2ストローク車が絶滅し、キャブレター車が滅亡し、ついには50ccクラス自体が消滅するという…。なんとも寂しい限りだが、バイクいじりが大好きなサンメカにとって狙い目なのが、20世紀のスクーター。純正部品の供給がなくなったパーツが多い車両でも、規格部品でお馴染みのNTBパーツを活用すれば、くたびれた原付も息を吹き返す!!
●文/写真:栗田晃(モトメカニック編集部)●外部リンク:丸中洋行
50ccスクーターでバイクいじりを楽しむ
女性向けやビジネス向け、スポーツモデルからハイグレードタイプまで、かつては原付免許を取得したライダーが一度は所有したことがあったのが50ccスクーターだった。
ところが世界のバイク市場を見渡してみると、折り畳み携帯と同様のガラパゴス製品だった50ccクラスは規模が縮小し、ついには消滅するという。
だが50ccスクーターは、バイクいじりのネタとしてまだまだ楽しめる。とくに空冷+キャブレター時代の2ストロークスクーターは、現代の水冷+FI車より構造が単純で、メンテナンスも修理も気軽にできる。
さらに、メンテナンスや整備のカギを握る交換部品に関しても、出所が分からないノーブランド品ではなく、NTBの規格部品を活用することで、メーカー純正部品と同等の安全性と品質が容易に手に入る。
今が底値の2ストスクーターの中から選んだのは、丸みを帯びたスクエアフォルムが特徴的なレトロ調スクーター・ホンダ ジュリオ。1998年に発売されたジュリオは、ディオやジョルノほどメジャーではなく、生産期間も短かったものの、飽きの来ない落ち着いたデザインは現在でも通用する。
NTBオートパーツサーチで検索してみると、走行性能に関わる駆動系やブレーキまわりのパーツはもちろん、見た目を左右するシートカバーもある。
現行のスクーターはアジア圏を中心に125〜150ccクラスが主流だが、日本では駅やスーパーの駐輪場など50ccのサイズ感が良い場合も多い。ちょっとそこまでの足として原付スクーターを手にれたら、NTBの規格部品で好調さを取り戻そう。
◆懐かしの2スト50ccスクーター!! 経年劣化でナチュラルなマット調に熟成されているが、純正のツートーンカラーや各部に配されたメッキパーツがオシャレなジュリオ。20世紀のスクーターらしく、ステップボードがフラット。
レンズ類も規格部品で交換できる
ウインカーは転倒などで破損していることも多いが、NTBの規格部品として購入できる。純正部品と同様に装着できるのはもちろん、レンズカットも忠実に再現している。
サビだらけのミラーじゃ恥ずかしい
ハウジングやステーが錆びたミラーは問答無用で交換したい。二次カットによって歪みが少ないのがNTBミラーの特長で、機種専用品/汎用タイプが数多く揃っている。
バッテリーは信頼のBSブランド
ブランド品か否かで性能や品質の差が著しいバッテリー。NTBはフランスのBSバッテリーの日本正規代理店で、密閉式液入り充電済みのSLAタイプのBTR4A-5が適合する。
キャブレターの洗浄とプラグ交換はマスト
よほどのメンテ好きでない限り、スクーターのカバー内側まで手入れすることはない。このジュリオもキャブレターはオイルとホコリでコテコテに汚れていたので、分解清掃する前に、まずは外側から泡タイプのキャブレタークリーナーで洗浄する。始動性や加速に直結するスパークプラグも当然交換。NGKプラグではBR6HSAが純正指定。
ビリビリに破れる前に純正形状のエアフィルターを装着
スポンジ仕様のエアフィルターが劣化すると、カステラのようにボロボロに崩れてエンジンに吸い込まれてしまう。NTBには純正と同型状の製品が多数あり、ジュリオ用もエアクリーナーボックスにジャストフィット。
見た目は大丈夫でも、いつから付いていたか分からないフィルターは新品に交換しておこう。原付用はスポンジタイプが主流だが、中〜大型車用のカートリッジタイプも多い。
加速が鈍い、ムラがある。そんな時は駆動系を一新
プーリー/ウエイトローラー/Vベルトは、スクーターの駆動系の生命線。ネットなどで販売されている社外品は玉石混交なので、慎重に選ばなくてはならない。NTBの規格部品はISO認証取得工場で製造されており、品質の高さに定評がある。
◆前後プーリーの間に見えるVベルトは純正部品で、ベルトケース内のダストもさほど目立たない。とはいえ、中古で購入して気持ちよく乗りたいなら交換は必須。
◆プーリー表面のベルトの擦れ痕を見れば、最高速まで変速していたか否かが分かる。ベルトが摩耗すると外周まで移動できず最高速が低下する。この点は大丈夫そうだ。
◆ウェイトローラーが落ちないように裏側のランププレートを押さえながら、プーリーを取り外す。ローラー外周の段付き摩耗は変速ムラや最高速低下の原因となる。
◆純正と同じ9.0gのウエイトローラーとプーリーをNTB部品に交換して、同じくNTBスライドピースを装着したランププレート(純正部品を再使用)を組み付ける。
◆Vベルトを装着する際は、ドリブンプーリーを縮めて溝を開いてベルトを落とし込み、ドライブプーリー側に余裕を持たせて中央あたりを結束バンドで締めておく。
◆Vベルトがドライブプーリーフェースとプーリーに挟まった状態でナットを締めないよう注意する。ベルトの回転方向は、NTBのロゴが正方向で読めるのが正解。
ブレーキシューはもちろんケーブル交換が有効
ライニングの摩耗を示すインジケーターが正常でも、ブレーキは経年劣化で利きが悪くなることもある。スクーターのリヤブレーキは、ギヤボックスのオイル漏れで制動不良を引き起こすこともある。
◆何年モノか分からない純正(手前)に代えて、NTBのブレーキシューを装着する。制動力を維持しながらダストの発生を抑えた材質を使用しているのが特長だ。
◆潤滑不良や折れグセのついたブレーキケーブルはフリクションロスが大きく、制動力低下の原因になる。NTBのケーブルはエンド金具も純正と同形状なので安心。
◆リヤブレーキ用ケーブルは長く、新品部品に交換するだけで操作性と制動力が明らかに向上する。50ccスクーターであっても止まる性能は重要だ。
◆途中で曲がったりピボット部分の摩耗でガタガタになることが多いブレーキレバーも、NTBの規格部品で交換できる。作動不良になりがちなブレーキスイッチもある。
張りやすさ抜群のNTBシートカバーでボロさが際立つ破れシートを一新!!
側面が大きく破れてスポンジが丸見えだったシートは、NTBシートカバーでリフレッシュした。NTBには、スクーターから大型車まで150種類以上の機種専用カバーのラインナップがあり、質の高い補修が可能。
驚きなのがリーズナブルな価格で、ツートーン仕様のジュリオ用でも参考価格はなんと3000円だ!!
◆規則正しく並んだステープル(固定金具)を見ると、過去に張り替えたことのない純正カバーのようだ。大きく破れている側面の他、座面もパリパリに硬化している。
◆錆びたステープルは折れやすく、シートベースに芯が残ったままだと新たに装着するカバーに引っかかって破れることがある。そのため必ず芯まで引き抜いておく。
◆一般的に屋外で雨ざらしで放置していたシートスポンジは、水分が浸み込みグズグズになるものだが、破れた側面以外は比較的良好なコンディションを保っていた。
◆座面を押しても水分は出ないが、風通しの良い日陰でさらに乾燥させると良い。破損が著しい場合は、中古スポンジで張り替えた方がきれいに仕上がることもある。
◆ナイフで削り落としたかのようにも見えるスポンジ側面の欠損部分は、NTBのシート補修用スポンジでリペアすることに。まずは大まかなカットラインを決める。
◆側面はスポンジが薄いため、シートベースが露出するまで切断し、ブロック状にカットしたNTBスポンジを貼りつけて補修することにした。
◆座面の補修にはちょうど良いが、側面に貼るには厚すぎるスポンジを半分の厚さにカットする。あくまでアンコなので、見栄えが良くなくても気にする必要はない。
◆貼り合わせる両面にシートスポンジグルーをたっぷり塗布して、乾燥し始めた状態で補修用スポンジを強く押しつける。キャップにハケが付いているので使いやすい。
◆凹凸を目立たせたくない側面は一枚もののスポンジを貼り、座面と側面の角部分は小さめのスポンジを押し込むように貼った上で、硬化後にカッターナイフで成形した。
◆NTBのカバーは純正スポンジで型取りしており、フィット感は抜群。装着するスポンジのヘタリが大きい時は、前後左右の張り具合で帳尻を合わせることも重要だ。
◆最初に前端と後端の中央を決めてから、左右を均等に固定していく。表皮を強く引きすぎるとステープルを打った部分から裂けることもあるので、力加減に注意しよう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
ラチェットハンドル:1/4ビットとソケットの二刀流で狭い場所でも扱いやすいラチェット工具 最初に紹介するのは、9段階のフレックヘッドの一方を差込角1/4インチのラチェットハンドルで、もう一方を1/4イ[…]
結晶塗装の仕上げ乾燥インフラに注目 古くは「ちぢみ塗装」、海外では「リンクルペイント」と呼ばれている特殊ペイント。カーベック(愛知県)では、そんな「結晶塗料」を缶スプレーで販売している。 本記事では黒[…]
品質にこだわればMADE IN JAPAN一択。技術の裏付けがあるから信頼されるアドバンテージ 「エンジンの腰上を開けたらピストンリングを交換するのと同様に、フルオーバーホールする機会があれば、カムチ[…]
絶対的なエンジンコンディションを左右。キャブレター完全分解&オーバーホール実践 新車当時のタイヤを装着したまま、走行2600kmでオークションに出品されていたXT250。1981モデルのノンレストア車[…]
旧車部品再生だけでなく“イオンプレーティング処理”にも注力 機械部品の再生業務を手がける東洋硬化(福岡県)は、旧車部品の再生ばかりではなく、ワークスマシンにも施されているような「イオンプレーティング処[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
ラチェットハンドル:1/4ビットとソケットの二刀流で狭い場所でも扱いやすいラチェット工具 最初に紹介するのは、9段階のフレックヘッドの一方を差込角1/4インチのラチェットハンドルで、もう一方を1/4イ[…]
バイクに常備しておきたい最低限の車載工具とは? バイクは振動によってボルトが緩みやすく、ボルトが1本外れただけでも部品が保持できず、安全な走行が困難になります。 加えて、ミラーのネジが緩んだだけでも安[…]
絶対的なエンジンコンディションを左右。キャブレター完全分解&オーバーホール実践 新車当時のタイヤを装着したまま、走行2600kmでオークションに出品されていたXT250。1981モデルのノンレストア車[…]
第1位:ポケッタブル高圧洗浄機[スパイサー] 売れ筋第1位には、SPICERR(スパイサー)の「ポケッタブル高圧洗浄機」がランクインしました。 この製品は、バイクにダメージを与えることのないように圧力[…]
第1位:レイキッシュ[ヴィプロス] チェーンオイル売れ筋第1位は、ヴィプロスの「レイキッシュ」。浸透率がとても高い上に速乾性もあるため、チェーンの細部まで素早く浸透するほか、オイルの飛散や汚れの付着な[…]
人気記事ランキング(全体)
市販バージョンは750ccオーバー!? ホンダが世界に先駆けて量産直4マシン=CB750フォアを発売したのは’69年のこと。つまり、今年は直4CBの生誕30周年にあたるってわけ。そこで、提案モデルとい[…]
ステップアップの階段・R7の成功が生んだR9 YZF-R9の開発者・お二人にインタビュー 編集部:まずはYZF-R9(以下R9)の企画経緯や狙いを教えてください。 兎田:他社さんを含めてスーパースポー[…]
250ccクラスは16歳から取得可能な“普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は全部で7種類ある。原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制[…]
セルが弱くなったらバッテリー交換のサイン スクーターのバッテリーが弱ってきたのか、始動性がイマイチになってきました。 そういえば、このバッテリーもずいぶんずいぶん古くなってきたので、バッテリーを買い替[…]
ジクサー150でワインディング 高速道路を走れる軽二輪で、約38万円で買えて、燃費もいいというウワサのロードスポーツ──スズキ ジクサー150。 まだ子どもの教育費が残っている50代家族持ちには(まさ[…]
最新の投稿記事(全体)
ラチェットハンドル:1/4ビットとソケットの二刀流で狭い場所でも扱いやすいラチェット工具 最初に紹介するのは、9段階のフレックヘッドの一方を差込角1/4インチのラチェットハンドルで、もう一方を1/4イ[…]
みなさん始めまして!北海道札幌市在住のふーまと申します。バイクや車とそのオーナーさんを被写体にした、映像制作や写真撮影をしているチーム「Garagefilm」で活動をしております。 動画作品は、You[…]
様々なイベントで製品を伝えるサイン・ハウス サイン・ハウスは、様々なイベントに出向いてユーザー接点を多くとっている。最新モデルを直接体感してもらい、それぞれの特徴を的確にユーザーに伝える。活用方法や操[…]
YZF-R9の開発者・お二人にインタビュー スピンフォージドホイールを非採用の理由とは? (前編から続く)編集部:エンジンですが、内部部品や吸排気系も含め、基本的にはMT-09と共通です。YZF-R9[…]
1月25日(土)に東京都・埼玉県のバイク用品店3店舗にて開催! 2024年のロードレース世界選手権にて、Moto2クラスのチャンピオンを獲得した小椋 藍選手のサイン会が、2025年1月25日(土)に、[…]