
2022年11月26日にはヤングマシン松田編集長が記事を執筆しているように、長年にわたって維持され、親しまれてきた「原付一種は50cc以下」という枠組みが見直されるかもしれません。高速道路料金とともにライダーの関心事となっている「原付」問題を取材しました。
●文:Nom(埜邑博道)
保有台数500万台のユーザーが今もいる!
4月4日に投稿した「令和5年度の課題①高速道路料金」に続く課題②としてお届けするのは、「原付」問題です。
手軽な乗り物として1980年代には年間200万台に迫る販売台数を誇った原付一種(=原動機付自転車、以下原付)ですが、高校生への3ナイ運動や、ヘルメットの着用義務、2段階右折、30㎞/hの最高速度規制などによりその存在意義が年々低下してしまい、2021年は約13万台と年間販売台数は約6分の1にまで減少しています。
また、原付の50㏄以下という排気量カテゴリーは現在では日本だけのガラパゴス的な存在となっていて(海外はご存じのように125㏄クラスが主流です)、国内4メーカーもラインナップを絞らざるを得ない状況になっています。
とはいえ、通学や通勤の手軽な足としての需要はまだまだあって、特に公共交通機関が未整備な地方では原付がなければ日常生活が円滑に行えないところも少なくありません。また、年間販売台数が13万台レベルに減少しているとはいえ、まだまだ13万台の需要があり、原付の平均価格を25万円とすると年間325億円の大きなマーケットが存在していて、多くのバイクショップにとっても重要な商材となっています。
さらに、保有台数は500万台近いといいますから、現状でも相当数のユーザーが原付を使用しているのです。
原付一種の販売台数の推移を示すグラフ。1980年には200万台近い台数を販売していたが、ここ2年は13万台レベルにまで激減。しかし今でも年間10万台以上の需要がある…とも言えるのだ。
まさに絶滅の危機を迎えている原付を救う手段は?
その原付がいま、絶滅の危機を迎えています。
年々厳しくなる排ガス規制は、当然、原付も規制対象となっていて、2025年10月に新規制が適用されることになっていますが、現在の原付各車がこの規制をクリアするには莫大な費用がかかり、それが販売価格にも反映されて非常に高額なものにならざるを得ないことなどから、メーカーも事実上、現在の50㏄以下という原付の存続を断念せざるを得ない状況になっているのです。
そんな状況を受けて、全国約1600社のバイクショップが加盟する全国オートバイ協同組合連合会(以下AJ)など業界各方面から、原付免許あるいは普通自動車免許で運転できて、価格も手ごろで税金も安い原付を何とか存続させてほしいという声が上がり、約3年後に迫った新規制適用を前に、昨年11月に原付を存続するための具体的な動きが始まりました。
この動きを報じた記事を、昨年11月末に編集長の松田が投稿したところ、思いがけないほどの反響があり、原付がどうなってしまうのかは非常に多くの人の関心事だということが分かりました。
そこで、この課題②では、国内4メーカーが所属する日本自動車工業会(以下 自工会)の関係者にヒアリングした、原付をめぐる現状を整理することにしました。
排気量区分から最高出力区分への変更で新・原付を新設する
まず大前提は、現在の50㏄以下という排気量枠内では、来るべき新規制に対応するのは事実上不可能、つまり現状の原付は存続できないということです。
そこで現在、代替案として浮上しているのが、新たな原付(以下、新・原付)は50㏄以下という排気量区分ではなく、4kw(5.4馬力)以下という最高出力区分とすることで、現在世界のスタンダードである125㏄車をベースに最高出力を4kw以下にした新・原付に移行するという案です。
この案は、昨年11月9日に開催された自民党オートバイ議連の「二輪車車両区分に関する勉強会」で自工会二輪車委員会とAJから提出された要望がベースとなっていて、現在、その方向で自工会技術部会と関係省庁の間でさまざまな検討が重ねられているといいます。
ワールドワイドで販売されているため車種が豊富な125㏄車をベースとして、排気量は変えずに最高出力だけ4kw以下に抑制する案は、年間13万台レベルの原付を規制対応させるよりもコスト的にはるかにリーズナブルで(現行の125㏄車は新排ガス規制に対応済みでもあります)、技術的にもそれほど難しいとは思えませんから、車両に関しての新・原付に移行するのはさほどハードルが高いとは思えません。
ただ、立ちはだかっているのが道路交通法と道路運送車両法という2つの法律です。
大きな問題は道交法と道路運送車両法の改正が必要なこと
この2つ法律で、原付は排気量50㏄以下という区分となっているため、もし125㏄車をベースにした場合は原付=50㏄以下というこの法律の定義を改正する必要が生じるのです。
道路交通法では、原付免許または普通自動車免許で運転可能なのは50㏄以下ですから、まずこれを排気量ではなく最高出力で区切って、〇馬力(案では4kw)以下は原付免許または普通自動車免許で運転可能にしなければいけません。
また、道路運送車両法では「排気量125㏄以下を原付 このうち排気量50㏄以下を『第一種原動機付自転車』とする」と定められているので、これも第一種原動機付自転車を排気量50㏄以下ではなく〇馬力以下へ変更する必要があります。
また、税金(軽自動車税)も現行の原付は2000円/年ですが、125㏄までは2400円/年となっているので、125㏄の新・原付にどちらの税額を適用するかも問題になってくるでしょう。
上記のようにさまざまな変更が必要で、さらに道路交通法は警察庁、道路運送車両法は国土交通省、税金は総務省とそれぞれ管轄省庁が異なるため、現在、自工会技術部会と各省庁の取りまとめ役となっている経済産業省(新・原付への移行に関して直接の法規制にはかかわらないが、製造産業局自動車課が産業としての二輪車を管轄しているため)の間で排気量から最高出力への新たな区分分けについて検討を重ねていると言います。
例えばいま街を走っている原付二種のバイクが、最高出力を制限することで白ナンバーになる、なんて未来も? 仮にモンキー125が〇馬力で原付一種になった場合で言えば、かつてのモンキー(50cc)以来の白ナンバー・モンキーになることに。
そしてもうひとつ、最高出力の測定方法が明確に定められていないという問題も浮上しているそうです。
現在、バイクの型式認定出力(最高出力)はクランク軸出力となっていて、エンジン単体を計測機(一般的にエンジンダイナモと呼ばれています)上で測定し、そこで計測されたカウンター軸出力値をクランク軸出力値に換算して型式認定値を出しているとのこと。
その方式を明確な測定方法とすればいいじゃないかと思うのですが、ここで出てくるのが国際基準との調和という問題で、日本だけ独自の計測方法を定めてしまうとまたまたガラパゴス問題が発生してしまいかねないということのようです。
そのため、国際連合→欧州委員会の傘下にある「自動車基準世界フォーラム」(W29)の下部組織に当たるEPPRで最高出力の測定基準を検討して、その決定した基準・測定方法を日本に導入するべきということも議論されているそうなのです。
原付の滅亡を防ぐ起死回生の策と思える新・原付区分の新設ですが、排気量から最高出力に区分分けを変更するにあたり、解決しなければいけないさまざま難題が待ち受けているというのが現状。
とはいえ、新排ガス規制が施行されるまであと2年半しかありません。最高出力4kwという新・原付モデルの開発→型式認定、道交法と道路運送車両法、税区分の改正、そして世界基準の最高出力測定方法の確立という課題を、並行して進めなければいけません。
時間的にはもう待ったなしの状況で、今年の夏には明確な方向性を打ち出す必要があると言われています。
新・原付問題がどのような動きをみせるのか、WEBヤングマシンでも注視していきたいと思います。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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