
外国車の輸入販売で知られるウイングフット(東京都足立区)が国内導入を決定し、今夏には販売が本格始動した英国由来のブランドBSA。復活を遂げたBSAの初号機「ゴールドスター」に試乗した。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:楠堂亜希 ●外部リンク:ウイングフット, BSA(日本語サイト)
オーバー500cc・ビッグシングルの力強さ
世界最古クラスの英国ブランド、BSAが再び日本に上陸した。
歴史的ビッグネームの「ゴールドスター」は1938年から1963年まで製造された、BSAの代名詞のようなシングルスポーツだ。当時は世界最速の1台として知られ、350ccまたは500ccの単気筒4ストロークエンジンを搭載。今も名車として多くのユーザーに愛され続けている。
1973年に倒産したBSAはその後、インドのマヒンドラ社にブランドを買い取られ、2016年設立の子会社クラシックレジェンズ社によって運営されている。
2021年に世界初公開された新生ゴールドスターは、復活したBSAの最初の量産モデルだ。エンジンはロータックス設計を基にした水冷DOHC単気筒で、英国で設計されたスチール製フレームに搭載される。
各部のディテールは、良くも悪くも普通。“インド生産だから”という一昔前のようなクオリティの不安はなく、かといって高品質というほどでもない。英国スタッフが手掛けたというデザインはよくまとまっていると思う。
この単気筒エンジンこそが最新ゴールドスターの特徴を決定づけていると言っていいだろう。現行モデルとして販売されるクラシック系カテゴリーとしては唯一の“500cc超”のビッグシングル、つまり大排気量の単気筒エンジンを搭載したマシンなのだ。
空冷エンジン並みにシリンダーフィンが刻まれた水冷シングルはセル一発で簡単に目覚め、冷えているうちはやや高めの回転を保ちながら単気筒らしく規則正しい「トトトトッ」というハスキートーンでアイドリングする。排気音そのものは静かなほうで、バランサーの搭載により振動は丸みのあるものに抑えられている。
2024年夏に試験導入された新車時に比べると、慣らしが進んでいるためか振動はよりマイルドになったように感じられた。
最新のアシスト&スリッパークラッチなどは装備しておらず、クラッチレバーは軽いというほどではないが、疲れるほど重いということもない。1速に落とすときのショックは少なめで、シフトタッチも悪くない。
エンジンが暖まるとアイドリングは1400rpmあたりで落ち着き、スロットル操作をしないままクラッチをつないでもスルスルと発進できるほどのトルクがある。スロットルレスポンスは鋭敏すぎることもなく穏やかだが、開けるにしたがってモリモリとトルクが増していく。
低中回転域の力強さは652ccという排気量ならでは。現行モデルのレトロカテゴリーは350ccクラスのものが多いが、2倍近い排気量があると力量感や余裕がまったく違う。2000rpmくらいからはスロットルをラフに扱ってもギクシャクせず、3000rpmも回せば街中のほとんどの場面を問題なくこなせるだろう。
3500rpmを過ぎたあたりからやや振動が増え始め、4000rpm超からはそれなりの迫力で加速する。針が上から下に回り込む特徴的なタコメーターの数字は1万rpmまで書かれているが、実際は7000rpmくらいで頭打ちに。とはいえ、ワインディングで元気よく加速したいときでもそこまで回し切る必要性は感じなかった。
もっとも軽やかに感じるのは2500~3750rpmを使って走るとき。十分なトルクがありながら振動が少なく、スロットル操作への追従性も良好な回転域だ。
まろやかなエンジン特性はクルージングも心地よく、ワインディングロードなどでも中間域を使いながらスロットルの開閉でトルクを自在に取り出すような走りが気持ちいい。高回転域でドラマチックにパワーが増していくタイプでもないので、積極的に使いたくなるのは4000~5000rpmまでといったところだ。
スーパーモト系などに搭載されるスポーツシングルのような鋭さやダイレクト感とは異なる、気ままに大トルクを扱えるまろやかな特性が街乗りやツーリングでの疲労軽減に貢献し、毎日気楽に乗り出せるキャラクターを作り上げている。
安定感ベースの扱いやすい車体
装備重量は213kgあり、サイドスタンドから起こすときや停止状態から押し歩く際には(単気筒マシンとしては)やや手ごたえがある。それでも、どこかに不自然なチカラが入ることのない自然なライディングポジションもあって、走りだせば重量は気にならなくなる。
ライディングポジションは旧車の雰囲気に準じたアップライトなもので、上半身は直立に近い。丸みのある燃料タンクはニーグリップがしやすい。シート高780mmは低めの数値だが、座面が左右にやや広いので小柄な方は購入前に要チェックだ。【身長183cm】
以前、ほぼ新車の状態で街中を試乗したときはリヤサスペンションの動きがあまりよくなく、シートも硬めな印象だったが、時間が経って慣らしが進んだゴールドスターはけっこう印象が変わっていた。
リヤサスペンションは高級感がある……とまでは言えないが動きがよくなり、前後ともに動きすぎる傾向はあるものの全体のバランスが向上。乗り心地はだいぶよくなった。この変化には、新車時よりもシートクッションが適切につぶれるようになったのと、タイヤの慣らしが済んでシャープな硬質さがなくなってきたことも貢献していると思う。それぞれのパーツの調和がとれてきた印象で、何も気にせず扱うことができる。
ワインディングロードに持ち込むと、リヤタイヤを中心としたおおらかなハンドリングが楽しめた。
前後バランスとしてはリヤ車高が低めで、フロントブレーキで旋回性をどうこうというよりも(制動力とコントロール性は良好だが)、シート荷重でヒラリと寝かすのが合うキャラクターだ。ここでもシャープさとは無縁で、軽い寝かしこみと安定感のある旋回性をベースに、中速トルクを使って気持ちよくコーナーからの脱出加速を楽しめる。カーブの途中での修正も容易だ。
ハングオフで頑張るよりも、シートにドカッと体重を預けてヒラヒラ感を楽しむのが吉。
サスペンションがよく動くこともあって『急』のつく操作には気を付けたいが、ワインディングロードでの快走が予想以上に楽しめるのは嬉しい誤算だった。
一方で、直進安定性がいいのでクルーザーのようなイメージで走らせることも可能。風圧の関係もあって高速道路を飛ばす気にはあまりならないが、ちょっとしたロングツーリングにも使えそうだ。
クラシカルなパッケージにビッグシングルという唯一無二の個性を持ち、街乗りやツーリングに加えてワインディングロードまで守備範囲は広い。カスタムベースとしても楽しめそうな新生ゴールドスターは、ニッチ好きが長く楽しめそうな1台に仕上がっていた。
外国車は日本車よりも慣らしでフィーリングが大きく変化する傾向があるので、オーナーになる予定の方は丁寧に時間をかけてエンジンやサスペンションの慣らしをするのがおすすめだ。
BSA GOLD STAR スペックとスタイリング
主要諸元■軸距1425mm シート高780mm 車重213kg(装備)■水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 652cc 45ps/6500rpm 5.61kg-m/4000rpm 変速機5段 燃料タンク容量12L(WMTCモード燃費24.99km/L)■タイヤサイズF=100/90-18 R=150/70R17 ●価格:シルバーシーン-レガシーエディション=135万3000円/インシグニアレッド、ドーンシルバー、ミッドナイトブラック=127万6000円/ハイランドグリーン=122万1000円
BSA GOLD STAR ※写真はハイランドグリーン
各部のディテール
BSA GOLD STAR
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