“4ストロークこそ上級”。そんな時代にRZが待ったをかけた。軽量な車体にピーキーな2ストロークユニットを抱き、大排気量車を追い回す快感。’80年代はレーサーレプリカ熱が沸騰した時代だ。本記事では、市販レーサーTZ250の公道仕様ともいうべき存在であり、RZの後継として登場したTZR250を紹介する。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
さらに円熟する2スト〈ヤマハ TZR250〉
スズキのガンマ/ホンダのNSと、高性能レプリカが矢継ぎ早に出揃い、大ヒットを記録していた。この潮流をみたヤマハはRZ250Rにカウルを装着して対抗するも、鉄フレームに前後18インチという装備はもはや古めかしく、人気、実力とも水を開けられていた。
’85年11月、ついにヤマハは起死回生のTZR250を世に送り出す。市販レーサー直系の水冷並列2気筒は、吸入方式をピストンリードからYZR500と同じクランクケースリードに変更。ボア×ストロークも54×54mmから56.4×50mmに改めた。
フレームは、ステアリングヘッドとスイングアームピボットを直線的に結んだアルミ製デルタボックスで、形状はレーサーTZと全く同一。乾燥重量はわずか126kgに過ぎず、前後17インチの車体もコンパクトだった。外観上では、TZと瓜二つのフルカウルと赤ホイールも大きなアピールポイントとなった。
発売後、TZRは一大センセーションを巻き起こす。市販車で参加できる改造範囲の狭いSPレースでも戦闘力は高く、瞬く間にTZRが席巻。その一方で初心者や女性にも人気があった。
理由は扱いやすさにある。エンジン特性はシャープに力強く吹け上がりつつパワーバンドも広い。倒し込みは軽快で、自在にラインが描ける。この頃から確立してきた「ハンドリングのヤマハ」のイメージを初代TZRが決定づけた。
かつて2ストはピーキーで扱いにくい特性だったが、TZRで転換期を迎え、新しい時代へ進んだと言えるだろう。
ヤマハ TZR250Rの系譜
’85~’88 ヤマハ TZR250:ハンドリングはシリーズベストか
’89~’90 ヤマハ TZR250:失敗に終わった後方排気
’91~’99 ヤマハ TZR250R:並列からV型へ
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