
●記事提供:モーサイ編集部 ●まとめ:モーサイ編集部(阪本) ●写真/カタログ:八重洲出版アーカイブ
非Vツインから始まった、日本メーカー製のアメリカンモデル
1969年に公開されたアメリカ映画「イージーライダー」に登場するハーレーダビッドソンのカスタムチョッパーに影響を受け、長めのフロントフォークとアップハンドル、それに対して車高の下がったリヤまわりといったフォルムがバイクのカテゴリーとして流行した。
そして、広大な直線路をたんたんと走るようなアメリカ大陸でのイメージにフィットするモデルを、日本メーカーも1970年代の後半から手掛けるようになるのは御存知かもしれない。これが今のクルーザー、当時はアメリカンと言われたカテゴリーだ。とはいえ、当初の国産アメリカンが搭載したエンジンはハーレーのようなVツインではなく、既存のロードモデル用エンジンを用い、専用の外装や車体に積む手法が主流。元からアメリカン専用に仕立てたモデルだったわけではないものの、非Vツインからスタートした「和製アメリカン」は、確実に独自の道を歩み始めた。ここではそんな1970~80年代車から、美麗だったアメリカンモデルをピックアップしてご紹介しましょう。
スズキ・マメタン(50)【1977年】「レジャーバイク的な可愛さをまとった原付チョッパー」
スズキ・マメタン(1977)
50ccの原付を、アメリカンチョッパー風に仕立てた国産初のモデルがマメタン。本場アメリカでは見られない50ccモデルのエンジンは、ロードモデルRG50系ベースでパワーリード方式の空冷2スト単気筒。ハーレーツインの雰囲気は微塵も感じられないものの、小ぶりな車体にアップハンドル、専用タンクや後ろ乗りのチョッパーシート&テールカウルなどでそれらしい雰囲気でまとめられ、レジャーバイク的な立ち位置としても人気を誇った。同車の登場以降、小排気量アメリカンが各社から発売されるようになった。最高出力5.5ps、当時価格は10万9000円。
1977年のスズキ・マメタンのカタログ表紙
スズキ・マメタンのカタログ
カワサキ・KZ1000LTD【1977】「海外市場向けに仕立てられたアメリカカワサキ製 大型直4アメリカン」
1976年のKZ900LTD(欧州向けはZ1LTD)の翌年から製造されたKZ1000LTD
大排気量クラスで、アメリカンモデルをいち早く生産したのがカワサキ。米国のリンカーン工場で1976年に限定生産されたKZ900LTD(欧州向けはZ1LTD)は、既存のZ1のエンジンとフレームをベースに、プルバックハンドル、後輪径の変更(18→16)、段付きシート(キング&クイーンシートとも呼称)、専用タンク&テールカウルの装備でまとめられた。ハーレーとはまったく異なる並列4気筒車ながら、独特の風格を漂わせて評価された。750cc超の同車は当時日本へ導入されなかったものの、以降カワサキは多様な排気量でZ-LTDシリーズを展開。また国内他社もこれに影響を受け、和製アメリカンを市場に投入していく。写真はZ1LTDの翌1977年に生産されたKZ1000LTD。
ヤマハ・XS650スペシャル【1978】「ヤマハ伝統の並列ツインを積んだ端正な和製アメリカン」
1978年に登場した初期型のXS650スペシャルはスポークホイール仕様が標準。写真は翌1979年から発売のキャストホイール仕様。
国内市場へ大排気量アメリカンを初投入したのはヤマハ。既存のスポーツモデルTX650ベースのバーチカルツインは、すっきりした端正なたたずまいで独自の美しさを醸し出した。またティアドロップ(涙滴型)タンク、チョッパー風ハンドル、キング&クイーンシート、ショートメガホンマフラー、後輪16インチといった当時のアメリカンの文法的な装備をまとったアメリカン路線を、ヤマハは「スペシャル」シリーズと銘打って展開。写真はワイヤスポークからキャストホイールに変更された1979年型モデル。最高出力51ps、当時価格は43万5000円。
1979年のXS650スペシャルとロードスポーツモデルTX650の合同カタログ
■1970年発売の650XS1から続くOHC2バルブの直立した並列2気筒エンジン。1979年モデルから点火方式が従来のポイント式からフルトランジスタに進化。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
ホンダ・スズキと同じく、浜松で創業した丸正自動車製造 中京地区と同様に、戦後間もなくからオートバイメーカーが乱立した浜松とその周辺。世界的メーカーに飛躍して今に続くホンダ、スズキ、ヤマハの3社が生まれ[…]
国内のカウル認可後に生まれた、1980年代半ばのネイキッドたち オンロードモデルの中で、定着して久しいネイキッド(英語のNAKED=裸という意味)というカテゴリー名。今では「カウルの付かないスタンダー[…]
シート後部、リヤ両サイドにある白バイの計3つのボックス 白バイのボックスは3つあります。荷物を入れるためのサイドボックス、無線機を入れる無線機ボックスがあり、サイドボックスは車両後部の左右に1つずつ、[…]
規制の根拠は「道路法・第46条第3項」 高速道路などを走っていると、時折インターチェンジの手前などで「危険物積載車両ここで出よ」という表示を目にすることがある。この表示を見かけた場合、その先に危険物積[…]
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備 四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
あの頃の中型 青春名車録「2ストの台頭」(昭和55年) 1970年代(昭和45年~)、国内における250ccクラスの人気は低迷していた。車検がないためコスト的に有利だが、当時は車体設計が400ccと共[…]
2023年モデル概要:ホワイトからシルバーへ変化 「エキサイティング&イージー」をコンセプトに掲げるZ900は、カワサキのフィロソフィーを体現したかのような、先鋭的な「Sugomi」デザインが特徴。エ[…]
HAYABUSA X-1[2000]:世界最速マシンをレーサーレプリカ化 全日本ロードレース選手権で1999年に設立されたS-NK(Xフォーミュラ)に、ヨシムラは発売されたばかりのスズキGSX1300[…]
ジェネシス末弟の新世代を狙う2モデルに鋏まれた濃淡2パターンのレプリカ! 1985年4月、ヤマハは宿敵ホンダが1982年に放ったVT250Fの人気に待ったをかけるべく、4気筒のFZ250 PHAZER[…]
ホンダPCX/160(2020/2021)比較試乗レビュー この記事では、ユーロ5に対応するため全面的に刷新し、第4世代となった2021年モデルと前年にあたる2020年モデルについて比較して紹介するぞ[…]
最新の関連記事(新型クルーザー)
Honda Rebel 500(2020) 大人気モデルへと成長したレブル250と同じスタイリング&ボディサイズでありながら、約2倍の排気量となる471ccの直列2気筒エンジンを搭載したレブルシリーズ[…]
ニューカラーをまとった2026年最新トラをチェック プレミアム志向の輸入ブランドとしても、国内でも地位を確立した感のあるトライアンフ。その2026年モデルが、ニューカラーをまとって出そろった。 話題の[…]
7月上旬発売:ヒョースン「GV125Xロードスター」 ヒョースンモーター・ジャパンから、原付二種クラスに新型クルーザー「GV125Xロードスター」が投入される。発売は2025年7月上旬から日本国内向け[…]
排気量“500cc”バイクの魅力って? Hondaがラインアップする人気シリーズ「レブル」&「CL」シリーズ。 中でも、レブル250とCL250は幅広い層に人気を集めていて、街中やツーリング先でもとて[…]
新進気鋭のクルーザー専業ブランドから日本市場に刺客! 成長著しい中国ブランドから、またしても新顔が日本市場にお目見えしそうだ。輸入を手掛けることになるウイングフット(東京都足立区)が「導入ほぼ確定」と[…]
人気記事ランキング(全体)
“次”が存在するのは確実! それが何かが問題だ 2018年に発売されたモンキー125以来、スーパーカブC125、CT125ハンターカブ、そしてダックス125と、立て続けにスマッシュヒットを飛ばしている[…]
特別な店舗のオープンに向けた特別な1台 関西/中部エリアで6店舗を運営するモトラッドミツオカグループ。新装オープンした堺店は、国内のBMW Motorradの正規ディーラーの中でも最新の内装と設備が自[…]
脇を冷やすことで全身を効率的にクールダウン 夏場にリュックを背負ってバイクで走っていると、背中や脇の蒸れが不快なものだ。そんな悩みを抱えるライダーにこそ、「ワキひえ~る」は、目立たず、効率的に全身をク[…]
欧州ヤマハとUSヤマハの連携で生まれたカスタムビルドのXSR900 GP ウェイン・レイニーがバイクでサーキットを走った! 往年のレースファンなら、それがどれほど特別なことか理解できるだろう。 199[…]
HAYABUSA X-1[2000]:世界最速マシンをレーサーレプリカ化 全日本ロードレース選手権で1999年に設立されたS-NK(Xフォーミュラ)に、ヨシムラは発売されたばかりのスズキGSX1300[…]
最新の投稿記事(全体)
40年の歴史を誇るナナハン・スーパースポーツと、兄弟車のR600 1985年当時、ナナハンと呼ばれていた750ccクラスに油冷エンジン搭載のGSX-R750でレーサーレプリカの概念を持ち込んだのがスズ[…]
ニーズに応じて使いやすい4種のUSB電源 もはやスマホやナビ、ドラレコなど、電子機器が手放せない時代。バイクに乗る上で電源の確保は、ツーリングの快適性を大きく左右する要素となっている。2020年代の新[…]
Screenshot 応募は”無料”なので、応募しないともったいないぞ! 現在、発刊中の『ヤングマシン電子版8月号』では、読者プレゼント(P68)を実施中! そのプレゼント品だが、コールマンのウェスト[…]
国内初のX-ADV(’21-23)用車検対応2本出しフルエキゾースト 日本はもちろん、欧州で人気のX-ADVは数々の輸入マフラーメーカーがさまざまな製品をラインナップしています。しかし、日本で車検対応[…]
あの頃の中型 青春名車録「2ストの台頭」(昭和55年) 1970年代(昭和45年~)、国内における250ccクラスの人気は低迷していた。車検がないためコスト的に有利だが、当時は車体設計が400ccと共[…]
- 1
- 2