GSX-S1000の弟分的なスタイルで登場したGSX-8S。流行りの2気筒ミドル帯、価格的にも主にエントリー層をターゲットにしたマシンなのだろうか?ライバルとなるホンダ&ヤマハのミドルモデルとの比較テストの結果をお送りする。
大柄だけど乗りやすいGSX-8S/コスパの高さで圧倒的なMT-07
それではGSX-8Sとライバルたちとの直接比較だ。最初の相手は2気筒ミドル帯の代表格であるヤマハMT-07。同じカテゴリーに入るのだけど、排気量&パワー的にはGSX-8Sの775cc/80㎰に対して、MTは688cc/73㎰。車重は8Sの202kgに対してMTは184kg。価格は8Sが106万7000円でMTは81万4000円。けっこう大きな開きがある。このあたり、どういう違いがあるか興味津々だ。
まずライディングポジションを比べてみると、MTはエントリー層にも乗りやすいスタンダードかつコンパクトな感じが印象的。足着きに関しても身長172cmの僕だと両足かかとまでベッタリ着いて申し分ない。ところが8Sに跨ると、またもやビックリ。ニーグリップ部のスリムさではなんと8Sの方が細く感じられるのだ。おかげで足着きも優秀。もっとも、ハンドル位置を含め乗車した際の高さ感など、全体的には8Sの方がひと回り大柄なポジション。膝の曲がりもMTは小柄な人でも乗れるようにちょっと強めなのに対し、8Sは緩やか。人によっては長時間乗車だと疲れ方が変わってきそうだ。
取りまわしに関しては約20kg違う車重がいかんともし難かった。ホイールベースもMTは8Sより65mmも短いので、Uターンを含めた小回りのしやすさでは圧倒的にMTの勝ち。ただ、けっして8Sが厳しいわけではない。単体で見るとその軽さ感は優秀なので、街中でもCモードを使えば乗りやすく感じられるはずだ。
エンジン特性の面では、MTは下からドルルルと鼓動感を演出として意識的に感じさせるような味付けが特徴だ。この鼓動感は回転数を上げていっても長く続き、癒されるような楽しさを覚えさせてくれる。パワーカーブもマイルドで、攻撃的な顔は見せないから安心してスロットルを開けていくことができる。このあたりはジャジャ馬だった8SのAモードと決定的にキャラクターが異なる部分で、もし8Sにライディングモードがなければ、実際に購入する段階に至ってどちらを選ぶか迷うことはないと思えた。
しかし、8SにはCモードがある。鼓動感をMTほど強めに感じさせない上、クロスバランサーのおかげである程度回せば、シュッと静かになってスムーズさが際立ってくるエンジン。乗りやすさでもMTと甲乙つけ難い。景色を楽しみながら、のんびり走ることもできる。これはきっと迷ってしまう。
どちらも峠で楽しめる! が、価格差分の「違い」はアリ
峠でもMTとは十分以上に「ライバル」だった。絶対的なスポーツ性能については、もう圧倒的にA・Bモードがある8Sの勝ち。MTも単体としては、しなやかな足まわりやフレームそしてエンジン特性で、鼓動感とともに峠で気持ちよくスポーツを感じることができる。が、そこに「速さ」を求めだしたら8Sには勝てない。それは排気量や馬力差によるものではなく、想定している速度レンジが8SのA・Bモードとは決定的に違っているからだ。MTはライディングモードに加えてトラコンも持っておらず、その限界が如実に現れてしまう。
ただMTは、ピュアな走りが味わえるとも言える。「このあたりが限界かな」とバイクと対話しながら操る喜びがあり、ビギナーが走りを学ぶのにもうってつけだ。なお8SはCモードだとMTと似たような乗りやすさ。エントリー層でも気軽に峠を楽しむこともできるのだから、ヤマハに限らず他の2気筒ミドル勢にとっても大きな脅威と言わざるを得ない。速さが光っても8Sのサス設定は硬くはなく、Cモードでもしなやかに動きながらギャップ吸収性も抜群。乗り心地の上でも、「ひとつ上」を感じさせる。
ライディングポジションのコンパクトさや扱いやすさが際立つエンジン特性、小回りの効き具合などトータル的に見ると、よりエントリー層に近いのはMTの方だと言えるだろう。
しかし、エントリー向けとして見た場合の8Sもなかなか。それにもうひとつ忘れちゃならないのが8Sには双方向クイックシフターも標準で付いている。スーパースポーツほどカチャッカチャッと小気味よく作動するタイプではないが、幅広い速度で作動し、色んな場面で活躍してくれそうだ。
価格面としては、8SとMTでは約25万円の差。8Sが備える数々の機能からして値段相応の価値はあるけれど、MTのコスパの高さにも唸らざるを得ない。
走行モードによる出力特性の違い【スムーズなGSX-8Sと鼓動感のMT-07】
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(GSX-8S)
新色マットグレー登場、ブラックは色味変更と青ホイールに換装 スズキは、2023年に発売された新型スポーツネイキッドモデル「GSX-8S」の2024年モデルを2月22日に発売する。主な変更点はカラーリン[…]
EICMAでハーフとフルのどちらが登場するかは不明だが、ならば両方作ってしまえ…というわけで編集部では予想CGを製作。スズキは欧州で「GSX-F」という商標を登録しており、それをヒントにハーフカウルの[…]
動画はコチラ→スズキの超新星! GSX-8SはライバルMT-07とはぜんぜん違った!? 試乗インプレッション[…]
完全無料・営業電話ナシ・実車査定ナシって本当?! たとえば今あるバイクを売って、乗り換えを検討しているとしよう。 次のバイクを購入するお店で下取りに出すのが最も手っ取り早い。しかしそこは「1円でも高く[…]
フランコ・ウンチーニとケビン・シュワンツの500ccマシンが並ぶ! スズキイタリアは、トリノで行われたオートルックウィーク2023にてGSX-8S、スイフトスポーツハイブリッド、DF200AP(船外機[…]
最新の関連記事(試乗インプレッション/テスト)
こんにちは、マットです!! 今回はアメリカ最古のモーターサイクルメーカーで有名なインディアンモーターサイクルのクルーザーモデルである新型スポーツチーフに試乗してきました!! 排気量1890cc!!ど迫[…]
トルクが凄ぇ! でも意外なほど普通に走る 2294ccの直列3気筒エンジンを搭載した初代ロケットIII(現在はロケット3)を初めて目の前にしたとき、こんな大きなバイクをまともに走らせられるんだろうかと[…]
レンタルしてみた『乗ってみたかったバイク』の感想は? それぞれが自分で選んだバイクをレンタルして臨んだ4人のマスツーリング。ツーリング自体も大成功でしたが、今回借りたのは「それぞれが乗ってみたかったバ[…]
並列2気筒のハーレーが登場した意味とは? 普通二輪免許で乗れるハーレーとして昨年末に登場し、話題となったX350。現代ではわりと珍しい360度クランクの並列2気筒エンジンを搭載し、往年のフラットトラッ[…]
クラシック350よりもモーターサイクルらしい醍醐味がある! JAIA(日本自動車輸入組合)による試乗会が4月上旬に開催された。いわば外国車イッキ乗りのようなイベントで、プレス向けに年1回行われている。[…]
人気記事ランキング(全体)
どうもアイキョウです。ワークマンにはさまざまなレインウェアがあります。 雨の日でも通勤でバイクに乗るならワークマンのバイカーズという製品がオススメです。ワークマンレインウェアの中では高額な5800円な[…]
330円の万能ソケット買ったので試してみたい いつ頃からだろうか?100円ショップが100円だけではなくなってしまったのは。工具のコーナーも例外ではなく、100円、200円、500円、ものによっては1[…]
――はじめに、津久井高校の県内の位置付けや特色を教えてください。 熊坂:県立高校に移管される前も含めると、明治35年に始まった学校なので120年を超える歴史があります。全日制と夜間定時制の2課程ありま[…]
※2024年3月にWEBヤングマシンで大きな反響を呼んだ記事をあらためて紹介します。こちらは第3位の記事です(初公開日:2024年3月11日)。 バイクはオービスに引っかかることはない!? ウワサの真[…]
リスクの高いスポーツは社会に受け入れられない……? 3月末、日本にいた僕は東京モーターサイクルショー(TMS)にお邪魔しました。会場を回りながら肌で感じたのは、「レース、やばいぞ……」ということでした[…]
最新の投稿記事(全体)
①バットサイクル【映画「バットマン」劇中車(1966年)】 バットマンシリーズ初の長編映画として1966年に公開された“バットマン”に登場。バットモービルのバイク版として今ではおなじみの存在だが、初登[…]
こんにちは、マットです!! 今回はアメリカ最古のモーターサイクルメーカーで有名なインディアンモーターサイクルのクルーザーモデルである新型スポーツチーフに試乗してきました!! 排気量1890cc!!ど迫[…]
トルクが凄ぇ! でも意外なほど普通に走る 2294ccの直列3気筒エンジンを搭載した初代ロケットIII(現在はロケット3)を初めて目の前にしたとき、こんな大きなバイクをまともに走らせられるんだろうかと[…]
精度向上と新たなシール開発で、今なお進化を続けるチェーン技術 芸術家であり科学者でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチが15世紀に考案し、19世紀に現在とほぼ同様の形態で実用化されたローラーチェーンは、バ[…]
車体や外装だけでなく…メーターまでワンオフだ!! カワサキ・ニンジャZX-10Rエンジンをオリジナルのアルミフレームに搭載した“最強”のカタナ。兵庫県でECUチューニングなどを手掛ける10ファクトリー[…]