「任意保険」とは、その名の通り加入が任意となっている保険です。「バイク保険」と呼ばれるものは一般的に任意保険のことを指しています。クルマやバイクを使用するにあたって加入が必要な「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」に対し、加入/非加入や保険内容の決定が当人の意思に任せられるため、この名前で呼ばれています。任意保険の加入にあたっては、どのような点に注意し、どのような保険内容にするのがよいのでしょうか?
●文:ピーコックブルー(ヤングマシン編集部)
自賠責保険をカバーする任意加入の保険
自賠責保険との違い
任意保険は、自賠責保険と同じく、事故で生じた莫大な損害を金銭で解決するため仕組みではありますが、両者では賠償額および適用範囲が異なっています。
自賠責保険は、相手方/同乗者の治療費/慰謝料/休業損害などの補償を目的としているため、相手方の物件損害(物損)/自分の物損/自分の人身傷害は補償されません。
つまり任意保険とは、自賠責保険では補償されない損害や、自賠責保険ではまかないきれないほどの莫大な賠償を補償するための保険だと言えます。なお、補償額や補償範囲は契約内容によって異なるため、加入者自身で保険内容の調整が求められるという特徴もあります。
そのため、任意保険の内容をよく知らないまま加入してしまうと、必要な補償が不足しているといった事態にもなりかねませんし、かといって補償内容をむやみに積み増すと、支払う保険料が高くなることも。
では、基本的な任意保険の内容とは一体どのようなものなのでしょうか?
任意保険に加入すると必ず備わる基本的な保険が、対人賠償保険/対物賠償保険/自損事故保険の3つです。
任意保険の基本その1:対人賠償保険
まず、対人賠償保険とは、自賠責保険と同じく、相手方の治療費/慰謝料/休業損害を賠償するための保険です。
自賠責保険の賠償額は死亡で最大3000万円、重度の後遺症が残った場合でも最大で4000万円と、補償として十分とは言えません。それに対し、任意保険の対人賠償限度額はほとんどの保険会社で無制限に設定されるため、億単位の賠償金でも補償されます。
そのため、限度額が無制限になってさえいれば内容に注意すべき点はありません。
任意保険の基本その2:対物賠償保険
次に、対物賠償保険は、相手方のクルマ/バイク/家屋など所有物の修理費用等を賠償する保険であり、限度額は500万円〜2000万 or 無制限を選べます。
バイクの場合、クルマに比べて質量が小さく、相手方に与える損害が小さいと言えるため、限度額を低く設定して保険料を抑えることも可能ではあります。
しかし、トラック事故の加害者/多重事故の加害者/公共交通機関を巻き込んだ事故の加害者になった場合、数億円の損害が出ることもあるため、バイクでも無制限にしておくのが無難です。
任意保険の基本その3:自損事故保険
そして、自損事故保険は、自身が単独で起こした事故における契約者のケガや死亡を補償する保険です。任意保険に加入すれば自動付帯されますが、補償額は保険会社によって異なります。
自損事故保険の補償額は、死亡でおおよそ1500万円、後遺症が残った場合は程度によって最大で2000万円程度であり、この保険だけでは十分な補償が受けられないケースが多くあります。そのため、人身傷害保険や乗員傷害保険にも加入するのが一般的となっています。
その他の補償について【必ず付けておきたいのは人身傷害保険】
その他の補償として、“人身傷害保険”と“乗員傷害保険”は、どちらも契約者本人または同乗者のケガや死亡を補償する保険です。どちらも自損事故保険で不足しがちな補償内容をカバーする保険ですが、賠償額と保険金が支払われるタイミングが異なっています。
- 人身傷害保険:実際にかかった損害額が保険金として支払われるため、補償が手厚い(その代わり保険料は高め)
- 搭乗者傷害保険:人身傷害保険よりも早いタイミングで、一定額の保険金が支払われる
人身傷害保険と乗員傷害保険を付帯するかどうかは任意ですが、両方付帯することのできる場合や、どちらかが必ずセットになっている保険会社もあります。また、125cc以下のバイクが加入できる“ファミリーバイク特約”でも、自損事故保険に人身傷害保険を追加するかどうかを選ぶことが可能です。
バイクは自損事故が多いうえ、身体的な被害が大きくなる傾向があります。人身傷害保険は、ケガの治療費だけでなく仕事ができない間の休業損害も補償してくれるため、家計を支えている立場の人は、人身傷害保険を付帯しておくと安心かもしれません。
そのほか、バイク保険におすすめなのは以下のような補償や特約(契約オプション)です。
- 無保険車傷害保険:相手が保険に加入していなかった場合でも、契約者/同乗者の損害が補償される。相手方からの補償が期待できない、無保険車からの追突などに備えて付けておきたい保険
- 弁護士費用特約:事故交渉に際して、弁護士を雇うための高額な費用をカバーしてくれる特約。なかでも自分自身に一切の過失がない10対0事故は、当事者同時で交渉しなくてはならないため、弁護士がとても頼りとなる
- 車両保険(盗難補償):自分の車両が事故/盗難/自然災害などで損害を受けた際に、その修理費や買い替え費用を補償する保険。車両保険に盗難補償が付帯されていない場合もあるため、盗難されやすい高額なバイクや人気のバイクの場合は、確実に契約内容を確認しておくことが大切
以上の保険をすべて備えていれば安心です。これらの保険を基本とし、現在乗っているバイクの種類やバイクに乗る頻度などに応じて、不要な補償を外すなどの調整を加えましょう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
アクアライン上り線の混雑時間帯の料金が1600円に! 2025年4月から新料金制を導入 12月3日に開催された「第4回東京湾アクアライン交通円滑化対策検討会」において、令和7(2025)年4月からアク[…]
「心の教育」とプロテクターの装着推進が課題 バイク通学実施高校、秩父農工 今井教諭の、日本二普協シンポジウムにおける講演タイトルは「地域と連携した交通安全」。埼玉県の秩父地域は中山間地であり、公共交通[…]
繁華街に多く設置されている”路上駐車場” 県下随一の繁華街として、買い物客や観光客で賑わう三宮(さんのみや)/元町(もとまち)の周辺を歩いていると、バイク駐車場が次々と目に入ってくる。なぜなら、その多[…]
みなさんは、トライクという乗り物をご存知でしょうか。ライダーであればほとんどの方が、目にしたことがあるかと思います。なかには乗ったことがある方も、いらっしゃることでしょう。 このトライク、語源はトライ[…]
「BMW F900XR」3台を先行導入 BMWは、首都高速道路のバイク隊に向け「F900XR」を納入したことを発表。これは「「BMW F900XR POLICE仕様」をベースとしたものだ。 黄色いバイ[…]
最新の関連記事(ビギナー/初心者)
2024冬・おすすめグリップヒーター×5選【Amazonブラックフライデーセールを狙え!】 エンデュランス:グリップヒーターSP(汎用) エンデュランスの「グリップヒーターSP」は、スイッチ部の材質と[…]
私はホンダPCXでUber Eats配達員をやっています。3000回ぐらい配達してきましたが、いつしか「ピザ屋やハンバーガー屋などのデリバリーいいなぁ」と思うようになっていました。なにせ彼らの相棒は、[…]
一般人でも許される現行犯逮捕とは? 「逮捕」とは、犯罪の容疑がある人の身柄を強制的に拘束する手続きです。 原則として、事前に裁判官の審査を受けて許可を取り、令状の発付を得てからでなければ、たとえ警察で[…]
シリーズ第8回は「8の字走行」。基本操作の総仕上げ! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運転のお手本[…]
「いつかは旧車に乗り、自分専用のカスタムをしたい」と、憧れを抱いている筆者。その夢を叶えるためには、ひとつの大きなハードルがあったりする。そもそも、各部の名称や役割についてよくわかっていないのだ。そこ[…]
人気記事ランキング(全体)
バイクショップとは思えない機器を活用して、手間のかかる下地作りや磨き作業を効率アップ 新車から何十年もの時を経たオリジナルコンディション車と、フルオーバーホール/再塗装/再メッキが施されたレストア車両[…]
スピード感を纏ってクオリティアップ ホイール/エンジンまわり/ステップなどの金属パーツは、パウダーコートや塗装を剥がし徹底的にポリッシュすることで、ノーマルパーツを使いながらも高級感を出した。汎用品で[…]
第1位:X-Fifteen[SHOEI] 2024年10月時点での1位は、SHOEIのスポーツモデル「X-Fifteen」。東雲店ではスポーツモデルが人気とのことで「とにかく一番いいモデルが欲しい」と[…]
モデルチェンジしたKLX230Sに加え、シェルパの名を復活させたブランニューモデルが登場 カワサキは、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やS[…]
復活の軽二輪レトロは足着き性抜群、エンジンは大部分が専用設計だ 現在の国内メーカー軽二輪クラスでは唯一となるネオクラシック/レトロスタイルのモデルが待望の登場を果たした。 カワサキが以前ラインナップし[…]
最新の投稿記事(全体)
110ccベースの4kW制限モデル=新基準原付か 2025年11月の新排出ガス規制導入によって現行モデルの継続生産が困難になり、新たに110~125ccのモデルをベースとした車両に4kW(5.4ps)[…]
トラベル・エンデューロの最高峰に自動クラッチ制御が装備! BMWモトラッドのロングセラーモデルであるGSシリーズ。その最上位モデルにあたるのがGSアドベンチャーだ。初代モデルの登場は’02年のR115[…]
機密事項が満載のレーシングマシンたち バイクムック”RACERS(レーサーズ)”は、「いま振り返る往年のレーシングマシン」がコンセプト。それぞれの時代を彩った、レーシングマシンを取り上げている。 現在[…]
日本でも公開されたNT1100ポリスの北米バージョン! アメリカンホンダは、欧州を中心としたスポーツツーリングマーケットで人気車となっているNT1100を警察仕様として北米初導入することを発表した。 […]
“ヨシムラ”がまだ世間で知られていない1970年代初頭のお話 世界初となる二輪用の集合マフラーが登場したのは、1971年のアメリカAMAオンタリオでのレース。当時のバイク用マフラーは1気筒につき1本出[…]