
バイクの話で意見が分かれるテーマがあります、それは「エンジンオイル」。ただの潤滑油のはずなのに、好みがあり、哲学があり、ときには信仰の対象にすらなってしまう。そんなエンジンオイルですが「好きにすればいいジャン!」と言う前に、ここらでいわゆる「オイル三大思想」について整理してみたいと思います。さてさて、はたしてアナタは何派でしょうか?
●文:ヤングマシン編集部(DIY道楽テツ)
オイル三大思想バトル
エンジンオイルの種類って、すっごく多くてどれにしようか? と迷ったことはないでしょうか。どこのメーカーの、どんなグレードのオイルを買えばいいのか? とにかく種類が多すぎて、とくにビギナーの方にとっては悩みの種になるのではないでしょうか。
バイクのエンジンオイルについて調べていると、不思議なことにその成分やスペックよりも先に「人の顔」が思い浮かぶことがあります。「あの人は、ああ言っていたな」「別の人は、真逆のことを言っていたな」といった具合に、です。
・・・ハテ? ネットで調べても同じで、強く主張する人がいる一方「人それぞれだよね」と波風を立てない人もいます。どうやらオイルの話は、単なる工業製品の話ではなく、好みや嗜好に留まらず思想レベルの話らしいのです。
・・・考えてみたらチョット興味深い話ですよね? というわけで、今回はいわゆる「オイルの三大思想」ってヤツをまとめつつ整理してみたいと思います。異論は認めますし、そういう考えもあるよねといった感じで読んでいただければ。
高いオイル派
「良いものを入れれば、エンジンは応えてくれる」まずは高いオイル派からいってみましょう。いきなり正直に言ってしまうと、筆者にとってはやや縁遠い存在です。だって、高いんだもん。
一般論として、高性能なエンジンオイルは油膜保持性能が高く、高温・高回転域でも粘度低下や油膜切れを起こしにくいとされています。とくに、真夏の渋滞路や高速巡航での連続高回転走行といった、エンジンにとって過酷な条件下では、オイルの性能差がそのまま「守れるか・守れないか」に直結する、という考え方です。
また、高性能オイルに使われるベースオイルや添加剤は、摩耗低減や清浄分散性能にも優れており、結果としてエンジン内部をクリーンに保ちやすい、というメリットもあります。
オイル自体は高価でも、長期的に見れば、エンジンのコンディション維持や寿命延長につながる。つまりはコストパフォーマンス面で優れているとして、高いオイルを選び続ける人がいるのもうなずけます。
「エンジンは正直だ。良いオイルを入れれば、ちゃんと応えてくれる」。この言葉を信じている人にとって、高価なオイル代は単なる出費ではなく、エンジンへの投資と言えるのでしょう。この思想が長年支持され続けているのには、ちゃんと理由があるというわけですね。ただし、それが街乗り中心の使用環境で、どこまで必要なのかという点になると、意見は分かれ始めます。
ここで、某友人の話です。彼は実際に、こんなことを言っていました。
「高いオイル入れるとさ、なんか回り方が違う気がするんだよね」
「一度コレ入れたら、もう他のオイル入れらんねぇわ」
「一度使ってみな、スゲェから!」
あくまでも個人的な意見ですが科学的に証明できるかどうかは、正直よく分かりません。ちなみに彼は、家電を買うときは最上位機種の「一個下」を選ぶそうです。なんとなく、通じるものを感じます。精神的満足度は、かなり高そうです。
安いオイル派
「オイルは消耗品。頻繁に替えた者が勝つ」。今度は逆にめっちゃ親しみがある。安いが正義!という考え、好きです。一般論として、エンジンオイルは消耗品であり、性能よりも交換頻度が重要だ、という考え方も広く知られています。定期的に交換されていれば、極端に高性能なオイルでなくても十分、という意見ですね。
「どうせ汚れるし、3000kmで替えれば問題ないでしょ」
「安いから早いサイクルでも交換できる。」
「劣化前に交換することがオイルの性能より大切」
・・・ちなみにこれは、過去の筆者も同意見でした。単純にお金がなかったので安いオイルを選んでいただけなのですが、それでもバイクは維持できていましたし、大きなトラブルもありませんでした。気軽にオイル交換できるので気分も良かったんですよね~。合理主義・現実主義。かなり強い思想です。
ただし、夏場の高温環境や空冷エンジンなど、条件が厳しくなると、少し不安になるという声もあります。
純正至上主義
「メーカーが言っているんだから、それが正解」。一般論として、メーカー純正オイルはエンジン設計の初期段階から想定されており、性能・耐久性・トラブル回避のバランスがもっとも取りやすいように作られています。極端な性能を狙うのではなく「どんな使われ方をしても破綻しにくい」という保守的かつ堅実な位置づけと言えるでしょう。
そもそもサービスマニュアルには、粘度や規格とともに純正オイルの使用が明確に指定されています。これは単なる建前ではなく、メーカーが実際に耐久試験や長時間テストを行ったうえで「これなら問題ない」と判断した結果でもあります。信頼と実績は文句なしにナンバー1でしょう。
そして現実的な話をすれば、ディーラーでのオイル交換では基本的に純正です。整備士はマニュアルに沿って作業を行い、保証や責任の観点からも、純正以外を積極的に勧める理由がありません。ただし、それがあらゆる条件で「最適」かどうかは、また別の話になります。某友人は、まったく争う様子もなく、こう言っていました。
「メーカーが言ってるんだから、間違いがあるはずがない。高いオイルなんて添加物が入ってるだけだし、定期交換していればいらない。安いオイルなんて論外。てか、純正一択でしょ」
正論だと思います。すごい説得力。正直なところ、納得してしまいます。
それでもバトルが終わらない理由
ここまで見てきて、ひとつ気づいたことがあります。使い方が違う。エンジンが違う。感じ方が違う。
つまり、前提条件が違うのです。この時点で、ひとつの正解を決めるのは、かなり難しくなってきますよね。バイクの設計から・・・という話であれば、純正オイルが正解という結論に向かいつつあったのですが、こんな話も思い出しました。
過酷な条件で走るレーサー(ファクトリーマシンを含む)で、純正オイルを使っている、という話はあまり聞きません。もちろん、スポンサーというものがある以上その制約はあるにせよ、サンデーレーサーの方で純正オイルが最高!って話は(筆者の知る範囲では)ありませんでしたね。
ちょっと話を変えますね。我が家のクルマ、トヨタハイエースの話ですが、旧式の100系を好んで乗っています。走行距離は25万kmを超えました。すっかり老兵です。
実はこのハイエース、純正指定の粘度だとオイルが減ります。ものすごく減ります。「2ストか?」と思うぐらいに減ります。それこそ、オイル交換時期前に警告灯が点いて、オイルを抜いてみると半分ぐらいに減っていた・・・ってことがありました。
これが、純正オイルだろうが、お高めのオイルだろうが全部減っちゃうのですよ。そこで試しに、古いエンジン向けの少し硬めのオイルに変えてみたところ、これがビンゴでした。オイルの減りは少なくなり、エンジンの調子もとても良くなったのです。
これは「純正がダメ」という意味ではありません。たとえば前述のレースの世界は、常に高温・常に高回転・交換前提という、用途がまったく違う世界だからです。また、ハイエースの例では開発段階のエンジンは25万キロ走ってはいなかった、という事だと思うのです。つまり、オイル選びは「良し悪し」ではなく、用途の話なのだと思い至るわけですよ。
けっきょく、何が言いたいのか
個人的な感想と結論で恐縮ですが、オイル論争は性能の優劣というよりも、思想と安心感の違いの話だと感じました。
高いオイル:満足感が高く、起こりうるトラブルへの予防線。いわばエンジンへの保険。
安いオイル:管理と割り切りを前提にした合理主義。交換頻度でカバーする考え方。
純正オイル:メーカー保証に裏打ちされた安心感と無難さ。間違いのない選択肢。
どれも間違っていません。ただし、それぞれ向いている人が違います。高いオイルは、エンジンに対して「最善を尽くしたい」と思える人に向いています。安心や満足感も含めて性能と考えられる人にとって、その選択は十分に意味があります。
安いオイルは、管理を楽しめる人、割り切って付き合える人に向いています。頻繁な交換や状態把握を前提にした合理的な考え方であり、決してケチや手抜きではありません。
純正オイルは、余計なことを考えず、確実さを重視したい人に向いています。メーカーの想定通りに使うという選択は、もっとも安心できる王道でもあります。
けっきょくのところ、オイル選びに「正解」はひとつではない、ということでしょうか。自分の乗り方、性格、そしてバイクとの距離感に合ったものを選べばいい、それだけの話なのでしょう。
・・・って、これじゃちょっとフワフワした締めになっちゃいますね!
オジサンの経験談を語らせて
最後になりますが、筆者のこれまでのバイク歴からエンジンオイルについての経験談を語らせてください。
高いオイル
回数は少ないですが高いオイルを使っていた時期があります。ビッグシングルという過酷な熱条件のエンジンだったこともあって安物のオイルが怖かったというのはありますが、高いオイルだけあって、その性能は本気で実感できるものでした。
またちょっと話はずれるのですが、オイル添加剤も使うことがあります。すべての製品がそうとは言えませんが、こちらも体感できるほどの効果があってとても楽しい気分で運転することができるのですが、やはり最終的にコストパフォーマンスを考えちゃいますよね。最終的には常用ではなくて「特別な時」のご褒美的な印象でした。
安いオイル
筆者自身は安いオイルを頻繁に交換するという時期が長かったです。単純にお金が少なかったという理由なのですが、たしかに安いオイルは気軽に交換できて大きなトラブルもなく、肌に合った方法でした。
しかしながら(ほんの一部ですが)極端に安いオイルは自分には合いませんでしたね~。これは、オイル交換してエンジンかけた瞬間から感じました。回転が軽すぎる。エンジンフィーリングがガサガサする。油温が上がると本能的に危険を感じる・・・などなど。
メーカー名や銘柄は伏せますが、4輪でも2輪でも安すぎるオイルはやばかったですね! 最短記録では、オイル交換をした翌日にまたオイル交換したことが2回ほどあります。
純正オイル
年齢とともに小排気量に乗るようになってからは、純正オイルを使うことが多くなってきました。
とくにホンダスーパーカブ系の横置きエンジンについてはやっぱりホンダ純正エンジンオイルを使ってしまいます。また、250cc 4気筒の超高回転エンジンも純正オイルを使ってました。やはりそのオイルで開発されたという事実は、安心感につながるんですよね。
まとめ:結局は自分次第。試行錯誤してみよう
「どんなオイルを使うのがベストなのか?」。筆者の意見としてですが、けっきょくのところ自分が「好きだ」「しっくりくる」と感じるものが、いちばん良いのだと思います。大切なのはネットの口コミや人の意見に左右されることなく、自分自身が気になったオイルを入れてみて、そして走ってみて味わってみて、また別のオイルを入れて走ってみて・・・。
それを繰り返すことによっていつかは「これがいい!」というオイルにきっと出会えるはずなんです。
オイルを入れて走ってみないと分からないこともある。もとい、走ってみないと分からないですよね?
オイルの売り場に行くと膨大な種類があって、どれにしようか迷うかもしれませんが、たくさんの種類の中から選べるというのは、案外幸せなことなのかもしれません。最後になりますが、筆者は若いころは断然カストロール派でした。安いし、性能のコストパフォーマンスもいいし、2サイクルオイルは断然これ一択でした。オイルでめっちゃ汚れましたけど(笑)。あの匂いは最高だった!
今は純正オイルとエーゼットのオイルを半々ぐらいで使ってますね。コストパフォーマンスが高くて重宝しております。この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!
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