バイクに求められる姿が明確に異なっていた2台
8Sの次なる相手はホンダのCB650R。価格は100万1000円〜と8Sに近い設定だが、CBは今どき貴重な並列4気筒を採用! 最高出力も8Sを15㎰も上回る95㎰を発揮する。排気量の違いはあるが、これはいい勝負ができるのではと考えていた。だが蓋を開けてみると、これまた予想外の結果に。結論から言うと、この2台はライダーがバイクに求める姿の違いで嗜好がハッキリ分かれる別存在であった。
その最たるものは、やはりなんといってもエンジンだ。CBのエンジンは直4とは言ってもヒュンヒュンと軽く吹け上がるスーパースポーツ系ではなく、クランクマスの重さを感じさせる往年の大型車に通じるようなテイスト。回転上昇でいえば2気筒なのに8Sの方が断然軽くて早い。どちらがスポーティかと聞かれれば、誰しもが迷わず8Sと答えるだろう。
ライディングポジションや取りまわしでもCBはいかにも”大型車”なテイスト。エンジン横幅が長いぶんどっしり座っている感があり、押し引きの際も重たさを感じさせる。パワー差で峠ではCBが勝てるかと思ったが、そもそも95㎰を出せるのは回し切ったとき。峠の速度域ではそこまで到達しない。結局、コーナーごとに軽々とパワーを引き出せる8SのA・Bモードに立ち向かうのは厳しかった。
車重はたった1kg差しかないのに、この軽さの違いはどこから生まれるんだろう。考えるに、それはやはりエンジンの回りの良さとクランクマスによるジャイロ効果の差に他ならない。それにハンドリング自体も8Sは非常に軽くて攻めやすい。クロスバランサーによってエンジン前後長を短くした8Sは、ライダーを前方に乗せて俊敏さを高めつつ、長めのスイングアームでコントロール性も確保する車体作りをしているな。スポーツ向けとして、従来以上に理にかなっているのだ。
一方、CBは”峠を大型車で楽しむ”雰囲気そのものを大事にしているようで、その重厚感から「マシンを操っている実感」が得やすくなっていた。サスペンションも峠をガンガンに攻めることを推奨してはおらず、ゼブラゾーンでは減速しないとギャップでフロントが乱れてしまう。ある意味、大人なのだ。概してCBはミドルクラスながら、特に昭和時代の大型4気筒に憧れるような人に(高い質感も含めて)その雰囲気を味わわせてくれるキャラクターの持ち主だった。軽さや速さの8Sが好きか、それともバイクには重厚感や征服感を求めるのか。これはもう、ライダー次第だ。
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