
メグロやW1など昭和のバイクを愛するマニアたちが整備に行き詰まったとき、真っ先に名が挙がる名人がいる。戦前戦後の日本を駆け抜けた陸王についても深い造詣を持ち、いくつかの陸王をガレージに長年眠らせてきた。そしてついに今、1952年式のRO型が復活する。エンジンに火が入るのは、じつに40年ぶり。その瞬間に立ち会ったダブワン乗りたちは、歓喜せずにはいられなかった!
●文:青木タカオ
戦前から続く名門
ハーレーダビッドソン昭和の森(2022年に閉店)にて展示されていた陸王RQ型。
陸王というバイクをご存知だろうか。戦前から戦後にかけて製造販売され、軍や官公庁でも広く使われた。
1960(昭和35)年に歴史の幕を下ろし、いまやファンの間で伝説となっているが、第1号車は1935(昭和10)年、ハーレーダビッドソン社から製造権の許諾を受けた三共内燃機株式会社によって生み出された。
陸軍からの需要にも応え、社名はすぐに陸王内燃機株式会社に改められる。エンジンは当時のハーレーがそうだったように、サイドバルブのV型2気筒で、1200ccのVF系と750ccのR系の2本立て。まさに“和製ハーレー”と呼ぶにふさわしいものだった。
そして、戦後の混乱期から復活を遂げるべく、1950(昭和25)年には陸王モーターサイクル株式会社が設立された。
写真は1954(昭和29)年のRQ型。2022年に惜しまれつつも閉店したハーレーダビッドソン昭和の森(東京都昭島市)にて展示されていたものだ。
ハーレーダビッドソン昭和の森は、その名の通りハーレーの正規ディーラーであった。では、なぜそのショールームに陸王が展示されていたのか!?
理由は、経営母体が昭和飛行機工業であったからに他ならない。その歴史的なつながりは、奇跡的とも言えるものであり、店舗へ足を運ぶたびに見惚れてしまうばかりであったことを思い出す。
40年ぶりのエンジン始動に立ち会った
秘蔵の陸王RO型がついによみがえる。
もう陸王は見れないのか。いいや、そんなことはなかった。貴重な陸王が、長い眠りからついに目覚めたのだ!
週末になると、昭和のバイクを愛するマニアたちが集うモリヒデオート(埼玉県八潮市)では、秘蔵のRO型(1952年型)の整備が進んでいる真っ最中だった。
モリヒデオート代表の森 誠さんは、メグロやカワサキW1シリーズをはじめとする昭和のバイクオーナーたちにとって、長きに渡って頼りにされ続けている。
日常的なメンテナンスから重整備に至るまで、的確なアドバイスと確かな技術で知られ、名人として崇められるほど、多くの旧車乗りたちが慕う。
陸王についても造詣が深く、最終型となるRT-2型(1958年)も所有するほか、入手困難な部品や整備に対する知識と経験を持ち合わせている。
陸王RO型の心臓部は、サイドバルブ方式のV型2気筒エンジン。
聞けば、エンジンをかけるのはなんと40年ぶりとのこと。キャブに燃料を送り込んでから空キックを数発。電源を入れてから、いよいよキックペダルを踏み下ろすといった始動の儀式を経て、陸王の750ccサイドバルブV型2気筒エンジンが元気よく息を吹き返した!!
驚きを隠せないのは、ストップスイッチなど当時(つまり70年以上前!?)の純正部品が未使用のまま保管され、それを組み込んでいることだ。
これまで数々の陸王を整備してきた森さんだが、「走っている車両で、このストップスイッチが使われているのは一度も見たことがない」と言う。
性能に優れているとは言えず、現代のものに交換した方が無難だが、こうした見えないところにもこだわるのが、モリヒデオートの流儀なのかもしれない。
当時の純正部品がそのまま残るモリヒデオートの陸王。
W2SS仕様にした美しいダブワンたち
ショート管を備えるW2SS仕様としたカワサキW1S。
陸王復活の瞬間を見守るのは、カワサキWオーナーたちだった。この日、特に際立つ車両に乗っていたのは、W1S(1968〜70年)をご兄弟でそれぞれ所有し、北米輸出仕様のW2SSスタイルに仕上げている光又大介さん&豊さんだ。
お兄さんの大介さんは車体色を赤に、弟は黒にして、それぞれでコーディネイトしているから目をひく。注目はマフラーで、1台をショート管にして微妙に異なるバーチカルツインの音色を響かせている。
北米輸出仕様W2SSスタイルにしたW1S。
動画はコチラ
40年ぶりに目覚めた陸王RO型、そしてW2SS北米仕様ショート管にしたダブワンサウンドは動画にて収めることができた。また、650RS W3のオーナー橋本隆司さんには、LEDヘッドライト化に伴う配線の裏ワザを教わった。ぜひ、ご覧いただきたい!!
貴重な陸王RO型のエンジン始動、そしてW1Sたちのバーチカルツインサウンドも収録!
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