
吸収合併したメグロの500ccバーチカルツインを海外向けスポーツの650へ!
ダブワンの愛称でいまも濃いファンに愛用されているカワサキのW1。
このWシリーズをリリースする前、カワサキは2スト小排気量バイクのメーカーで、マッハIIIやZ1にはじまるビッグバイク専業のように思われがちだが、実はWシリーズでその足がかりを掴んだのだ。
カワサキは1924年創業のメグロ(目黒製作所)を1964年に吸収合併、その後メグロから引き継いだ500ccOHV2気筒のK1をK2へ改良、これをベースに1966年の624ccとなったW1やW1SにW1SAと、海外向けにバーチカルツインをアピールしていた。
この前身となったカワサキ・メグロK2やW1の特徴は、英国のトライアンフやBSAにノートンといったバーチカル(直立)ツインに倣った構成で、エンジンはOHVの2気筒。
OHVというエンジン形式は、いま主流のOHCが誕生するよりもっと前に、燃焼室へ吸気と排気のバルブが顔を出した最初の世代につけられた呼び名。それ以前はバルブが燃焼室から離れた箇所にあったからだ。
このOHVはクランクシャフトから駆動されるカムの動きを、プッシュロッドといって火箸のような細い金属棒で燃焼室の上にあるバルブを開け閉めするロッカーに伝える構造。
この英国流儀のトラディショナルなエンジン形式には、さらに大きな特徴があった。
それはチェンジレバーが右側にあったこと。リヤブレーキは当然ながら左になる。
1960年代まで、英国とアメリカのバイクはエンジンとミッション(変速機)が別体で、ミッションの位置からチェンジレバーは右にあるのが標準だった。
因みに1960年代以降の日本メーカーは、ドイツ車をお手本にスタートした関係でチェンジは左側で推移、W1がリリースされた当時、国内ではこの外車と同じ右チェンジに乗れるかという壁が立ちはだかっていたのだ。
1966年にリリースされた初代W1は、74mm×72.6mmの624cc。
輸出向けは50HP/6,500rpmで最高速度は185km/h、国内向けは表記が45HPに抑えられていた。
何といっても大型バイクは真っ黒が相場だったのが、メッキに赤ペイントと考えられないほど派手な仕様となったのに、日本のバイクファンは驚くばかりだった。
その後ツインキャブとなったW1SSで出力も53HP/7,000rpmへパワーアップ。
また当時アメリカの流行りだったセンターアップマフラーにして、フロントタイヤにもブロックパターンを履く、ストリートスクランブラーのW2TTもバリエーションで加わり人気も定着してきたが、そこへCB750FOUR、続いてマッハIIIと新進気鋭の登場で、W1系は海外でのマーケットを失いつつあった。
そこで国内向けユーザーに、チェンジペダルを通常の左側として、リヤブレーキを右に配置したW1SAが1971年からリリース、左右を貫通シャフトでリンクを介して操作を入れ替えていた。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
ジェネシス末弟の新世代を狙う2モデルに鋏まれた濃淡2パターンのレプリカ! 1985年4月、ヤマハは宿敵ホンダが1982年に放ったVT250Fの人気に待ったをかけるべく、4気筒のFZ250 PHAZER[…]
後方排気はYZR500の後ろバンク、ただ一般公道で前方吸気は容易くなかった! ヤマハは1980年、レーサーレプリカ時代の幕開けRZ250をリリース。排気ガス規制で2ストロークは終焉を迎える寸前だったの[…]
ホンダのスポーツバイク原点、CB72とマン島T.T.イメージを詰め込んだクラブマンだった! ご存じGB250クラブマンは1983年の12月にリリース。同じ年の4月にデビューしたベースモデルのCBX25[…]
2ストローク3気筒サウンドと他にない個性で1982年まで販売! 1969年にカワサキは世界進出への先駆けとして、250ccのA1や350ccのA7を発展させた2ストロークで、何と3気筒の500ccマシ[…]
250ccを思わせる車格と水冷2スト最強パワーに前後18インチの本モノ感! 1979年、ホンダはライバルの2ストメーカーに奇襲ともいえる2スト50ccの、まだレプリカとは言われてなかったもののレーシー[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI] | 名車/旧車/絶版車)
常識を塗り替えた最強の空冷Z いまやレーサーやスーパースポーツ車はもちろん、スポーツネイキッドでもメジャーなアルミフレーム。しかしその源流は、いちコンストラクターが作ったマシンにあった…。 モリワキエ[…]
2023年モデル概要:ホワイトからシルバーへ変化 「エキサイティング&イージー」をコンセプトに掲げるZ900は、カワサキのフィロソフィーを体現したかのような、先鋭的な「Sugomi」デザインが特徴。エ[…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
2022年モデル概要:赤フレームに白ボディが新鮮! 並列4気筒エンジンを搭載し、アグレッシブな「Sugomi」デザインと「エキサイティング&イージー」な走りがウリのZ900。KTRC(カワサキトラクシ[…]
当時を思わせながらも高次元のチューニング ◆TESTER/丸山 浩:ご存知ヤングマシンのメインテスター。ヨシムラの技術力がフルに注がれた空冷4発の完成度にホレボレ。「この味、若い子にも経験してほしい![…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
常識を塗り替えた最強の空冷Z いまやレーサーやスーパースポーツ車はもちろん、スポーツネイキッドでもメジャーなアルミフレーム。しかしその源流は、いちコンストラクターが作ったマシンにあった…。 モリワキエ[…]
あの頃の中型 青春名車録「2ストの台頭」(昭和55年) 1970年代(昭和45年~)、国内における250ccクラスの人気は低迷していた。車検がないためコスト的に有利だが、当時は車体設計が400ccと共[…]
2023年モデル概要:ホワイトからシルバーへ変化 「エキサイティング&イージー」をコンセプトに掲げるZ900は、カワサキのフィロソフィーを体現したかのような、先鋭的な「Sugomi」デザインが特徴。エ[…]
HAYABUSA X-1[2000]:世界最速マシンをレーサーレプリカ化 全日本ロードレース選手権で1999年に設立されたS-NK(Xフォーミュラ)に、ヨシムラは発売されたばかりのスズキGSX1300[…]
ジェネシス末弟の新世代を狙う2モデルに鋏まれた濃淡2パターンのレプリカ! 1985年4月、ヤマハは宿敵ホンダが1982年に放ったVT250Fの人気に待ったをかけるべく、4気筒のFZ250 PHAZER[…]
人気記事ランキング(全体)
“次”が存在するのは確実! それが何かが問題だ 2018年に発売されたモンキー125以来、スーパーカブC125、CT125ハンターカブ、そしてダックス125と、立て続けにスマッシュヒットを飛ばしている[…]
特別な店舗のオープンに向けた特別な1台 関西/中部エリアで6店舗を運営するモトラッドミツオカグループ。新装オープンした堺店は、国内のBMW Motorradの正規ディーラーの中でも最新の内装と設備が自[…]
脇を冷やすことで全身を効率的にクールダウン 夏場にリュックを背負ってバイクで走っていると、背中や脇の蒸れが不快なものだ。そんな悩みを抱えるライダーにこそ、「ワキひえ~る」は、目立たず、効率的に全身をク[…]
欧州ヤマハとUSヤマハの連携で生まれたカスタムビルドのXSR900 GP ウェイン・レイニーがバイクでサーキットを走った! 往年のレースファンなら、それがどれほど特別なことか理解できるだろう。 199[…]
HAYABUSA X-1[2000]:世界最速マシンをレーサーレプリカ化 全日本ロードレース選手権で1999年に設立されたS-NK(Xフォーミュラ)に、ヨシムラは発売されたばかりのスズキGSX1300[…]
最新の投稿記事(全体)
白バイ警察官になるためのファーストステップ、必要なのは執拗なアピールや根回し!? 警察官になっても、すぐに白バイ警察官になれる訳ではありません。白バイ警察官になるには、まず「白バイ隊員になりたい」と希[…]
常識を塗り替えた最強の空冷Z いまやレーサーやスーパースポーツ車はもちろん、スポーツネイキッドでもメジャーなアルミフレーム。しかしその源流は、いちコンストラクターが作ったマシンにあった…。 モリワキエ[…]
40年の歴史を誇るナナハン・スーパースポーツと、兄弟車のR600 1985年当時、ナナハンと呼ばれていた750ccクラスに油冷エンジン搭載のGSX-R750でレーサーレプリカの概念を持ち込んだのがスズ[…]
ニーズに応じて使いやすい4種のUSB電源 もはやスマホやナビ、ドラレコなど、電子機器が手放せない時代。バイクに乗る上で電源の確保は、ツーリングの快適性を大きく左右する要素となっている。2020年代の新[…]
Screenshot 応募は”無料”なので、応募しないともったいないぞ! 現在、発刊中の『ヤングマシン電子版8月号』では、読者プレゼント(P68)を実施中! そのプレゼント品だが、コールマンのウェスト[…]
- 1
- 2