
モリワキの創業者を父に、POP吉村の長女を母に持ち、レーシングライダーとしても豊富な経験を積んだ。独創的なもの作りのDNAとハイレベルなライディングスキルという眩しい能力を併せ持つ森脇家の長男は、 早くも自分の次の世代を見据えて動いている。
●文:ヤングマシン編集部 ●写真:真弓悟史 モリワキエンジニアリング
【モリワキエンジニアリング代表取締役会長・森脇尚護(しょうご)氏】1983年生まれ。幼少期からレーシングライダーとしてキャリアを積み、全日本ST600やJSB1000に参戦。2004年の鈴鹿8耐では3位表彰台を獲得した。モリワキのモト2マシン・MD600では開発ライダーも務めている。
モリワキイズムを変えずに継承していく
モリワキの面白さは、ライダーが主役のもの作りだと思っています。サーキットを速く走るにはどうしたらいいのか、ライダーの意見を聞いて解決策をプロダクトとライダーの両方から解決していく。誰も見たことがないようなものを作って、それをどんどん世に出していく。そんな部分にあったと思います。
まわりで見ていても「次は何を出してくるんだろう?」と、すごく楽しみでワクワクする。それがモリワキイズムと考えているので、どれだけ色濃く、そういったものを受け継いでいけるかが自分の使命だと思っています。
世代が変わっても初代の思いを薄れさせないことは、ブランドにとってすごく重要なことだと思うんです。醤油とかお酒でも、レシピを変えずにずっと守り抜くのって大事ですよね。新しい世代が考えることは取り入れつつも、変えたくないものは変えずに残す。この2つをしっかりやるのが、これからのモリワキに求められることだと思います。
森脇護の生み出したモリワキイズムを受け継いでいく…ということに関しては、すでに自分の次の世代を見据えています。経営者が自分以外に変わっても、モリワキらしさを失わずに会社が継続していく。そんなことを常々考えながらトライしています。世代交代して自分らしさを押し出すより、初代の思いを引き継いで行くことのほうが圧倒的に難しいと思うんですよね。
でも、モリワキにとってもっとも重要なのは、今まで支えてくれたファンの人たち。従来のモリワキが好きで応援してくれる方々ですから、それを守りつつ進んでいくのがすごく大切だと思っています。
今後のモビリティは電動化が進むでしょうが、エンジンも合成燃料などを使って残していこうという流れがあります。モリワキも電動化には対応しつつ、内燃機関のバイクが好きでモリワキ製品を選んでくださったファンを裏切ることは絶対にしませんし、従来からのマフラー作りも続けていきます。電動と燃焼が共存できる未来がベストだと思います。
マフラーのリサイクルで循環型社会実現に貢献
最近始めた新しい試みのひとつが、マフラーのリサイクルです。モリワキマフラーを購入いただいた方から、交換して不要となったマフラーを引き取り、鈴鹿のマーク・コーポレーションという専門業者でリサイクルするものです。参加いただくことで循環型社会実現に貢献でき、マフラーの購入価格も割引になります。
モリワキが展開スタートしたマフラーのリサイクルシステムは、購入時に手続きを踏むことで参加可能。マフラーの購入価格も割引になる。
これは母の南海子(POP吉村の長女で現モリワキエンジニアリング・マネージャー)が以前から考えていたことで、最近ようやく実現できたものです。「つくる責任、つかう責任」という、SDGsの12番目のゴールに向け、モリワキはスピード感をもってこの取り組みを始めました。
その背景には、ユーザーからの「交換したマフラーの処分に困っている」という声もありました。作る側とお客様で連携し、取り組む。マフラーを作り続けるための責任、内燃機関のバイクに携わる者の責任として、欠くことのできない取組みだと思っています。
MH80Rのようなバイクをもう一度作りたい
そうやって構想していることは他にもいっぱいありますし、「こんなことを思いついたんだけど、どうかな?」と、父とは常にそんな話をしています。ひとつだけ話すとしたら…これはまだ構想段階ですが、以前モリワキが販売していたMH80R、ああいう車両をもう一度作りたいと思っているんです。
MH80RはGPライダーを育てるバイクとして製作しましたが、次はもっと広い視点でバイクを捉えて作りたいと思っています。ただ単純に勝った負けたを競う、そんなレースやサーキットの楽しみ方だけではなく、バイクライフを通じてさまざまなことを学ぶ場になってほしいんです。
【モリワキMH80R:ストーナーも乗っていた入門レーサーの名機】ホンダCR80RのエンジンをNS-1の車体に搭載した、ロードレースを低コストで楽しめる入門レーサー。幅広い層に支持され、幼少期のケーシー・ストーナーも乗っていたという。護氏によると、総生産台数は760台で、1台作るごとに5万円の赤字だったとか?!
自分は中学生とか高校生の頃、それこそMHとかRS125でレースをしていましたが、自分でエンジンを開けてピストンを磨いたり、デトネーションを見てキャブセッティングを変えるなどを走行と走行の間でやっていました。
そういう経験をすることで整備の知識は自然と身に付くし、ノウハウも吸収できます。整備や組み立てを学べるツールとして、バイクをもっと活用してほしいという思いがあるんです。組み立ての手順や工具の使い方など、絶対に勉強になるし、すでに知識を持っている人も、それを活かして組み立てたバイクが他の人よりも速かったら、それはすごく面白いと思うんですよね。
逆に組み方が分からない人は、わかる人に聞くじゃないですか。そこでコミュニケーションが生まれますよね。SNSとかインターネットが主流の今でも、直に会って意見交換して、コミュニティを作って一緒に遊ぶことは重要だと思うんです。子供から年配の方まで、全員がワイワイ楽しめる、そんな世界観を持つバイクが作れたら面白いだろうなって、そんなことを考えています。
そうした経験を子どもの頃から積んでいけば、いずれその子がGPに行ったとして、いろいろな壁があってもセッティングや車両の知識で意思疎通ができると思うんですよ。もちろんレーシングライダーになるのはごく一部かもしれませんが、メカニックや整備の道に進んでくれるかもしれないし、バイクとは無関係でも、もの作りに興味を持つかもしれない。教育にバイクが使えれば、より人が育つと思うんです。
そういったバイクを、サーキットで楽しんでほしい気持ちも根底にあります。コロナ禍でバイクがブームになりましたが、事故のニュースを毎日のように見かけるようになった。安全にスキルを磨くには、サーキットってとてもいい場所です。なので、サーキットを前提に楽しめるマシンを作りたいと考えています。
もちろんそれだけでなく、他にも重要なプロジェクトがたくさんあります。それも含めてこれから先のモリワキも、かなり面白い会社になっていくと思います。ぜひご期待ください。
以前にヤングマシンのインタビューで「最後の1社となってもマフラーを作り続ける」と語った尚護氏。ユーザーに応えるもの作りを続ける。
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