
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
カワサキZ1、伝説のディテール
デザインは後にGPZ900Rなども手がけた多田憲正氏によるもの。完璧なバランスのスタイリングだけでなく、ディテール面でも後世の車両に大きな影響を与えた。反り上がったテールカウルや砲弾型メーターはその好例だ。
【1973 KAWASAKI Z1】
斬新な砲弾型のメーター。Z1 (Z2は後述) の速度計は欧州仕様が240km/hスケールのキロ表示、北米仕様は160mph スケールのマイル表示で、回転計とともに日本電装(現デンソー) 製だ。キーは黒いストラップ(紛失している場合が多く、貴重品)が標準装備で、キーシリンダー上の穴に差し込んで使う。
ライダー/パッセンジャー間に段差のない、フラットな形状のシート。欧州仕様や日本仕様 (Z2) はシートベルトも装備する。右ヒンジで開閉し、シート下にはヘルメットフックのほか、テールカウル内には書類用のスペースも有している。
【Z1/Z2は「内プレス」】Z1とZ2で容量の発表値に差がある(前者18L、後者17L。計測法の違いによる誤差か?) 燃料タンク。溶接フランジを奥へ追い込んで目立たなくし、シルエットを際立たせた通称「内プレス(左写真参照)」タンクはZ1/Z2系の特徴。’76年のZ900 / Z750 フォア以降は外側にフランジを持つ燃料タンクが標準となる。
エンブレムは’74年式以降は全長が伸び、取り付けネジピッチも拡大。ちなみに’79年のZ1000MK II/Z750FX以降は、頭文字以外を小文字とした現行書体へ変更される。
ENGINE:初4サイクルゆえ与えられた過剰品質
メグロK1〜K2の流れを汲むW系を除けば、Z1はカワサキ初の市販4ストローク車。それだけにエンジンは性能だけでなく、耐久性や整備性も熟慮されている。その象徴がニードルベアリング支持の組み立て式クランクシャフト。
油膜支持のプレーンメタル式よりも異物の混入などに強く、コストを度外視して採用されたものだ (2スト3気筒のマッハ系で経験があり、大幅な設備投資が不要だったのも大きい)。カムシャフトへのクロモリ材の使用や排気量アップを見越した設計などは“過剰なほどの品質”と称され、格好のチューニングベース機としても人気を博した。
当時の最先端メカであるDOHCを採用。ロッカーアームを介さないバルブ直打式だ。Z1で黒塗りエンジンを採用するのは’73年式のみ。
【幅を考慮したスクエアストローク】メグロK2 やWでのトラブル経験から、Z1の開発ではクランクシャフトの構造に注意が払われた。903ccという排気量はエンジン開発者の稲村暁一氏がハーレーのスポーツスター(883cc) などを想起しつつ採用、エンジン全幅を抑えるためボア・ストロークは66×66mmのスクエアとしている。
【別体キャップでクランクを保持】クランクやミッション、クラッチを組んだクランクケースを下から見る。1次減速はギヤで、クランクウェブに切られた平歯車からクラッチハウジング外周の平歯車へ出力を伝達 (W系や CB750 はチェーン駆動)。がっちり とクランクセンターベアリングを保持する別体キャップ (矢印)も見どころ。
点火方式は定期調整を要するポイント式。Z1 系に非接点式のトランジスタ点火が採用されるのは’79年のZ1000Mk IIIから。
FRAME&CHASSIS:当時最良のフレーム「フェザーベッド」を踏襲
当時最良の操縦性を持つとされた英ノートンの「フェザーベッドフレーム」は、ステアリングヘッドからのパイプがエンジンを取り囲み、再びステアリングヘッドへ戻る形態。Z1/Z2のフレームはこれに補強を加えたものと言える。
ホイールベースは1490mmとCB750フォア (KO) より35mm長く、キャスター/トレールはCBの27度/95mmに対し26度/90mmという設定。ちなみにシリンダーは車上分解が可能だ。
Z1/Z2はフェザーヘッドフレームにステアリングヘッドからキャブ付近へ下りるパイプなどに補強を加えたものとなっている。
フロントのマスターシリンダーは、北米向けが金属製、欧州向けが樹脂製のタンクを装備。新車時のビニールコートが残るレバーは希少。
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