伸びる(ダンパーが効かないから速い)。
そして勢いそのまま伸び切ったところからまた沈み始める(ダンパーが効かないから)。以上のことが繰り返されて、連続の凸凹のところではショックを吸収するどころかどんどん増幅していって、そのリズムによっては収拾がつかなくなってくる。
だからめちゃくちゃ怖いんですね~! 自分の腕がへっぽこなのを差し引いても、まさかこの程度のウォッシュボードでこんなにビビって走る羽目になろうと思いませんでした。
映像を見るとめっちゃ腰引けてますしね!いやー怖かった怖かった。小さな凸凹でもボヨンボヨン車体が揺れまくるので、後半はむしろテンションあがっちゃって笑いが止まりませんでしたよ。だけどその分体力消費が激しくて、すぐに汗だくバテバテになってしまいましたとさ。
結論:フォークオイルって大事だわ~
いやー本当によく分かりました。フロントフォークにオイルは必要です。ダンパーが効かなくなるという知識ではしていたけども、それを実際に体験するのは大違い。あんなにマシンがボヨンボヨン動くと思いませんでしたよ。いやほんと。
ここで大切な話としては、フロントフォークのオイルは一度入れたらOKというものではなくて劣化するという事実。
エンジンのような熱がかかったりギアが回ってるわけではないのですが、フロントフォークのストロークによって温度が上下することもありますし、もちろんストロークによる部品の摩耗もあります。
それによってフォークオイルは確実に劣化していきます。
劣化したフォークオイルは正規の粘度を保てずにダンピング性能を低下させてしまうので、オイルなしとまではいかないまでも本来の性能を発揮できなくなってしまいます。目立たないからといっておろそかにはできないオイルですよね。やはりメーカー指定の距離や時期で交換したいところです。
新車の頃のようなコーナリング性能が得られないと思ったら、フロントフォークオイルの劣化かもしれません。皆様の愛車もチェックしてみてくださいね。この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
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