
1993年、デビューイヤーにいきなり世界GP250チャンピオンを獲得した原田哲也さん。虎視眈々とチャンスを狙い、ここぞという時に勝負を仕掛ける鋭い走りから「クールデビル」と呼ばれ、たびたび上位争いを繰り広げた。’02年に現役を引退し、今はツーリングやオフロードラン、ホビーレースなど幅広くバイクを楽しんでいる。そんな原田さんのWEBヤングマシン連載は、バイクやレースに関するあれこれを大いに語るWEBコラム。第154回は、前回に続いて2025年シーズンのMotoGP・ポイントランキング順にライダーを振り返りつつ、原田さん本人の2026年のチャレンジについて言及します。
Text: Go TAKAHASHI Photo: Michelin
- 1 第5位 フランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)
- 2 第6位 ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)/第7位 フランコ・モルビデリ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)/第8位 フェルミン・アルデゲル(BK8 Gresini Racing MotoGP)
- 3 第9位 ファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP Team)
- 4 第10位 ラウル・フェルナンデス(Trackhouse MotoGP Team)
- 5 圏外 原田哲也、ライダースクラブ誌編集長に就任
第5位 フランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)
こんなところにバニャイア……。ちょっと信じられない結果ですね。とにかく激しい浮き沈みの波に翻弄された、’25年のバニャイア。’25年型デスモセディチは完全に彼には合っていなかったようですが、それでも2勝を含め表彰台には8回と、実力を覗かせました。
前にも書きましたが、残念ながらこういう年もあります。’26年型が彼にも合う特性になる……かどうかは分かりませんが、ゼネラルマネージャーのジジ・ダッリーニャはイタリア人のバニャイアを見捨てないはず。我慢のシーズンを終えて、来季は返り咲きに期待です。
第6位 ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)/第7位 フランコ・モルビデリ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)/第8位 フェルミン・アルデゲル(BK8 Gresini Racing MotoGP)
同じチームでも、ディ・ジャンアントニオは25年型デスモセディチを、モルビデリは24年型を走らせた、と言われています。ものすごく速いわけではないけど、どんなマシンもそつなく乗りこなすディ・ジャンアントニオですが、浮き沈みがあったのはやはりバニャイア同様に25年型の特性に苦しんだからでしょう。
アルデゲルはシーズン途中からだいぶ乗れてきましたね。彼はMotoGPルーキーですが、第6戦フランスGPで3位表彰台に立ってから、グンとステップアップ。「若いライダーは勢いに乗せると怖い」という僕の考え通り、第13戦オーストリアGPで2位、第18戦インドネシアGPでついに優勝を果たしました。
乗り方もバトルもクリーンですし、テクニックも持ち合わせているアルデゲルは、まだ20歳。彼のような才能がゴロゴロしているのが、ヨーロッパの恐ろしさです……(笑)。
第9位 ファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP Team)
唯一ランキングトップ10に入った日本メーカーのライダー。相変わらずストレートからのブレーキング技術はピカイチですが、逆に言うとそれしか武器がない、という感じもあります。
本来なら、もう少し緩やかなブレーキング(とは言っても、とんでもないハードブレーキの範疇ですが)にして、姿勢を整えてからしっかりと曲げ、加速したいはず。しかし立ち上がりで抜かれてしまうことが分かっているので、頑張りどころがブレーキングしかないんです。
そしてブレーキングで頑張っているうちにフロントタイヤがタレる。もしくはちょっとしたミスでフロントから転ぶ……という悪循環が続いています。……僕も現役時代に同じメーカーで同じ苦しみを味わったので、クアルタラロの気持ちがよく分かります……。
ホンダのランキング最上位は12位のヨハン・ザルコ。日本メーカーどうした、と言いたくなりますが、成績だけで各社の技術力を推し量ることはできません。これは僕の個人的な見解ですが、共通ECUが決まった’16年より前、レギュレーション策定にあたって「日本メーカーがどれだけプレッシャーをかけられたか」が、10年経った今、モロに利いているように思います。当時のプレッシャーのかけ方が足りなかったからこそ、ドゥカティにとって有利なレギュレーションになり、それが今のMotoGP勢力図を作った、ということです。
僕はドゥカティのゼネラルマネージャー、ジジという人物をよく知っています。現役時代はアプリリアで一緒に仕事をしましたし、今も友人関係が続いています。その上で言えるのは、「ヨーロッパ人は、自分が有利になるためならどんな手間も厭わない」ということです。
それが悪いことだとは、まったく思いません。僕自身、ヨーロッパでの生活が長いせいか、むしろ日本人の方がおとなしすぎる、と感じます。ジジが当時どんなネゴシエーションをしたのか詳しく聞いたことはないので想像でしかありませんが、思い通りにならないと「じゃあドゥカティは撤退するからね」と、ドルナに圧力をかけたことでしょう。
こういう力技は、勝つために絶対に必要なことなんです。上から与えられたレギュレーションに素直に従うのではなく、自分たちに有利になるようなレギュレーション作りをさせなければなりません。これは完全にたらればですが、もしあの時、共通ECUが導入されず、各メーカーのオリジナルECUのままだったり、それに近いようなものになっていれば、今も日本メーカーが席巻していたはずです。
実際には共通ECUの問題だけではなく、空力パーツなどいろいろな新機軸で出遅れた影響もあるでしょう。しかし純粋な技術力だけでは、ヨーロッパ主体のレースで勝つことができないのは事実。交渉力を高めることもとても大事だと思います。
第10位 ラウル・フェルナンデス(Trackhouse MotoGP Team)
皆さんご存じ、小椋藍くんのチームメイト。アプリリアのサテライトチームですね。フェルナンデスは藍くんに先駆けてMotoGP初優勝を挙げ、ランキングでも10位になりました。
MotoGPも4シーズン目。今シーズンは優勝に加えて2位表彰台にも立ってある程度の存在感を示せたのではないでしょうか。
一方、MotoGPルーキーのチームメイト、藍くんはランキング16位。シーズン開幕前に僕が立てた「序盤のオーバーシーラウンドは好調でも、ヨーロッパラウンドに入ってからは苦戦するのではないか」という悪い予想が、残念ながら的中してしまいました。
ただ、クレバーな彼のことですから、1年間戦ったことで自分には何が足りなかったのかを掴んでいるはず。今のMotoGPは僕の現役時代に比べるとテストの機会が少なく、思うような「走り込み」はできませんが、シーズンオフは毎日のようにミニバイクコースでトレーニングをしている様子。2年目となる2026年が楽しみです。
圏外 原田哲也、ライダースクラブ誌編集長に就任
私事で恐縮ですが……、ライダースクラブ2025年12月号(10月27日発売済)より編集長の任に就くこととなりました。すでに2026年1月号(11月27日発売済)、2月号(12月26日発売済)と3冊を発行していますので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
編集長の仕事をさせてもらいながら思うのは、雑誌作りに携わっている人たちは本当にすごい、ということです。今までは出演する側だったので、「好き勝手に話して終わり!」という感じでしたが、その先の雑誌制作の大変さと言ったら……! 雑誌の見方が変わりました。
2025年12月号ではジジ・ダッリーニャと僕の対談を記事にし、2026年1月号ではケニー・ロバーツさんの記事も制作しました。こうして今までのレース人生で培ってきた人脈を生かせるのは、ちょっと楽しいことですね。
掲載する写真選びや誌面のレイアウトなど、今まではただ漫然と眺めていた雑誌を制作者として裏側から見られるのも、なかなか刺激的です。一個人としてバイクの社会的認知度向上に役立とうとしてきましたが、それに加えてメディアという立場からもバイク文化のあり方を変えていければ、と思っています。
これだけネットが普及した時代に、あえて紙媒体を作ろうというのですから、「他にはない高品質な雑誌を」という意気込みで頑張っています。書店などで見かけた際には、ぜひ手に取ってみていただけるとありがたいです。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事([連載] 元世界GP王者・原田哲也のバイクトーク)
実は独走状態が嫌いだった?原田哲也が明かす意外なレース展開 現役時代、僕は「クールデビル」と呼ばれ、「冷静沈着な男」と見られていたようですが、本人としては「こんなに熱いのに、なぜ!?」と思っていました[…]
ウサギとカメの王座争い。0点を抑えてポイントを稼ぐマルティンの強さ 第13戦アラゴンGPと第14戦サンマリノGPを欠場した小椋藍選手(SuperFile Trackhouse MotoGP Team)[…]
アラゴンGPで圧倒的な強さを見せて完全復活を果たしたマルク・マルケス選手。自身の好調さを証明しつつも、実は怪我で離脱中の小椋藍を密かにライバル視している。完全復活を遂げた王者が、若き挑戦者との直接対決[…]
欠場も焦る必要なし!年間最多レース時代に求められる戦い方 MotoGP第12戦イギリスGPで、小椋藍選手(SuperFile Trackhouse MotoGP Team)が転倒、リタイヤを喫しました[…]
タイヤの負担を抑える、正統派ライディングスタイルで勝利を獲得 MotoGP第10戦オランダGPで、ついに小椋藍選手(SuperFile Trackhouse MotoGP Team)が優勝しましたね![…]
最新の関連記事(モトGP)
VIPパスがもたらす上質なひととき グランドスタンド頂上にあるホスピタリティエリアへ足を踏み入れると、外の喧騒とは一線を画す、洗練された大人のための空間。眼下にサーキットのストレートやピットレーンを一[…]
新たなトレンド“ 足出し”とマシンに合わせた固執しないフォーム ロードレースが大転換を迎えた2000年代。頂点クラスは長く続いた2スト500㏄から4スト990 ㏄ のMotoGPに変わった。初年の20[…]
ハーレーが仕掛ける異色の世界選手権 ハーレーダビッドソンは2024年から3年連続で、MotoGP日本グランプリに出展している。世界最高峰のロードレースに、なぜハーレーが? そもそもMotoGPのレース[…]
開けやすさや姿勢コントロールで安定したコーナリングを追及 80年代のGPシーンはラジアルタイヤの登場やアルミフレームなど様々な方向性でマシンが変革。またライディングフォームもハングオフが一般化したとは[…]
リーンウィズからハングオフへコーナリングフォームの大変革期 ロードレース世界選手権、いわゆるWGPが初開催されたのは1949年。現在も有名な欧州メーカーに加え、今は無きメーカーも多数参戦してしのぎを削[…]
人気記事ランキング(全体)
軽量化への徹底したこだわりが生んだ、革新的なスーパースポーツ 1980年代、国内のバイク市場ではレーサーさながらの外観と高性能を備えた、レーサーレプリカの人気が急速に高まっていた。その流れを牽引する存[…]
税込418万円で2027年1月23日発売! 国内限定300台のプレミアモデル 再導入の報から注目を集めていた2027年モデルのNinja H2 CARBONだが、注目の価格はカワサキケアおよびETC2[…]
中部地方初の拠点「名古屋BASE」が庄内通にオープン 地下鉄鶴舞線の庄内通駅エレベーター口から徒歩5分というアクセスしやすい場所に、ビークルファンの新拠点「名古屋BASE」が開設された。関東や関西、九[…]
武骨で美しいファットバイクスタイルと16歳以上免許不要の手軽さ 一般的な電動キックボードや華奢な電動アシスト自転車とは一線を画す、圧倒的な存在感を放つのが「COSWHEEL MIRAI G」だ。 この[…]
30年の精密製造技術を結集したハイエンドな車体構造 現在公開されているEICMA 2026出展車両の中でも、ひときわ異彩を放っているMTPEAK One All。3D精密加工やCNC切削、カーボンファ[…]
最新の投稿記事(全体)
スタッフさんからの太鼓判と、排気量450という数字を信じて。恐る恐る乗ってみました! 皆様こんにちは~指出瑞貴です♪ F900xrオーナーの私ですが、今回はなんと、F450GSに試乗させて[…]
ヤングマシン電子版2026年12月号[Vol.649] 【特集】カスタムしようぜ!!CB400 SUPER FOUR E-Clutch◆青木宣篤がホンダを直撃「E-Clutch使えんの?」◆初出し情報[…]
量産型スーパーカブとは明らかに異なる初代シリーズ 新品デッドストックの部品を譲っていただき加工し組み付ける。しかし、この部品はもう二度とお目にかかれないかも? さらに加工も考えている。少しでも長く、そ[…]
国内版CBR400R FOURと共通基盤を持つ502cc直4エンジンとEクラッチ 欧州発表の新型CBR500R FOURは、国内で販売されているCBR400R FOURの直列4気筒プラットフォームと基[…]
EICMAで熱視線を集めるイタリア発の都市型マイクロモビリティ ミラノで開催されたEICMA 2026で異彩を放ったデスナー T30は、欧州のL6e(軽量四輪車)規格に適合する完全電動の2人乗りシティ[…]
- 1
- 2









































