2025年1月23日、ついに発売されたホンダの新生ストリートファイター、CB1000ホーネット。リッタークラスで久しぶりにホーネットを名乗っているだけあって、注目度抜群なこのバイク。その魅力を、2024年4月実施の開発者インタビューとともに振り返ってみよう。
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真:川島秀俊/編集部/ホンダ
新型ホーネットのスペックをおさらい!
開発者インタビューをプレイバック!
やっぱりホーネットは直4だ?!
YM:まずはCB1000Rホーネットという車両の、コンセプトや狙い所を教えて下さい。
ホンダ:コンセプトは「まわりに見せつけろ、自慢のパフォーマンス&アグレッシブ・ピュアスタイル」です。今回、リッタークラスで改めてホーネットを名乗るにあたり、ストリートファイターらしい高い走行性能と、日常の使いやすさを高次元でバランスさせることに主眼を置いています。それが歴代ホーネットの特徴ですので。
YM:ホンダさんがリッタークラスでホーネットを名乗るのは2001年のCB900ホーネット以来となります。この機種のメイン市場は欧州と思いますが、やはり彼の地ではホーネットのブランドイメージは高いのでしょうか?
ホンダ:はい。欧州の期待も高いですし、直4のホーネットとして出させていただくので、その期待に答えるべく開発しています。
YM:後ほど関連性を伺おうと思っていますが、ひと足先にブランドを復活させた2022年のCB750ホーネットは新開発の並列2気筒エンジンでした。やはり“ホーネットは4気筒”というイメージは強いのでしょうか?
ホンダ:そうですね。期待しているお客様も多いので、その期待に応えるべく開発しています。
YM:スズキGSX-S1000やヤマハMT-10、カワサキZ900、BMWのS1000R、トライアンフのスピードトリプルなどなど、リッタークラスのストリートファイターは強者揃いの超激戦区です。
ホンダ:もちろん、そうした競合車も視野に入れています。
価格はCB1000Rよりもかなり安い?
YM:そんな中で、ホンダさんはこのクラスにCB1000Rというモデルをすでに投入しています。CB1000ホーネットはその後継なのでしょうか?
ホンダ:狙い所は異なります。CB1000Rはネオレトロ系の車両として、ベテランや上質さを求めるユーザー様向けです。CB1000ホーネットは過去に存在した同シリーズを引き継ぐ存在で、コンセプトとしては別の車両です。
YM:CB1000Rの後継ではなく、改めて1000ccクラスにホーネットシリーズを展開していく、ということですか?
ホンダ:そうです。走りと実用性をバランスさせるという狙いや、デザインの方向性も異なります。ホーネットは英語でスズメバチという意味です。燃料タンクまわりのマスのあるセクションから、ウエスト(=シート)まわりをキュッと絞り、そしてテールセクションに向けてまた膨らむ。この抑揚の効いた、グラマラスなスタイリングはホーネットならではです。
YM:となると、CB1000Rは継続販売されるのでしょうか?
ホンダ:そこは申し訳ありません。私には分かりかねます…。
YM:CB1000Rとは路線が違なるということですが、価格帯もCB1000Rとホーネットでは異なると考えていいですか?
ホンダ:はい。詳細にはまだお答えできませんが、そこは明確に違います。
YM:シリーズ機種となるCB750ホーネットとはどんな関係になりますか?
ホンダ:排気量は違いますが、抑揚の効いたスタイリングや操っての楽しさなど、狙い所は同じです。それがホーネットとしての共通項となります。
YM:以前、CB750ホーネットの開発者さんにインタビューした際に「コストパフォーマンスを重視し、価格はかなり頑張った」という話を尋ねています。ホーネットとしての狙いが同じとなると、1000ccでもコスパはかなり重視していると考えていいですか?
ホンダ:CB1000Rと比べればそちら寄りとお考えください。
エンジンベースがRR-Rではない理由
YM:CB1000ホーネットのエンジンベースはSC77型のCBR1000RRです。最新型のRR-Rではなく、一世代前のエンジンを選んだのはなぜですか?
ホンダ:RR-Rは明確にサーキットユースに割り切った車両ですが、一世代前のSC77はサーキットを主眼としつつ、ストリートも意識した車両でした。ホーネットは日常域とワインディング、トータルの楽しさを追求する車両ですので、開発チームとしてはRR-RよりSC77エンジンのほうが適していると判断しました。
YM:まだ正式なエンジンスペックが発表されていません。世界初公開となった昨年のミラノショー(EICMA)でも「110kW(≒150ps)/100Nm(≒10.2kg-m)」以上としか明かされていない。具体的にどのぐらいの出力/トルクになりますか?
ホンダ:まだお答えできませんが、ご期待いただければと。
YM:SC77型のCBR1000RRは192ps/11.6kg-mを発揮していました。CB1000ホーネットの「150ps以上」とはだいぶ開きがありますが…。
ホンダ:そこは…ご期待ください(笑)。ただし、ホーネットは日常の使いやすさやワインディングなどにおける中低速域の楽しさを重視しているので、けして最高出力だけを追う車両ではありません。ドライバビリティなどを含めて出力を最適化しているとお考えください。
YM:エンジンはSC77から何を変更していますか? FIなどの制御系は当然異なると思いますが、内部パーツも違うのでしょうか?
ホンダ:はい。動弁系やピストンを見直しています。
YM:ピストンというと…圧縮比が違うのでしょうか?
ホンダ:その詳細も現状ではお伝えできません。
YM:いろいろ突っ込んでばかりで申し訳ありません。それなのに、またまたCB1000Rとの比較を聞きたくなってしまうのですが(笑)。CB1000Rはバックボーンで、CB1000ホーネットはツインスパーと、同じスチールフレームでも形態が異なります。
ホンダ:まずはエンジンの吸気方式の違いに依ります。CB1000Rは吸気レイアウトがサイドドラフト式で、シリンダーヘッド後方にエアクリーナーを置けますが、CB1000ホーネットはダウンドラフト式となるため、エアクリーナーはシリンダーヘッド上に置くことになります。それに見合ったフレーム形態が必要になることと、さらに出力に合わせた高い安定性を得るための最適な剛性などをトータルで検討した結果、ホーネットではツインスパーを選択しました。
あえて装飾を抑え、造形を引き立たせる
YM:グラフィックなどを用いない、単色のボティカラーのせいもあるかもしれませんが、車両全体としてはシンプルな仕立てというか、あえて派手派手しさを抑えているようにも感じます。
ホンダ:それはCB1000ホーネットの狙いでもあります。装飾的に彩って見せるのではなく、ホーネットのグラマラスなスタイルを最大限に引き立たせたかったんです。細部の造形で目を引くのではなく、スタイリングやボディラインの魅力を最大限に表現するため、あえてデコラティブな装飾は抑えています。
YM:シンプルな仕立ては狙いなんですね。個人的には金色のブレーキキャリパーとか黄色いサスペンションのグレードが追加されるのでは…なんて思ってしまいました。
ホンダ:なるほど(笑)。
YM:フレームのスイングアームピボットまわりも平らな板状というか、かなりシンプルな仕立てです。
ホンダ:はい。ですが、シートに近い部分はギューッと絞り込むなど、そういう部分で抑揚を表現しています。ここの絞り込みは足着き性にも貢献していて、初めてビッグバイクに乗るようなお客様、ミドルクラスからのステップアップでも違和感のない取り回しを実現しています。
YM:ミドルからのステップアップはかなり意識されているのですか?
ホンダ:もちろん意識しています。とはいえ走行性能も高いので、ベテランの方にも十分に楽しんでいただけます。
YM:かなり幅広いユーザー層を意識されているんですね。
ホンダ:何度も言うように、ホーネットというバイクは日常の使いやすさと高い走行性能の両立が伝統で、今回もそこにチームとして注力しています。ですのでぜひミドルクラスの方々にも乗っていただいて、高い出力の楽しさなど、新しいバイクの魅力を体感していただきたいです。
YM:高い出力の楽しさ!! その数値をどのあたりに設定されるのか、とても楽しみです。ありがとうございました。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(新型大型二輪 [751〜1000cc])
もう走れるプロトがある! 市販化も明言だ 「内燃機関領域の新たなチャレンジと位置づけており、モーターサイクルを操る楽しさ、所有する喜びをより一層体感できることを目指している。走りだけでなく、燃費、排ガ[…]
デュアルLEDプロジェクターヘッドライトの鋭い眼光! ホンダは、昨秋のEICMAで発表した新型「CB750ホーネット」を、予告通り国内モデルとして正式発表した。 アシスト&スリッパークラッチを採用する[…]
大型二輪免許は18歳から取得可能! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外には“AT限定”免許も存在する[…]
YZF-R9の開発者・お二人にインタビュー スピンフォージドホイールを非採用の理由とは? (前編から続く)編集部:エンジンですが、内部部品や吸排気系も含め、基本的にはMT-09と共通です。YZF-R9[…]
ステップアップの階段・R7の成功が生んだR9 YZF-R9の開発者・お二人にインタビュー 編集部:まずはYZF-R9(以下R9)の企画経緯や狙いを教えてください。 兎田:他社さんを含めてスーパースポー[…]
最新の関連記事(CB1000ホーネット)
1位:ホンダ新型「CB1000」8月時点最新情報まとめ ホンダがCB1000ホーネットをベースに、CB1300の後継機として開発を進めているというウワサの新型CB1000。その8月時点のスクープ情報ま[…]
大型バイクのホーネットシリーズとしては、2001年発売(2002年型で国内販売終了)のCB900ホーネット以来となる新型モデル「CB1000ホーネット」「CB1000ホーネットSP」が2025年1月2[…]
SC77の4気筒エンジンを搭載し、SPは出力6psを上乗せ ホンダは、EICMA 2023(ミラノショー)でプロトタイプを公開していた新型ネイキッドモデル「CB1000ホーネット」および上級版の「CB[…]
SC77の4気筒エンジンを搭載し、車重は211kg(SP=212kg) ホンダは欧州で、EICMA 2023(ミラノショー)でプロトタイプを公開していた新型ネイキッドモデル「CB1000ホーネット」お[…]
外観は現行を昇華。動力性能は歴代最強か?! 新型CB1000は、ホンダがCB1300の後継機として開発が進めているとウワサされる車両で、ヤングマシンが独占スクープ中のモデル。具体的にはCB1000ホー[…]
人気記事ランキング(全体)
カワサキUSAが予告動画を公開!!! カワサキUSAがXで『We Heard You. #2Stroke #GoodTimes #Kawasaki』なるポストを短い動画とともに投稿した。動画は「カワサ[…]
まったく本気を出していないマルク・マルケス 11月18日(日)に最終戦ソリダリティGPを終え、翌18日(月)〜19日(火)には、同じカタルニアサーキットで2025年に向けてのテストが行われた。チームや[…]
根強い人気のズーマー 2000年代、若者のライフスタイルに合ったバイクを生み出すべく始まった、ホンダの『Nプロジェクト』。そんなプロジェクトから生まれた一台であるズーマーは、スクーターながら、パイプフ[…]
【’09VMAX開発秘話】2リッター「音魂(オトダマ)」は失敗だった 新VMAXの開発には実に十数年の歳月が費やされた。このプロジェクトを長い間推し進めてきた中心人物は開発の経緯をおよそ次のように語る[…]
欧州&北米で昨秋登場した新型YZF-R3の250cc版 ヤマハはインドネシアで新型「YZF-R25」を発表した。2024年10月に欧州&北米で登場した新型YZF-R3と同様のモデルチェンジ内容とした2[…]
最新の投稿記事(全体)
電子制御デバイスをさらに進化させてパワーアップも果たしたモダンネイキッド スピードトリプル1200RSは、2021年に初登場となったロードスターシリーズのフラッグシップモデルだ。パワフルな1160cc[…]
剛性を求め丸から角へ。そしてしなり重視の時代に このスイングアームの考え方だが、今回お話を尋ねたプロによると、まずはショックユニットをしっかりと作動させる「縦剛性」が重要。ショックに入力が伝わる前にス[…]
「日本の旗艦が世界を討つ」 今から約半世紀前の1959年は、ホンダがマン島TTレースおよび世界GPに挑戦を開始した年だ。 同年、戦後より国民の移動手段として補助エンジンや実用二輪車を製造販売してきたホ[…]
原付二種の白テープなし、1人乗り専用で、カラーバリエーションは日本と一部共通 北米で2021年モデルとして初登場したトレール125(TRAIL 125 ABS)は、日本でいうところのCT125ハンター[…]
125ccのMTバイクは16歳から取得可能な“小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)[…]
- 1
- 2