政治・行政・ビジネス・サブカルチャーの中心地、東京都「千代田区」のバイク駐車事情とは?<前編>

政治・行政・ビジネス・サブカルチャーの中心地、東京都「千代田区」のバイク駐車事情とは?<前編>

首都機能が集まる永田町や霞が関、経済・金融の中心地である大手町や丸の内、サブカルチャーの聖地である秋葉原、これらすべてが東京都「千代田区」に集中している。また同区は都内で最も大学が多いエリアでもあり、お茶の水や神田神保町など昔から学生の多い街として知られている。前編ではそんな千代田区のバイク駐車事情を区担当者に伺った。


●文:田中淳麿

1. “本丸”東京都の中でも最も重要な自治体「千代田区」

皇居は外苑などの緑地を含めると千代田区の約23%に達する。なお千代田区の総面積は11.66㎢で、23区内では19位の面積となる。

東京都はバイク駐車問題の“本丸”なんて言い方をよくされる。「東京都で改善できれば…」「東京都でモデルケースを作れれば…」全国の都市部にも良い影響が及ぶのではないかという期待の表れだ。

中でも首都機能が集中している自治体(地方公共団体)が千代田区だ。

天皇ご一家がお住まいになられている皇居をはじめ、国会議事堂や議員会館が立ち並ぶ永田町、中央省庁が建ち並ぶ霞が関、高層オフィス街の大丸有(大手町・丸の内・有楽町)と東京駅、さらにはアニメやマンガなどサブカルチャーの発信地であり「バイクの日イベント」も開催されている秋葉原。

お茶の水や神田神保町など大学の多さも都内一で学生の街としても機能していることから、まさに日本の縮図と呼ぶに相応しい自治体ということになる。

2. かつてはバイク駐車場が増えなかった千代田区

日比谷公園に造られた巨大な地下空間「日比谷自動車駐車場」(60分100円、24時まで当日1日最大1000円)。35台も駐められるが当時は満車ということも多かった。

個人的な感想で申し訳ないが、実は千代田区のバイク駐車場にはあまり良い思い出がない。「都内オートバイ駐車場MAP」の古いものを見てもらえばわかるが、2006年の改正駐車場法以降、同区内のバイク駐車場はあまり増えることがなかった。

霞が関の合同庁舎に行こうにもバイクで乗り付けることができたのは警察・警視庁だけで、たいていは日比谷公園地下にある日比谷自動車駐車場の一択。満車の場合は丸の内パークインなどに向かうが丸の内周辺も同様であることが多く、結局は新橋駅周辺に駐めてダッシュで向かうということを何度も経験したからだ。

二輪業界の集まりの中でも「千代田区は他に比べてバイク駐車場が少ない」という話をしていたから、そういう印象がまかり通っていたのは確かだろう。

ところがここ数年、日本二普協によるバイク駐車場検索サイト「全国バイク駐車場・駐輪場案内」に限って見ても掲載物件が明らかに増えている(物件の事例は後編で紹介)。

敷地内のデッドスペースを活用した予約制駐車場の台頭ということも大きいが、それだけでもないようだ。その辺のところを千代田区のバイク駐車場担当者に伺った。

3.千代田区のバイク駐車場への取り組みと課題

唯一の区営自動二輪駐車場「神田花岡町自動二輪車駐車場」(30分100円、10台 ※連続48時間(9600円)まで)はJR秋葉原駅・A2出口を出てすぐ右、ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaの真ん前という好立地だ。

●区営の自動二輪駐車場は1か所のみ

千代田区のバイク駐車場への取り組みについて原付・自動二輪を問わず総合的に進めている環境まちづくり総務課に話を伺った。

現在、区営の自動二輪駐車場は秋葉原駅前に位置する「神田花岡町自動二輪車駐車場」のみであり、区としては駐車需要に追い付いていないという認識だ。なお、区としては原付よりも自動二輪のほうが不足していると感じている。

2009年には「千代田区立自動二輪車駐車場条例」が制定され、放置自転車対策とは切り分けて自動二輪のための駐車場を設置する条例が設けられているが、前述の通り区営駐車場は増えていない。

近年の課題としては、自動二輪の路上放置や原付専用駐車場への自動二輪の駐車といったことが認識されている。

●「土地がない」ので駐車場が増やせない

図は「千代田区 道路整備方針 –人々の活力と潤いのある暮らしを支えるために-(概要版)」より引用。北東部の神田地区は道路の占める割合が多い。

区営の自動二輪駐車場が増えない要因としては、千代田区内に新たな駐車場を作る有効な土地がないためであり、これは自転車駐輪場でも同様とされている。

土地がないというのは、千代田区のマップ(上図)を見れば一目瞭然だ。区域の中心にはかつての江戸城の中心部に位置する皇居がある。南部の大手町・丸の内のあたりは関東大震災後の都市計画、戦後の復興計画において火災発生時の延焼防止を目的に広幅員の幹線道路が作られており、北部の神田地区は約3割が道路を占めている。

このように地区によって道路整備環境は大きく異なっている。なお区として不足を感じている地域はお茶の水駅・麴町駅の周辺だ。どちらの町も江戸時代からの歴史を持つ教育・文教エリアとなる。

●区外在住者からの要望が年に数件程度

またバイク利用者・ライダーからの「自動二輪駐車場を増やしてほしい」という声も年に数件程度となっている。実際に声を寄せているのは区外在住者が多いそうで、通勤・通学・買い物といった来訪目的が予測されるだろう。

千代田区に限ったことではないが、自治体担当者に利用者の声が届いていないというのは駐車場の設置増に向けて最も身近で大きな課題だ。

また日本二普協が集めている「バイク駐車場、ここにつくって!」のデータは区担当者には共有されていなかった。

●予約制・月極も含め民間バイク駐車場は増えている

神田駅の近くにオープンしていた平地の四輪用時間貸し駐車場(キャッシュレス専用)の一角に、自動二輪用の月極駐車スペースが運用されていた。1台のみだがこうしたケースが増えていけば地域の駐車環境は改善に向かう。

区の担当者も実感していたが、神田地域をはじめ民間バイク駐車場の設置は進んでいるという。

ここ数年都内のバイク駐車場で最も増えているのは予約制駐車場だ。予約制駐車場の多くは時間貸しで安価に利用できるため、ちょっとした用事でも気兼ねなく使えるのが魅力。

今回神田駅周辺を巡ってみると、オープンしたての大手ブランド四輪駐車場の一角に月極契約のバイク駐車スペースが設置されていた。

敷地内に1~2台程度でもいいのでこうした駐車場が増えていけば、近隣によい影響を及ぼし地域の駐車環境は改善に向かうだろう。

4.今後の取組方針と地域ルールの適用・整備

大名小路(都道402号線)から望む大手町の高層オフィス街。この先に丸の内、有楽町と続くのが大丸有地区で、地域ルールの適用により自動二輪駐車場が整備されている。

2021年に区が策定した「千代田区駐車場計画」では自動二輪の駐車対策についても明記されている。基本方針のひとつである「駐車場供給量の適正化」については以下の2つの施策によって駐車需要に対応する。

①施設立地に伴う自動二輪専用駐車場の整備

不足地域での整備促進のため、附置義務制度や地域ルール(※)の活用等を検討している。

※駐車場整備地区のうち必要な駐車施設附置の確保が図られていると知事が認める地域において、附置駐車施設の位置と規模(台数)等を柔軟に定めることができる制度

②既存駐車場の活用

四輪用の駐車スペースを二輪用に転用する。

①②の取り組みは単独で実施されるものではなく、歩行者・自転車・原付・自動二輪・自動車・バス・鉄道といった他の交通手段の課題改善にも資するように、効率的な連携を図りつつ進められる。

●大丸有地区は「地域ルール」で整備台数増

千代田区主体による「大手町・丸の内・有楽町地区駐車場地域ルール」に基づいた附置義務施策が適用された「丸の内パークイン」自動二輪駐車場。地域ルールにより周辺の施設で入庫後1時間無料など共通の優遇料金(地域貢献施策)が設定されている。

なお①に関する「地域ルール」の適用については、駐車施設や荷捌き場所などを隣接街区も含めて面的かつ柔軟に運用できるのがメリットだ。

実際に大丸有地区の自動二輪駐車場整備に関しては地域ルールの適用要件として審査された。ルールが適用された建物では整備が必須となるため、2007~2022年にかけて整備台数が増加している。

新丸ビルゾーンの地下にある自動二輪駐車場「丸の内パークイン」(最初の1時間無料、以降60分100円、6~24時間まで最大500円、68台)。二輪駐車スペースは場内で複数に別れて設置されている。

5.【私感】様々な形態での駐車スペース増に期待!

区営「神田花岡町自動二輪車駐車場」は秋葉原駅前の区道に面した歩道(JR中央・総武線の高架下)を切り下げる形で造られており、路上駐車場と呼んでよいものだ。

千代田区は地区によって街のつくりが大きく異なっており駐車場を設置するための土地も限られている。しかし今回フィールドワークも並行して行ったところ、このような様々な事例が確認できた。

  • ①歩道を切り下げての区営自動二輪駐車場
  • ②首都高1号上野線高架下の区営自転車等駐車場(原付可)
  • ③JR高架下での自動二輪駐車場
  • ④四輪用駐車場の一角を二輪用に転用
  • ⑤公開空地を含む敷地内デッドスペースの活用
  • ⑥一方通行路でのパーキング・メーター
  • ⑦皇居周辺緑地内の自動二輪駐車場(北の丸第三駐車場)

設置・活用の形態を工夫し、予約制や月極も含めた大小のバイク駐車場が増えていけば、民間駐車事業者の参入もますます見込めるようになるだろう。

ともあれ、まずは千代田区在住または千代田区に来訪するバイク利用者、ライダーが区に要望を届け続けることが重要だ。

またそうした動きを、持続可能なまちづくり計画における駐車場政策の中に組み込んでもらえるよう関係各所が狙いをもって動くことも求められるだろう。

後編では、上記①~⑦に関するバイク駐車場事例について紹介する。

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