
ドゥカティは、”ドゥカティ・ワールド・プレミア2025”の第5弾として、2024年11月5日(現地時間)にフルモデルチェンジしたスーパーバイク”Panigale V2(パニガーレ ブイツー)” を発表し、同日より開催されたミラノショーで初公開した。大幅に進化を遂げた、その詳細を見ていこう。また同時に発表されたそのネイキッドモデル、”Streetfighter V2(ストリートファイター ブイツー)”も最後に紹介。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●写真/外部リンク:ドゥカティ
ミドルSSの究極を目指しフルチェンジ
パニガーレはドゥカティが誇るスーパーバイクで、2018年からはV型4気筒エンジンを搭載し、その戦闘力を高めるとともに車名がパニガーレV4となった。そして2020年には955ccV型2気筒エンジン”スーパークアドロ”を搭載する”パニガーレV2”が登場し、かつては”Lツイン”と称したドゥカティの伝統が継承された。
【DUCATI Panigale V2 / S】主要諸元■全長─ 全幅─ 全高─ 軸距1465 シート高837(各mm) 車重179kg[177.6kg](燃料除く) ■水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ 890cc 120ps/10750rpm 9.5kg-m/8250rpm 変速機6段 燃料タンク容量15L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●価格:211万9000円[240万8000円] ●色:赤 ●国内発売日:未定 ※[]内はS
このたび発表された新型パニガーレV2は、大排気量車のダウンサイジングという従来の方法とは異なり、まったくの新設計として開発された。進化したポイントとしては、とくに890cc水冷90度V型2気筒エンジンを搭載していることが最大のトピックだが、主だった変更点は次のとおりだ。
- 従来型より最大9kg軽量化された新開発エンジン
- 軽量化された新設計フレーム
- 従来型より17kgもの軽量化
- 両持ち式スイングアームの採用
- 電子制御デバイス群の最新化
- 5インチフルカラー液晶ディスプレイの採用
- 新設計されたフェアリングや燃料タンク
パワーよりも軽さと扱いやすさを追求
まずはエンジンからみていこう。水冷90度V型2気筒というレイアウトに変更はないが、排気量は従来型の955ccから65ccも小さい890ccとしている。また、ドゥカティの代名詞的な機構であったデスモドロミック(強制開閉バルブ機構)をやめ、一般的なバルブスプリング式を採用した点も大きな変更だ。
これにより最高出力は155psから120psと35psも減ったが、同時にエンジン単体重量は9kgも軽い54.4kgに仕上がっている。空冷式となるスクランブラーのエンジンと比較しても、約5.8kgも軽い。従来は大排気量エンジンの設計をベースとしていたが、この”V2”エンジンは当初からミドルクラスとして設計され、公道での扱いやすさを念頭に開発された。そのための最優先事項が、必要十分なパワーと軽さだ。
吸気側バルブの作動タイミングを最大52度の範囲で変える可変式とし(IVT)、低回転域でのリニアなトルクと、高回転域での俊敏なスロットルレスポンスを両立した。インテークバルブにはMotoGPマシン同様のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)加工を施し、表面の円滑度と硬度を高めている。
IVTにより、新型V2エンジンは3000rpmで最大トルクの70%以上を発生し、3500~11000rpmでは常に最大トルクの80%を維持する。このため全域にわたって扱いやすく、パワフルなエンジン特性を実現した。
シリンダーのバンク角は90度だが、エンジンを後ろへ20度傾けて搭載している。これにより慣性モーメントとエンジンの前後長の増加を抑え、車体の重量配分を最適化。車両のコントロール性を向上させている。
ドゥカティが行った従来型との走行性能比較では、エンジン出力の低下によりストレートでの最高速度は下回るが、それに対してコーナリングスピードが上昇。とくに低速コーナーでのタイム短縮が際立ち、結果として従来型とほぼ同等のラップタイムを刻めるという。
また、新型V2エンジンには『120psバージョン』と『115psバージョン』の2種類が用意される。前者は、5速と6速のレブリミットが11350rpmに設定されるほか、オプションのレーシングエキゾーストを装着した場合は最高出力は126ps、最大トルクは9.99 kg-mまで向上する。
後者の出力値は115ps、9.39kg-mとなるが、より堅牢なコネクティングロッドとフライホイールを装備する。これにより慣性モーメントは12%、エンジン重量も0.51kg増加するが、とくに低回転域におけるパワーバランスの最適化が図られている。また、USB充電ポートなどの電力需要に対応するため、より強力なオルタネーター(発電機)を搭載する。
スイングアームは片持ち式から両持ち式へ
排気系では、エキゾーストパイプが上方へ向かって立ち上がりコンパクトなサイレンサーに接続するアップタイプの2本出しとなった。車体下部にサイレンサーが設置されていた従来型やV4とは一線を画すディテールで、スタイリング全体の印象を大きく変えている。
新型V2エンジンはもちろんユーロ5+に適合し、メンテナンスサイクルはバルブクリアランス点検は30000km、オイル交換は15000kmとしている。
新型V4エンジンを搭載するフレームは、従来型同様に内部をエアボックスとする鋳造アルミ製モノコック式で、エンジンもシャーシとして活用する構造にも変更はないが、0.2kgの軽量化が図られた。鋳造アルミ製のリヤフレームは上部がメインフレーム、下部はエンジンに固定される。また、リヤフレームに装着されるタンデムステップは簡単に脱着できるようになっている。
エンジンにマウントされるスイングアームは低圧鋳造で製造され、部材の厚さを抑えることに成功。従来の片持ち式から両持ち式に変更したことで外観が大きく変わっただけでなく、コーナリングでの安定性とコントロール性を向上させている。
エンジンをはじめとする軽量化は車体全体で徹底され、車重は従来型よりも17kgも軽くすることに成功している。
電子制御デバイス群も最新版にアップデート
サスペンションは、スタンダードモデルがフロントにマルゾッキ製43mmフルジャスタブル倒立フォーク、リヤにKYB製フルアジャスタブルモノショックを装備。Sはフロントがオーリンズ製NIX30 TiNコーティング フルアジャスタブル43mm倒立フォーク、リヤにオーリンズ製フルアジャスタブルモノショックを備える。
電子制御デバイス群は、新型パニガーレV4同様に最新のものにアップデートされた。コーナリングABS、ドゥカティウィリーコントロール(DWC)、ドゥカティトラクションコントロール(DTC)、エンジンブレーキコントロール(EDC)、ドゥカティクイックシフト2.0(DQC)、オートタイヤキャリブレーション、ドゥカティブレーキライト(DBL)が標準装備となり、ドゥカティパワーローンチ(DPL)とドゥカティピットリミッターはSのみに装備される。ライディングモードは、レース、スポーツ、ロード、ウェットの4種から選択可能だ。
また、ラップタイマープロ、クルーズコントロール、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)、盗難防止システム、USBポート、ドゥカティマルチメディアシステム(DMS)、ターンバイターンナビゲーション、グリップヒーターは純正オプションとして用意される。
メーターは5インチフルカラー液晶ディスプレイ(解像度800×600ピクセル)を採用。速度やエンジン回転はもちろん多彩な電子制御デバイス群の作動状況を瞬時に把握するインターフェイスで、公道とサーキットなど走行状況に応じて最適化された3種の表示レイアウトが用意されている。
また、Sにはリチウムイオンバッテリーを搭載し、重量軽減に貢献している。
ライディングポジションも扱いやすさを考慮し変更
外装デザインは、パニガーレV4からインスピレーションを受けたデザインとしながらも、完全新設計であるパニガーレV2に最適化した。ウイングレットを撤廃しつつ、フロントの負荷を軽減。エアロダイナミクスを追求したフェアリングは、シンプルながらもボリューム感のあるボディパネルで構成される。
サイドフェアリングは走行風をライダーの脚部に導くエアダクトを設け、エンジンの放熱を緩和。これはラジエターからの熱気を排出するよう設計されたアッパーベントとの相乗効果をもたらし、高温状態になるサーキット走行や真夏の公道走行において有効に機能する。
燃料タンクもパニガーレV4同様に、ブレーキングやコーナリングにおけるライダーの負荷をサポートするべく人間工学に基づいた形状を追求。ライダーとの接触面から金属パーツをなくすとともに、バイクとの一体感を高める造形を実現している。これによりブレーキングでの腕の負荷、コーナリングで身体をずらす際の負荷も軽減した。
ライディングポジションの最適化も行われ、手首の負担を軽減する高さと角度にセットされたハンドルバー、膝の疲労を抑える位置に設けられたフットペグ、十分な厚みを確保しつつも高さ837mmに抑えたシートなどで、市街地走行からスポーツ走行まで扱いやすい特性とした。パッセンジャーシートはスタンダードでは標準装備だが、Sではシングルシートが標準となる。
車体色は、スタンダードとS、いずれもドゥカティレッド(赤)のみとなる。国内における車両価格はスタンダードが211万9000円、Sが240万8000円だが、導入時期は未定だ。
ストリートファイターV2も同様に進化
“ストリートファイター”は、ドゥカティのスーパーバイクからフェアリングを外し、バーハンドルによるワイドでアップライトな乗車姿勢などによって市街地走行でのパフォーマンスを重視したモデルだ。このたびの新型”ストリートファイターV2”も、新型パニガーレV2と同じエンジンとシャーシ、最新電子制御デバイス群を採用し、外装デザインの刷新を受けてのフルモデルチェンジとなった。
【DUCATI Streetfighter V2 / S】主要諸元■全長─ 全幅─ 全高─ 軸距1493 シート高838(各mm) 車重178kg[176.6kg](燃料除く) ■水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ 890cc 120ps/10750rpm 9.5kg-m/8250rpm 変速機6段 燃料タンク容量15L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●価格:194万円[222万9000円] ●色:赤 ●国内発売日:未定 ※[]内はS
なので、ここでは新型パニガーレV2とのおもな相違点をみていこう。
フェアリングが簡素化されたことなどで、車重はパニガーレV2よりも約1kg軽く仕上がっている。エンジン最高出力と最大トルク、トランスミッションのギヤ比、最終減速比はパニガーレV2と同一だが、スイングアームは30mm延長、リヤホイールトラベルは10mm増の160mm、キャスター角は0.5度増の24.1度、トレールは10mm増の103mm、ホイールベースは28mm増の1493mmと異なるディメンションを持ち、サーキットよりも公道を主眼としたリセッティングが行われた。なお、シート高は1mm高い838mmとなっている。
スタンダードはサスペンションがザックス+KYBとタンデム仕様、Sは前後オーリンズ+シングルシート仕様となること、車体色がドゥカティレッド(赤)の1色のみとなるのはパニガーレV2と同じだ。車両価格はスタンダードが194万円、Sが222万9000円で、国内導入時期は未定だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ミドルSSの究極を目指しフルチェンジ
歴史の息吹を自らの手で所有する悦び 1926年の創業以来、数々の伝説的なレースでの勝利と、心を揺さぶる美しいデザインで世界中のライダーを魅了してきたドゥカティ。その100年にわたる栄光の軌跡を、現代の[…]
創業100周年を祝う特別なブランド体験「DUCATI DAY 2026」 2026年の「DUCATI DAY」は、単なる車両展示にとどまらず、ドゥカティのブランドが持つ100年の歴史とこれからの未来を[…]
2026年6月6日(土)、バイクの聖地・鈴鹿サーキット(交通教育センター)にて「Ducati Day 2026」の開催が決定! 今回の目玉は何と言っても、ベールを脱ぐ3台の日本初公開モデル。ドゥカティ[…]
漆黒と真紅が織りなす、ストリートでの圧倒的な存在感 ドゥカティの単気筒ラインアップを完成形へと導くモデルとしてこのほど登場した「Nera(ネラ)」。イタリア語で「黒」を意味するその名の通り、デザイン全[…]
やっぱりドゥカティ!小さくても高速域の信頼性は抜群⁉【ドゥカティ125スポーツ(1950年頃)】 今やスポーツバイクのハイエンドといえば、ドゥカティこそ真っ先に上がるメーカーですが、会社設立当初(19[…]
パワーよりも軽さと扱いやすさを追求
ありきたりなデザインへの不満を吹き飛ばす、独創のカフェレーサー 「最新のネイキッドバイクはどれも似たような顔つきで、ガレージに置いたときのワクワク感が足りない」。そんな大人の不満を、一瞬でかき消してく[…]
高校の裏で見かけたFが僕をバイクの世界に導いた 僕が“CB”と初めて出会ったのは、高校生だった頃。学校の裏に停めてあったバイクに心を奪われてしまったんだ。第一印象は「とにかくデカイ!」。車名もエンジン[…]
アドベンチャー特有の「ノーズダイブの恐怖」を過去にするハブステア 背が高くサスペンションのストローク量が長いアドベンチャーバイクは、ツーリングで快適な反面、ハードブレーキング時にフロントが大きく沈み込[…]
「私自身もブラックを予約しているんです」 「“CB”はクリエイティブ・ベンチマーク(Creative Benchmark)として、その時代ごとにおけるバイク作りの基準であるべき」とは若手だった頃に、今[…]
スーパースポーツの「扱いきれない不安」を最新技術で打ち破る 「リッタークラスのスーパースポーツは速すぎる。強烈な加速や高速域でフロントが浮き気味になり、接地感に不安を覚える」。圧倒的なパワーと引き換え[…]
スイングアームは片持ち式から両持ち式へ
未塗装樹脂パーツ、白っぽくなっていませんか? 最近のバイクでは必ずといって良いほど採用されている素材が「未塗装樹脂パーツ」です。 未塗装樹脂パーツとは文字通り塗装していない樹脂製パーツのことです。黒や[…]
二輪のふらつきにサヨナラ。四輪がもたらす圧倒的な安心感 自転車や二輪の電動モビリティに乗っていて、低速時や荷物を積んだ時のふらつきにヒヤリとした経験はないだろうか。特に歩道走行モードのような低速域では[…]
長距離ツーリングの退屈さを打ち破る、圧倒的なオーラ 「長距離を走れるツアラーは快適だけれど、デザインがどれも似たり寄ったりで刺激が足りない」。そんな不満を心の奥底に抱えながら、ガレージに収める特別な1[…]
レトロなスタイルは好きだが、急ブレーキの不安は消したい 「クラシックなデザインのバイクに乗りたいけれど、安全装備がついていないのは不安だ」。雨の日のマンホールや、パニックブレーキでのタイヤロックにヒヤ[…]
スリムな設計で取り付け場所の自由度がUP! スマートな防犯用アイテム登場 出先でのヘルメットの盗難抑止に重宝するヘルメットロックだが、近年のバイクはスマートフォンホルダーや各種コントローラーなどでハン[…]
電子制御デバイス群も最新版にアップデート
ファンティックの考える「スクランブラー」とは!? ファンティックの代表車種「キャバレロ」はスクランブラーと呼ばれるスタイルですが、野口代表はどうお考えですか? 「スクランブラー。スクランブル=緊急発進[…]
誕生当時は出張修理用マシンだった⁉ トライクの歴史を紐解けば、当初は修理工具を積んだ移動サービスカー「サービカー」にたどり着きますが、これは1930年代のオールドファッション。近代的なモデルは、200[…]
80年代の熱気を呼び覚ますジェットヘルメットに最適なアイウェア 日差しや走行風、巻き上がる砂埃から目を保護するゴーグルは、快適なライディングに欠かせない装備。特に小ぶりなジェットヘルメットや、クラシッ[…]
世界限定499台、ハイブリッドシステムを採用したラ・フェラーリ ラ・フェラーリはフェラーリが2013~2016年にかけて限定生産した、ハイブリッドシステム「HY-KERS」を搭載する最高峰のハイパーカ[…]
属人的な「才能発掘」からの脱却と進化 モータースポーツの最高峰であるMotoGP。そこでは、ライダー個人の圧倒的な技能、過酷なレース環境、そして極限までチューニングされたマシンの特性が複雑に絡み合い、[…]

ドゥカティは、”ドゥカティ・ワールド・プレミア2025”の第5弾として、2024年11月5日(現地時間)にフルモデルチェンジしたスーパーバイク”Panigale V2(パニガーレ ブイツー)” を発表し、同日より開催されたミラノショーで初公開した。大幅に進化を遂げた、その詳細を見ていこう。また同時に発表されたそのネイキッドモデル、”Streetfighter V2(ストリートファイター ブイツー)”も最後に紹介。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●写真/外部リンク:ドゥカティ
ライディングポジションも扱いやすさを考慮し変更
パニガーレはドゥカティが誇るスーパーバイクで、2018年からはV型4気筒エンジンを搭載し、その戦闘力を高めるとともに車名がパニガーレV4となった。そして2020年には955ccV型2気筒エンジン”スーパークアドロ”を搭載する”パニガーレV2”が登場し、かつては”Lツイン”と称したドゥカティの伝統が継承された。
【DUCATI Panigale V2 / S】主要諸元■全長─ 全幅─ 全高─ 軸距1465 シート高837(各mm) 車重179kg[177.6kg](燃料除く) ■水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ 890cc 120ps/10750rpm 9.5kg-m/8250rpm 変速機6段 燃料タンク容量15L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●価格:211万9000円[240万8000円] ●色:赤 ●国内発売日:未定 ※[]内はS
このたび発表された新型パニガーレV2は、大排気量車のダウンサイジングという従来の方法とは異なり、まったくの新設計として開発された。進化したポイントとしては、とくに890cc水冷90度V型2気筒エンジンを搭載していることが最大のトピックだが、主だった変更点は次のとおりだ。
- 従来型より最大9kg軽量化された新開発エンジン
- 軽量化された新設計フレーム
- 従来型より17kgもの軽量化
- 両持ち式スイングアームの採用
- 電子制御デバイス群の最新化
- 5インチフルカラー液晶ディスプレイの採用
- 新設計されたフェアリングや燃料タンク
ストリートファイターV2も同様に進化
まずはエンジンからみていこう。水冷90度V型2気筒というレイアウトに変更はないが、排気量は従来型の955ccから65ccも小さい890ccとしている。また、ドゥカティの代名詞的な機構であったデスモドロミック(強制開閉バルブ機構)をやめ、一般的なバルブスプリング式を採用した点も大きな変更だ。
これにより最高出力は155psから120psと35psも減ったが、同時にエンジン単体重量は9kgも軽い54.4kgに仕上がっている。空冷式となるスクランブラーのエンジンと比較しても、約5.8kgも軽い。従来は大排気量エンジンの設計をベースとしていたが、この”V2”エンジンは当初からミドルクラスとして設計され、公道での扱いやすさを念頭に開発された。そのための最優先事項が、必要十分なパワーと軽さだ。
吸気側バルブの作動タイミングを最大52度の範囲で変える可変式とし(IVT)、低回転域でのリニアなトルクと、高回転域での俊敏なスロットルレスポンスを両立した。インテークバルブにはMotoGPマシン同様のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)加工を施し、表面の円滑度と硬度を高めている。
IVTにより、新型V2エンジンは3000rpmで最大トルクの70%以上を発生し、3500~11000rpmでは常に最大トルクの80%を維持する。このため全域にわたって扱いやすく、パワフルなエンジン特性を実現した。
シリンダーのバンク角は90度だが、エンジンを後ろへ20度傾けて搭載している。これにより慣性モーメントとエンジンの前後長の増加を抑え、車体の重量配分を最適化。車両のコントロール性を向上させている。
ドゥカティが行った従来型との走行性能比較では、エンジン出力の低下によりストレートでの最高速度は下回るが、それに対してコーナリングスピードが上昇。とくに低速コーナーでのタイム短縮が際立ち、結果として従来型とほぼ同等のラップタイムを刻めるという。
また、新型V2エンジンには『120psバージョン』と『115psバージョン』の2種類が用意される。前者は、5速と6速のレブリミットが11350rpmに設定されるほか、オプションのレーシングエキゾーストを装着した場合は最高出力は126ps、最大トルクは9.99 kg-mまで向上する。
後者の出力値は115ps、9.39kg-mとなるが、より堅牢なコネクティングロッドとフライホイールを装備する。これにより慣性モーメントは12%、エンジン重量も0.51kg増加するが、とくに低回転域におけるパワーバランスの最適化が図られている。また、USB充電ポートなどの電力需要に対応するため、より強力なオルタネーター(発電機)を搭載する。
スイングアームは片持ち式から両持ち式へ
排気系では、エキゾーストパイプが上方へ向かって立ち上がりコンパクトなサイレンサーに接続するアップタイプの2本出しとなった。車体下部にサイレンサーが設置されていた従来型やV4とは一線を画すディテールで、スタイリング全体の印象を大きく変えている。
新型V2エンジンはもちろんユーロ5+に適合し、メンテナンスサイクルはバルブクリアランス点検は30000km、オイル交換は15000kmとしている。
新型V4エンジンを搭載するフレームは、従来型同様に内部をエアボックスとする鋳造アルミ製モノコック式で、エンジンもシャーシとして活用する構造にも変更はないが、0.2kgの軽量化が図られた。鋳造アルミ製のリヤフレームは上部がメインフレーム、下部はエンジンに固定される。また、リヤフレームに装着されるタンデムステップは簡単に脱着できるようになっている。
エンジンにマウントされるスイングアームは低圧鋳造で製造され、部材の厚さを抑えることに成功。従来の片持ち式から両持ち式に変更したことで外観が大きく変わっただけでなく、コーナリングでの安定性とコントロール性を向上させている。
エンジンをはじめとする軽量化は車体全体で徹底され、車重は従来型よりも17kgも軽くすることに成功している。
電子制御デバイス群も最新版にアップデート
サスペンションは、スタンダードモデルがフロントにマルゾッキ製43mmフルジャスタブル倒立フォーク、リヤにKYB製フルアジャスタブルモノショックを装備。Sはフロントがオーリンズ製NIX30 TiNコーティング フルアジャスタブル43mm倒立フォーク、リヤにオーリンズ製フルアジャスタブルモノショックを備える。
電子制御デバイス群は、新型パニガーレV4同様に最新のものにアップデートされた。コーナリングABS、ドゥカティウィリーコントロール(DWC)、ドゥカティトラクションコントロール(DTC)、エンジンブレーキコントロール(EDC)、ドゥカティクイックシフト2.0(DQC)、オートタイヤキャリブレーション、ドゥカティブレーキライト(DBL)が標準装備となり、ドゥカティパワーローンチ(DPL)とドゥカティピットリミッターはSのみに装備される。ライディングモードは、レース、スポーツ、ロード、ウェットの4種から選択可能だ。
また、ラップタイマープロ、クルーズコントロール、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)、盗難防止システム、USBポート、ドゥカティマルチメディアシステム(DMS)、ターンバイターンナビゲーション、グリップヒーターは純正オプションとして用意される。
メーターは5インチフルカラー液晶ディスプレイ(解像度800×600ピクセル)を採用。速度やエンジン回転はもちろん多彩な電子制御デバイス群の作動状況を瞬時に把握するインターフェイスで、公道とサーキットなど走行状況に応じて最適化された3種の表示レイアウトが用意されている。
また、Sにはリチウムイオンバッテリーを搭載し、重量軽減に貢献している。
ライディングポジションも扱いやすさを考慮し変更
外装デザインは、パニガーレV4からインスピレーションを受けたデザインとしながらも、完全新設計であるパニガーレV2に最適化した。ウイングレットを撤廃しつつ、フロントの負荷を軽減。エアロダイナミクスを追求したフェアリングは、シンプルながらもボリューム感のあるボディパネルで構成される。
サイドフェアリングは走行風をライダーの脚部に導くエアダクトを設け、エンジンの放熱を緩和。これはラジエターからの熱気を排出するよう設計されたアッパーベントとの相乗効果をもたらし、高温状態になるサーキット走行や真夏の公道走行において有効に機能する。
燃料タンクもパニガーレV4同様に、ブレーキングやコーナリングにおけるライダーの負荷をサポートするべく人間工学に基づいた形状を追求。ライダーとの接触面から金属パーツをなくすとともに、バイクとの一体感を高める造形を実現している。これによりブレーキングでの腕の負荷、コーナリングで身体をずらす際の負荷も軽減した。
ライディングポジションの最適化も行われ、手首の負担を軽減する高さと角度にセットされたハンドルバー、膝の疲労を抑える位置に設けられたフットペグ、十分な厚みを確保しつつも高さ837mmに抑えたシートなどで、市街地走行からスポーツ走行まで扱いやすい特性とした。パッセンジャーシートはスタンダードでは標準装備だが、Sではシングルシートが標準となる。
車体色は、スタンダードとS、いずれもドゥカティレッド(赤)のみとなる。国内における車両価格はスタンダードが211万9000円、Sが240万8000円だが、導入時期は未定だ。
ストリートファイターV2も同様に進化
“ストリートファイター”は、ドゥカティのスーパーバイクからフェアリングを外し、バーハンドルによるワイドでアップライトな乗車姿勢などによって市街地走行でのパフォーマンスを重視したモデルだ。このたびの新型”ストリートファイターV2”も、新型パニガーレV2と同じエンジンとシャーシ、最新電子制御デバイス群を採用し、外装デザインの刷新を受けてのフルモデルチェンジとなった。
【DUCATI Streetfighter V2 / S】主要諸元■全長─ 全幅─ 全高─ 軸距1493 シート高838(各mm) 車重178kg[176.6kg](燃料除く) ■水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ 890cc 120ps/10750rpm 9.5kg-m/8250rpm 変速機6段 燃料タンク容量15L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●価格:194万円[222万9000円] ●色:赤 ●国内発売日:未定 ※[]内はS
なので、ここでは新型パニガーレV2とのおもな相違点をみていこう。
フェアリングが簡素化されたことなどで、車重はパニガーレV2よりも約1kg軽く仕上がっている。エンジン最高出力と最大トルク、トランスミッションのギヤ比、最終減速比はパニガーレV2と同一だが、スイングアームは30mm延長、リヤホイールトラベルは10mm増の160mm、キャスター角は0.5度増の24.1度、トレールは10mm増の103mm、ホイールベースは28mm増の1493mmと異なるディメンションを持ち、サーキットよりも公道を主眼としたリセッティングが行われた。なお、シート高は1mm高い838mmとなっている。
スタンダードはサスペンションがザックス+KYBとタンデム仕様、Sは前後オーリンズ+シングルシート仕様となること、車体色がドゥカティレッド(赤)の1色のみとなるのはパニガーレV2と同じだ。車両価格はスタンダードが194万円、Sが222万9000円で、国内導入時期は未定だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ドゥカティ)
歴史の息吹を自らの手で所有する悦び 1926年の創業以来、数々の伝説的なレースでの勝利と、心を揺さぶる美しいデザインで世界中のライダーを魅了してきたドゥカティ。その100年にわたる栄光の軌跡を、現代の[…]
創業100周年を祝う特別なブランド体験「DUCATI DAY 2026」 2026年の「DUCATI DAY」は、単なる車両展示にとどまらず、ドゥカティのブランドが持つ100年の歴史とこれからの未来を[…]
2026年6月6日(土)、バイクの聖地・鈴鹿サーキット(交通教育センター)にて「Ducati Day 2026」の開催が決定! 今回の目玉は何と言っても、ベールを脱ぐ3台の日本初公開モデル。ドゥカティ[…]
漆黒と真紅が織りなす、ストリートでの圧倒的な存在感 ドゥカティの単気筒ラインアップを完成形へと導くモデルとしてこのほど登場した「Nera(ネラ)」。イタリア語で「黒」を意味するその名の通り、デザイン全[…]
やっぱりドゥカティ!小さくても高速域の信頼性は抜群⁉【ドゥカティ125スポーツ(1950年頃)】 今やスポーツバイクのハイエンドといえば、ドゥカティこそ真っ先に上がるメーカーですが、会社設立当初(19[…]
最新の関連記事(新型大型二輪 [751〜1000cc])
ありきたりなデザインへの不満を吹き飛ばす、独創のカフェレーサー 「最新のネイキッドバイクはどれも似たような顔つきで、ガレージに置いたときのワクワク感が足りない」。そんな大人の不満を、一瞬でかき消してく[…]
高校の裏で見かけたFが僕をバイクの世界に導いた 僕が“CB”と初めて出会ったのは、高校生だった頃。学校の裏に停めてあったバイクに心を奪われてしまったんだ。第一印象は「とにかくデカイ!」。車名もエンジン[…]
アドベンチャー特有の「ノーズダイブの恐怖」を過去にするハブステア 背が高くサスペンションのストローク量が長いアドベンチャーバイクは、ツーリングで快適な反面、ハードブレーキング時にフロントが大きく沈み込[…]
「私自身もブラックを予約しているんです」 「“CB”はクリエイティブ・ベンチマーク(Creative Benchmark)として、その時代ごとにおけるバイク作りの基準であるべき」とは若手だった頃に、今[…]
スーパースポーツの「扱いきれない不安」を最新技術で打ち破る 「リッタークラスのスーパースポーツは速すぎる。強烈な加速や高速域でフロントが浮き気味になり、接地感に不安を覚える」。圧倒的なパワーと引き換え[…]
人気記事ランキング(全体)
未塗装樹脂パーツ、白っぽくなっていませんか? 最近のバイクでは必ずといって良いほど採用されている素材が「未塗装樹脂パーツ」です。 未塗装樹脂パーツとは文字通り塗装していない樹脂製パーツのことです。黒や[…]
二輪のふらつきにサヨナラ。四輪がもたらす圧倒的な安心感 自転車や二輪の電動モビリティに乗っていて、低速時や荷物を積んだ時のふらつきにヒヤリとした経験はないだろうか。特に歩道走行モードのような低速域では[…]
長距離ツーリングの退屈さを打ち破る、圧倒的なオーラ 「長距離を走れるツアラーは快適だけれど、デザインがどれも似たり寄ったりで刺激が足りない」。そんな不満を心の奥底に抱えながら、ガレージに収める特別な1[…]
レトロなスタイルは好きだが、急ブレーキの不安は消したい 「クラシックなデザインのバイクに乗りたいけれど、安全装備がついていないのは不安だ」。雨の日のマンホールや、パニックブレーキでのタイヤロックにヒヤ[…]
スリムな設計で取り付け場所の自由度がUP! スマートな防犯用アイテム登場 出先でのヘルメットの盗難抑止に重宝するヘルメットロックだが、近年のバイクはスマートフォンホルダーや各種コントローラーなどでハン[…]
最新の投稿記事(全体)
ファンティックの考える「スクランブラー」とは!? ファンティックの代表車種「キャバレロ」はスクランブラーと呼ばれるスタイルですが、野口代表はどうお考えですか? 「スクランブラー。スクランブル=緊急発進[…]
誕生当時は出張修理用マシンだった⁉ トライクの歴史を紐解けば、当初は修理工具を積んだ移動サービスカー「サービカー」にたどり着きますが、これは1930年代のオールドファッション。近代的なモデルは、200[…]
80年代の熱気を呼び覚ますジェットヘルメットに最適なアイウェア 日差しや走行風、巻き上がる砂埃から目を保護するゴーグルは、快適なライディングに欠かせない装備。特に小ぶりなジェットヘルメットや、クラシッ[…]
世界限定499台、ハイブリッドシステムを採用したラ・フェラーリ ラ・フェラーリはフェラーリが2013~2016年にかけて限定生産した、ハイブリッドシステム「HY-KERS」を搭載する最高峰のハイパーカ[…]
属人的な「才能発掘」からの脱却と進化 モータースポーツの最高峰であるMotoGP。そこでは、ライダー個人の圧倒的な技能、過酷なレース環境、そして極限までチューニングされたマシンの特性が複雑に絡み合い、[…]
- 1
- 2












































