
BMWモトラッドは3月27日、1170cc空油冷水平対向2気筒エンジンを搭載するR12シリーズをベースとした『R12G/S(アール トゥエルブ ジー スラッシュ エス)』を発表した。現在のところ日本への導入時期や車両価格は未定だ。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●外部リンク:BMWモトラッド
往年の名車をオマージュしたヘリテイジにアドベンチャーバイクの原点が登場!
BMWは、1170cc空油冷水平対向2気筒エンジンを搭載するヘリテイジシリーズに、『R 12 G/S』を投入する。BMWのホームページではヘリテイジシリーズに分類されているが、車名やスペックを見てわかるとおり、R1300GSを筆頭とするGSシリーズにも入るであろうデュアルパーパスに仕上がっており、BMWも「本格的なエンデューロバイク」としている。
ではさっそく、R12G/Sの特徴をみていこう。
- クラシカルエンデューロに基づいたデザイン
- エンジンとフレームはR12と共通
- ストローク量を増加したサスペンションを装備
- ホイール径はフロント21インチ、リヤ17インチ
※オプションでリヤ18インチを選択可
外装デザインのモデルは1980年発売の『R80G/S』で、世界中から不動の支持を誇るGSシリーズの初代モデルというだけでなく、デュアルパーパスバイク(アドベンチャーバイク)の源流ともいわれる名車だ。BMWはR80G/Sをベースとしたラリーマシンで、80年代のパリ=ダカールラリーにおいて4度の優勝を果たしている。
R12G/Sの車体色のうち、ライトホワイト(白×赤×青)はとくにR80G/Sを忠実に再現したカラーリングとなっている。
エンジンとフレームはR12シリーズに共通する、1170cc空油冷水平対向2気筒と、エンジンを強度メンバーとするスチール製チューブラーフレームだ。伝統のボクサーエンジンの最高出力は109psで、オンロードでもオフロードでも十分以上のパフォーマンスを持つ。
フレームは本格的なオフロード走行を可能とするため改良され、とくにヘッドパイプの再設計によってキャスター角は26.9度、ハンドル切れ角は左右42度を確保した。
ライディングモードは『レイン』、『ロード』、『エンデューロ』の3種があり、コーナリング対応ABSとダイナミックトラクションコントロール(DTC)に加えて、急激なシフトダウンなどの際にリヤタイヤのスピンを防ぐエンジンドラッグトルクコントロール(MSR)も備える。DTCは完全なオフにすることも可能だ。
このほかの電子制御デバイスも多岐にわたっており、オプションのプレミアムパッケージには、クルーズコントロール、クイックシフター、アダプティブヘッドライト、ヒルスタートコントロール、グリップヒーターなどが装備される(※日本仕様のパッケージ内容は未定)。
オフロード性能の確保に欠かせない足まわりとして、前後サスペンションは大幅に強化されている。フロントフォークはマルゾッキ製45mm倒立フルアジャスタブル、リヤのモノショックもフルアジャスタブルを装着する。ストローク量はフロント200mm、リヤ210mmとハードなオフロード走行にも十分な性能を持っている。
ホイール径はフロント21インチ、リヤ17インチで、チューブタイヤの装着も可能なクロススポークを採用する。これらにより最低地上高は240mmを確保し、凹凸の激しい不整地でも底づきすることなく走破できる足まわりを作り上げている。
往年のパリ・ダカールラリーに思いを馳せずにはいられない!
R12G/Sにはオプションとして『エンデューロパッケージプロ』が用意される。18インチ径リヤホイール、ワイドステップ、20mmアップとなるハンドルライザー、ライディングモード『エンデューロプロ』の追加など、オフロード走破性を高める内容だ。リヤホイールの大径化によってシート高は15mmアップの875mmとなるものの、エンデューロプロモードはオフロードをさらにアグレッシブかつダイナミックに走れる電子制御セッティングとなる。
車体色は往年のR80G/Sをイメージしたライトホワイト(白×赤×青)、ナイトブラックマット(つや消し黒)、オプション719アラゴナイト(茶×赤×黒)の3色で、ベースグレードはナイトブラックマットとなる。
オフロード走破性を高めたR12シリーズがどのような性能、そしてGSシリーズにおけるポジショニングなのか、少しでもわかりやすくするため、R1300GSとF900GSと主要諸元を比較してみよう。
R 12 G/S | R 1300 GS | F 900 GS | |
エンジン型式 | 空油冷水平対向2気筒 | 水冷水平対向2気筒 | 水冷並列2気筒 |
排気量 | 1170cc | 1300cc | 894cc |
最高出力 | 109ps/7000rpm | 145ps/7750rpm | 105ps/8500rpm |
最大トルク | 11.7kg-m/6500rpm | 15.2kg-m/6500rpm | 9.5kg-m/6750rpm |
ホイール径 | F21:R17(R18) | F19:R17 | F21:R17 |
全長/全幅(mm) | 2200/830 | 2210/1000 | 2270/945 |
ホイールベース | 1580(1585)mm | 1520mm | 1600mm |
ホイールトラベル | F210mm:R200mm | F190mm:R200mm | F230mm:R215mm |
シート高 | 860(875)mm | 850mm | 870mm |
車重(※) | 229kg | 237kg | 219kg |
R12G/Sの日本仕様が未定のため、車重は欧州仕様に揃えた。F900GSのエンジン型式は異なるものの、R12G/SはR1300GSとF900GSの中間に位置する性能を有するといえそうだ。
空油冷ボクサーエンジンを搭載する本格的なオフロードモデルは、’05年発売の『HP2 Enduro』以来となるが、R12G/Sはそれよりも間口が広く、ツーリングをしっかりと視野に入れたバイクだ。テレスコピック式フロントフォークの採用や電子制御デバイスはシンプルながら、R1300GSよりも軽いオフロードボクサーは魅力的で、強い存在感を放つ。
BMW Motorrad R 12 G/S
主要諸元■全長2200 全幅830 全高─ 軸距1580[1585] シート高860[875](各mm) 車重229kg■空油冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ 1170cc 109ps/7000rpm 11.7kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量15.5L■タイヤサイズF=90/90-21 R=150/70R17[150/70R18] ●色:つや消し黒、白、茶×赤×黒 ●価格:未定 ●国内発売日:未定 ※主要諸元は欧州仕様 ※[ ]内はエンデューロパッケージプロ
BMW Motorrad R 12 G/S[Light white]
BMW Motorrad R 12 G/S[Option 719 Aragonite]エンデューロパッケージプロ
BMW Motorrad R 12 G/S[Night Black matt]
本気モードのスモールGSが東京MCショーに!
もうひとつ、3月28日~30日に開催された東京モーターサイクルショーでは、昨年のミラノショーで初公開されたコンセプトモデル『F450GS』が展示された。F450GSはヨーロッパのA2ライセンスに適合するもので、G310GSとF800/900GSの中間を埋めるブランニューGSだ。
搭載するエンジンは新開発の水冷並列2気筒で、最高出力は47.6psを発生。低回転域から優れたトルクを発生するこのエンジンは、回転上昇の速さを特徴としている。エンジンの軽量化も徹底して追求し、マグネシウムなどの軽い素材を採用することで小型化も同時に図っている。
A2ライセンスモデルらしい軽快感を実現するべく、およそ175kgの車重を目標としており、「このセグメントで最高のハンドリングと強力なパフォーマンス、アクセシビリティを組み合わせることが、開発の重要目標だ。そのための軽量化も妥協しない」と開発陣はコメントしている。
装着されるホイール(フロント19インチ、リヤ17インチ)はクロススポークではなく、より軽量なアルミキャストになる可能性もあるというが、フルアジャスタブルの倒立フォーク、R1300GSと同じデザインのX字状ヘッドライト、コーナリング対応ABS、6.5インチフルカラー液晶メーター(スマートフォン接続可能)なども備え、BMWならではのクラスを超越した走行性能と装備群を有すると予測される。
どちらのGSも、GSシリーズの死角をなくすニューキャラクターだけに、GSファンのみならず多くの注目が集まることだろう。R12G/Sの国内導入時期や車両価格、F450GSの市販版の情報を期待して待とう!
Concept F 450 GS
Concept F 450 GS
Concept F 450 GS
Concept F 450 GS
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