
AMAの活躍から世界GPへ。1983年にトップカテゴリーのWGP500で“キング”ケニー・ロバーツを制して当時史上最年少でチャンピオン獲得。そして1985年にはWGP500&250でダブルタイトル制覇の偉業。多くの逸話を持つフレディ・スペンサーが、Hondaホームカミング熊本2025語った自身の挑戦を、改めてご紹介。
●文:伊藤康司 ●写真:minami/編集部/YM archives
苦しんだ1984シーズンに決断したダブルタイトルへの挑戦
1983年のWGP500でチャンピオンに輝いたフレディ・スペンサー。翌1984年のオランダGPでマシンがトラブルを起こしたときに“500と250の両方でやりたい”と、自らホンダに持ちかけたという。
「500と250の両クラス制覇はヤーノ・サーリネンが1973年に、ケニー・ロバーツが1978年に挑戦したけれど達成できなかった。それでも僕はダブルチャンピオンにむけてバイクを作り上げていきたいと思った。それに対してホンダが“やろう”と言ってくれたことを本当に感謝しています」とスペンサー。
1984年のNSR500は通常の燃料タンクの位置にチャンバーを収め、エンジン下に燃料タンクを配置する独創的なマシンで挑んだがトラブルも多く、スペンサーはシーズンで5勝するが、ランキングは4位。
「いろいろなトラブルも抱えていたし、不安はあったんだよ。でも二つのクラスでやろうという考え方はすばらしいし、自分もチームも信じていた。例え結果が出なくても“挑戦したということが大きな結果”になるからね」
そしてホンダとスペンサーはWGPの1985年シーズン前に、新型NSR500(フォーミュラ1クラス)とRS250R-W(ライトウエイトクラス)をデイトナウィークに持ち込み、なんと両クラスで優勝! さらにスペンサーは初のスーパーバイクルールとなった200マイルレースにもVFR750F(インターセプター)で参戦し、こちらも勝利を収めた。
「アメリカのライダーにとって、デイトナで勝つことは夢であり最高の賞なんだ。でも、ほかにも大きな意味があった。デイトナのバンクと速いスピードに耐えることはバイクの開発や進化にとって大事なことで、それをちゃんとコントロールできれば2週間後に南アフリカで開催されるWGPに対応できる、そういうガイドラインとしての意味合いもあったんだ」
異なるマシンの難しさを情熱でクリア。骨折してもレースに勝つ!
「500と比べ250は軽量なので、ブレーキングもコーナリングのラインも立ち上がりも違い、その差は大きなものがある。それをトップライダーたちに勝ち抜くために、ウォームアップとサイティングラップの限られた時間の中で“自分を調整する”のが重要な課題だった。
なにより昔のタイヤは今のように性能が良くなかったので、20ラップ最後まで良い状態では走れず、8ラップを超えるとコントロールが難しい。しかも2種類のバイクでコントロール、どう修正するのか理解しながらやるのは、本当に難しい。
それをダブルタイトルを狙いながら続けられたのは、やっぱりバイクに対してのパッション(情熱)。上手くいかないときもあるけれど、自分だけじゃなくて、僕を支えてくれるファンだったりチームだったり、みんなが求めるものを達成したいっていう強い気持ちで頑張れたんだと思います」
ちなみにスペンサーは第2戦へレスのウォームアップで転倒し、手と左足首を骨折してしまったが…。
「ゲストの本田宗一郎さんが“フレディがクラッシュしてケガしたみたいだけれど?”とインタビューされたら『あ、勝つよ』と。骨折しているのにね。僕は手が痛くて“今日はもうやめようかな…”って思っていたのに、これは出るしかないな、と。それで勝ったんだ(笑)」
「Hondaモーターサイクル ホームカミング熊本2025」で展示された世界GPの1985年シーズンを戦ったRS250R-W(左:ベルギーGP優勝車)とNSR500(右:フランスGP優勝車)。40年ぶりの対面にスペンサーも満面の笑顔!
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