
メンテナンスに活用したい、丸中洋行が開発生産するNTBの「規格部品」。純正部品と社外部品という分類に対して、純正部品と同等の厳しい基準に基づいた独自の製品開発を行っているのが、この規格部品の特徴だ。今回は、見た目にも性能的にも重要なシートとサスペンションを交換した模様を紹介しよう。
●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:丸中洋行
表皮の厚み/柔軟性/優れたフィット感で仕上がり抜群。NTBの「規格部品」でくたびれたシートをリフレッシュ!
実用車としてだけでなく、カスタムバイクとしてのポテンシャルも高い、ホンダ スーパーカブ。その走りを支えているのがサスペンションとシートだ。ニーグリップが効かないカブの場合、体重のほとんどが加わるシートの役割は特に重要。
経年劣化やいたずらなどで切れたり破れた表皮をガムテープで塞いだカブを見かけることがあるが、カッコ悪いのはもちろん、雨水が染み込んだスポンジは加速度的に劣化が進むため、早急な手当てが必要だ。
そんな時に活用したいのがNTBの「規格部品」。純正部品と社外部品という分類に対して、純正部品と同等の厳しい基準に基づいた独自の製品開発を行っているのが特徴で、コストパフォーマンスの良さにより、全国のバイクショップから高く評価されている。
NTBのシート表皮には、原付から大型車/絶版車まで150種類以上のラインナップがある。どれも表皮の質感が高く、純正シートから採寸することでスポンジへのフィット感が抜群に良いのが特徴。
今回張り替えたAA01型スーパカブ用シート表皮の参考価格は、なんと2200円!! ボロボロのシートが悩みのタネというオーナーは、ぜひともNTBの規格部品でシート表皮交換にチャレンジしてみよう。
機種ごとの規格部品のラインナップは、N.T.Bオートパーツサーチで検索できる。愛車に適合する表皮があれば、抜群のコストパフォーマンスでシート補修ができる!
紫外線や擦れでツルツル、カチカチに変質するのがシート表皮の宿命。NTBの表皮は硬化や褪色しづらく、純正相当の厚みと伸縮性の高い素材を厳選して製造されている。
シート表皮の交換作業
古い表皮を固定しているステープルをマイナスドライバーなどで取り外す。錆びたステープルは折れやすく、先端がシートボトムに残るので、ラジオペンチやニッパーで取り除いておく。
外周がめくれ上がっていたものの、表皮に穴や切れはないため、スポンジの状態はさほど悪くない。スポンジに穴が開いている場合は、別途NTB補修用スポンジで埋めておこう。
スポンジが湿ったまま表皮を張ると水分の逃げ場がなくなるので、シートボトムから剥がして風通しの良い日陰で十分に乾燥させる。水分が飛んで驚くほど軽くなることもある。
部分的に破断したスポンジは、表皮表面の段差の原因になるため、事前に接着剤で貼っておく。ボンドG17に代表されるゴム系溶剤形接着剤は、空気に触れて硬化するのが特徴。
接着面の両側に接着剤を塗布したら、表面がベタつかなくなるまで5〜10分待ってから押しつける。初期乾燥は早いが、完全乾燥まで24時間程度かかるので、慌てず乾燥させよう。
シートボトムに残った痕跡を参考に、接着剤を塗布する。全面的にベッタリ塗るとシートの剛性感がアップするが、乗り心地が硬くなるので、純正と同程度の塗布が良いだろう。
表皮とスポンジの間に防水フィルムがある機種は、再使用するか新たに取り付ける。厚いと表皮側にシワが出ることがあるので、薄く柔軟性のあるビニールフィルムを使おう。
シートボトムとスポンジに塗布した接着剤が指に着かない程度に乾いたら、両者を強く押しつける。置いただけではスポンジが浮いていることもあるので、体重をかけて押す。
NTB製シート表皮には中心を示すマーキングがあるので、シートボトムの中心にガイドラインを引いておくと(マスキングテープなどを貼っても良い)中心が出しやすい。
前端部分中心のマーキングを確認する。NTB製表皮は純正シートアッセンブリーから採寸して製造しているので、純正スポンジにぴったりフィットするのが心地良い。
後端部分中心のマーキングも分かりやい。純正シートで採寸しているため、経年劣化やアンコ抜きなどで著しく形状変化したスポンジにはフィットしないこともあり、要注意。
ステープルを打つ際は、先に前後を固定する。表皮を前後方向に強く引きながらセンターに1発。タッカーには手動タイプもあるが、強力に打ち込むにはエアー式がベスト。
前後を決める際は、表皮の縫製部分とスポンジの角を合わせるのがコツ。縫製部分がスポンジからズレているのに気づいたら、ステープルを引き抜いて位置を調整して打ち直す。
前後方向が決まったら、左右対称にシートボトムサイドに表皮を巻き込み、広めの間隔でステープルを打つ。前端部分はシワが寄りやすいが、最初はそれほど気にしなくてよい。
シートセンターから均等に張れたら、ステープルの隙間を埋めるようにタッカーで固定する。シワが目立つ部分は一度ステープルを抜いて、シワを逃がすように打ち直そう。
エアタッカーを使えば、打ち直しも苦痛ではないので、納得できるまでやり直せる。とはいえ、同じような場所にステープルを繰り返し打つと表皮の強度が低下するので、ほどほどに。
スポンジの角と表皮の裁縫部分のモール位置が一致しており、見た目が美しい。表面のシボ(凸凹模様)やしっとりとしたツヤも上質で、バイク全体の質感も大幅に向上する。
座面のシワを取る際に部分的に細かく引っ張りながら張るため、裏側にはヒダやシワが出る。このヨレを表面に出さないため、ステープルは細かいピッチで打つのがコツだ。
シートのコンディションは、バイクの見た目を左右する重要なポイント。表皮が擦れたり破れていると、見栄えが悪い上に、スポンジに染み込んだ雨水が滲み出てきて気分も悪い。独自の基準で「規格部品」を開発するNTBのシートカバーを活用すれば、ヘタったシートが蘇る!
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
あなたにおすすめの関連記事
コンパクトなのに3系統の電源が取り出せるキジマの「アクセサリーパワーユニット」 電気メンテやカスタムが得意なサンデーメカニックなら、電源の重要性は理解できるはず。USB電源やグリップヒーターを取り付け[…]
素材と製法で選べる充実のラインナップ。レアなパラガン後期モデル用ストリート向けチャンバーが新登場 1983年に登場したスズキRG250ガンマは、レーサーレプリカブームの始祖として若いライダーを熱狂させ[…]
6段引き出しを備えたガレージの据置ツールチェスト 部屋から駐輪場まで工具を持ち運ぶには、軽くて機動性重視の収納グッズが重宝するが、ガレージ内に据え置きするなら、あらかじめ収納力に余裕のあるチェストを用[…]
カスタムはもちろん廃番プロジェクトも大好評。積極的なパーツ開発でユーザーをサポート 2022年、日本自動車殿堂によって歴史遺産車として登録されたスズキGSX1100S/750S。2000年に1100台[…]
差込角1/2インチの12ポイントソケットで最大32mmのボルトナットに対応 ソケット差込角1/2インチのソケットレンチは、ボルトナットが大きく締め付けトルクも強い。エンジンや足まわりにはガッチリした作[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
皮脂や汗に含まれる尿素が生地を痛めてしまう ──一般の方が汗でびちょびちょのヘルメットをリフレッシュさせたい場合、どのように行えばよいでしょうか? 「どこが外せるのか、どういうふうに洗えばいいのかは、[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! 世界的に知られるプレミアムカー用品ブランド・シュアラスターが、アメリカのカリフォルニア州ロングビーチで創業したのは1947年のこと。以来、カーシャンプーやワックス[…]
バイクの電装部品のひとつ、レギュレターってご存じですか? こういうの部品です。 車種によって場所はマチマチですが、だいたいがシルバーで、アルミ素材で空冷フィンがついていて、比較的バッテリーに近いところ[…]
メーカー自体が存在しない絶版車のメンテやレストアは難しい 日本のバイクメーカーは今でこそ4社に集約されていますが、1950年代には大小含めて数十社のメーカーが林立していました。第二次世界大戦で疲弊した[…]
キャッチニッパー :作業後のゴミが減り掃除が楽になる、切れ端を飛ばさないキャッチ機能付き 配線や結束バンドを切断した際に切れ端が飛び散るのは仕方がないというのが一般的な常識に対して、一方の刃にプレート[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
ミドル直4“ザッパー”見参! 次世代を見据えた新技術を余さず投入 1970年代中頃はZ1がすでにビッグバイク界を席巻していたが、カワサキはその名を不動とするため「Z1ジュニア」のコンセプトのもと、40[…]
国内規制に合わせてエンジンを再設計 ホンダのCB750フォア(1969年)の発売と前後して、大型バイクの事故の増加や暴走族が社会問題化し、国内では750ccを超える排気量のバイクを販売しない自主規制が[…]
ライムグリーンのローソン・レプリカが人気を独占 カワサキはZ1からZ1000Mk.IIまで進化を重ねたが、1980年代に入ると大排気量スポーツのライバル車が台頭。そこでZ1系のエンジンとシャシーを刷新[…]
本格オフロードモデルDT系を原付のちょうど良いサイズでリリース! ヤマハは1968年、250ccの大きな排気量で初のオフロード用2ストローク単気筒エンジンを搭載した画期的なDT1をリリース、以来125[…]
新たな時代の「角Z」:スタイルと操案の狭間で揺れたZ1-Rの人気 Z1からZ1000までリファインを重ねて完成度を高めた“丸Z”だが、1970年代後半にはスズキのGS750/1000のようなライバル車[…]
人気記事ランキング(全体)
ホンダ「CB1000F SE コンセプト」が鈴鹿8耐で世界初公開! 8月1日より予選が始まった“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第46回大会のホンダブースにて、CB1000F SE コンセプト[…]
3色すべてホイールカラーも異なる カワサキは欧州でZ650RSのニューカラーを発表。カラーバリエーションの全てが新色に置き換わり、黒ボディにレッドストライプ&レッドホイールのエボニー、メタリックブルー[…]
国内規制に合わせてエンジンを再設計 ホンダのCB750フォア(1969年)の発売と前後して、大型バイクの事故の増加や暴走族が社会問題化し、国内では750ccを超える排気量のバイクを販売しない自主規制が[…]
KOMINE プロテクトフルメッシュジャケット ネオ JK-1623 フルメッシュで残暑厳しい秋口のツーリングでも快適さを保つジャケット。胸部・肩・肘・背中にプロテクターを標準装備し、高い安全性も両立[…]
最小限のカスタムでクルーザーをアドベンチャーマシン化 1200ccという大排気量の水平対向エンジンを心臓部に持つBMWのヘリテイジモデル、R12シリーズ。その新しいバリエーションとして2025年5月に[…]
最新の投稿記事(全体)
シグナスシリーズ、20年の歴史を背負うニューフェイス 以前は空冷エンジン搭載のコンパクトな原付二種スポーツスクーターとして人気を博した「シグナスX」だが、水冷の新世代「シグナス グリファス」に交代した[…]
皮脂や汗に含まれる尿素が生地を痛めてしまう ──一般の方が汗でびちょびちょのヘルメットをリフレッシュさせたい場合、どのように行えばよいでしょうか? 「どこが外せるのか、どういうふうに洗えばいいのかは、[…]
発表と同時に発売! マットチタニウムカラーのアヴェニス125など新色×5種 スズキは欧州で、日本でいう原付二種に相当する125ccのスクーター×2車をカラーチェンジ。1車は2022年の現地登場以来(日[…]
鮮やかなブルーでスポーティな外観に 欧州においてスズキ「ハヤブサ」が2026年モデルへと更新された。アルティメットスポーツを標ぼうするマシンは基本的に2025年モデルを踏襲しながら、レギュラーカラーが[…]
「56design NARA」に続く新店舗が北海道に バイクアパレル&ファッションブランド「56design(フィフティシックス・デザイン)」が、北海道札幌市に新店舗「56design SAP[…]