
「オフロードを制する者は、すべてのバイクを制す」──。そんな言葉が頭をよぎるほど、今回のレッスンは目からウロコの連続でした。ヤングマシンのYouTube企画「今井伸一朗の道場破り」が、今回は大自然に囲まれた素晴らしいロケーションへとやってきました。舞台となったのは、長野県王滝村にあるONTAKE EXPLORER PARK。バイクギアの老舗・クシタニがプロデュースする、標高2000m級の広大なアドベンチャーフィールドです。元全日本ロードレース選手権ライダーの今井伸一朗氏が、ダートを初めて走るビギナーに向けて、バイクを意のままに操るための基礎を習ってきました!
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:石橋 寛 ●外部リンク:クシタニ・エクスプローラーパーク
なぜ「舗装路のベテラン」がダートで転ぶのか?
アドベンチャーバイクのブームもあり、林道やダートに興味を持つライダーは増えています。しかし、「アスファルトの上なら何万キロも走っている」というベテランであっても、オフロードに入った途端、急に身体が強張ってコントロールを失ってしまうケースが少なくありません。今回、レクチャーしてくれた元モトクロスライダーの渡曾修也さんは「路面との対話不足と、姿勢の誤り」にあるとズバリ指摘します。
アスファルトの上では、高いグリップ力に頼った大雑把な操作でもある程度は走れてしまいます。しかし、滑りやすいダートでは、ライダーのわずかな力みや、不適切な荷重がそのままマシンの挙動を乱す原因になります。だからこそ、「初心者こそオフロードでバイクの正しい動かし方を学ぶべき」だと渡曾さん。
なお、エクスプローラーパークにはレンタルバイクはもちろん、ウェアやヘルメットのレンタルまで用意されており、ギアを持ち込まずとも参加できるのは、初心者には嬉しいポイント。今井さんもバイク以外はフルレンタルで参加していました。
老若男女問わず、また初心者から中上級者まで多彩な顔触れが特長。女性インストラクターもいるので、女子がひとりで参加することも多いとか。
基礎のキソ:「ニュートラルな姿勢」を作る
さて、レッスンが始まって渡曾さんがまず時間を割いたのは、意外にも「走ること」ではなく、「跨ること」でした。
オフロードの基本は、マシンの中心に自分がいること。これがニュートラルな姿勢。ステップの土踏まずではなく、母指球のあたりでステップを捉え軽く膝を曲げ、下半身の関節全体を柔らかいクッションにする上半身の力を完全に抜き、ハンドルは「握る」のではなく「添える」だけ。渡曾さんのフォームを見ると、まるで体幹から一本の軸が地面に突き刺さっているかのように安定しています。
この姿勢ができて初めて、バイクがダートに入っても、その挙動を身体全体で吸収・対応できるようになるのです。
朝イチはブリーフィングから始まって、ポジションなどを学びます。この基本が後になってとても有効になるのです。
コースは広大で、初心者むけの緩やかなコースから、頂点を目指すエキスパートコースまでバリエーションも豊富に揃っています。
動画でもご紹介のとおり、バイクやウェア、ヘルメットなどもレンタル可能なので、これから始めてみたい方にも最適です。
動画はコチラ▶【道場破り】元国際A級・今井伸一朗が数十年ぶりのオフロードに挑戦!スキー場跡地の難所に大苦戦!?
スタンディングは「楽に乗るため」の技術
午前中は舗装路面+ちょい砂利路面でポジションやターンを徹底的にレッスン。ひとりひとりに渡曾さんが丁寧なアドバイスをしてくれます。また、アシスタントとして奥様のいずみさんも参加して、女性ライダーにも優しくフォローアップ。これなら、ぼっち参加でも心強いはず。
ところで、レッスンの後半は、いよいよオフロードの代名詞とも言える「スタンディング(立ち乗り)」の練習へと移行します。シートからお尻を浮かすのは、格好をつけるためではありません。ライダー自身の体重を、すべて「ステップ」というバイクのもっとも低い位置に集中させるためです。
これにより、バイクの重心が下がり、路面がどれだけ荒れていても車体がバランスを取りやすくなるのです。この際、腕で身体を支えるのではなく、下半身でピタッと挟み込むのがコツだとか。今井氏のスタンディングフォームは、無駄な力が一切なく、まるで絨毯の上を滑っているかのように滑らかと講評されていました。
渡曾さんのレッスンは段階的で、じつに合理的。奥様のいずみさんのサポートも効果的で、初心者にはぜひおすすめしたいスクールです。
参加費にはランチ代も含まれており、美味しくてボリューム満点なゲレンデ飯が楽しめます。
泥の上で学んだことは、すべてアスファルトに生きる
午後からはオフロードでの実地レッスンが待ち構えています。といっても、厳しい路面ではなく平地のオフロードからなので、午前中のウォーミングアップが効いて誰もが安心して走り出せるはず。ターンやブレーキング、そしてスタンディングでの走行を経験した後は、エクスプローラーパークの名物、頂上の展望台を目指します。
が、この日の空は曇っていて、待望の絶景はおあずけとなってしまいました。ここまでの道のりは厳しい轍があったり、急斜面があったり、初心者にはなかなかの試練かもしれません。実際、今井さんも轍でスタック。渡曾さんのレスキューされる場面もありました。
ともあれ、今回のクシタニ・エクスプローラーパークでのレッスンを通じて、参加したビギナーたちの走りは見違えるほど安定していきました。最初は恐る恐る走っていた砂利道で、最後には全員が笑顔でスタンディングをこなしていたのが印象的です。
オフロードライディングの本質とは、力でマシンをねじ伏せることではありません。バイク本来の動きを邪魔せず、地球の重力と路面のグリップを味方につけること。「バイクがもっと上手くなりたい」と思ったら、一度泥の上に飛び込んでみる。それこそが、ライディング上達のもっとも確実な近道なのかもしれません。
当日の模様。
当日の模様。
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