
「警察官がひとりしか乗っていないパトカーは、違反車両を追ったり、検挙したりしない」という噂を耳にしたことはないだろうか。じつはこれ、ちゃんとした根拠がある話なのだ。現役時代の経験談を交えて、元白バイ警官の宅島奈津子さんが解説する。
●文:ヤングマシン編集部(宅島奈津子)
ほとんど見かけなくなったひとり乗車
みなさんがふだん、目にするパトカーには必ずと言っていいほど、二人以上の警察官が乗務しているのではないでしょうか。ただし、駐在所に属している警察官は基本的にはひとり乗務であり、交番や警察署等に属するパトカーには二人以上で乗車することになっています。これは、交番と駐在所の違いに起因しています。
交番はおもに都市部に所在し、地域警察官が交替制で勤務しています。駐在所には、原則としてひとりの警察官が自分の家族とともに居住し、地域住民の安全を守る活動を行っています。そのため、駐在員は単独でパトカーに乗車していることが多いのです。
二人以上で乗車は事故防止と安全性の確保のため
なぜ二名乗車なのかというと、受傷事故防止が大きな理由のひとつです。加えて、緊急走行する際、運転手とは別に、安全確認のために、拡声器の使用や無線機の通信を行う警察官が必要となります。また、違反者検挙の際には、証人としての役割を果たすことだってあります。
「パトカーに二人以上の警察官が乗っているなんて、人件費の無駄遣いではないのか」、といった市民の声も実際にはあがっていますが、こうした事情を配慮していただければと思います。
ひとり乗車の場合でも検挙することはある
「パトカーに警察官がひとりしか乗っていないのなら、検挙されることはない」という噂も、前述した証拠能力に関する事実が元でしょう。ですが、噂を真に受けてしまうのはちょっと危険。実際には、警察官がひとりであっても検挙することはあります。なかには映像を残している警察官だっていますから。
そもそも現行犯や準現行犯の場合は明らかな現認があるので、いわゆる物的証拠は必要ないのですが、問題になってくるのは、交通違反者に否認された場合。裁判を行うことになります。
その際に、現認した警察官が複数であれば信憑性が高くなるわけですが、ひとりだけの場合、見間違いや勘違い等についても審議されることになるので、基本的には複数の警察官で取締りをはじめ、あらゆる警察活動を行うようにと言われているというのも実態です。
規定に違反しても手配車両を追いかけた私の体験談
あまり大きい声では言えないのですが、私が現役時代、やってしまったことをお話しようと思います。それは、交番勤務をしていたときのこと。基本的に二人以上で勤務するので、その当時の私は先輩と組んでいました。
24時間体制なため、日中に仮眠をすることもあります。午後3時頃だったと思うのですが、110番通報が無線で流れてきました。手配車両をNシステムが検知したという、急を要する内容だったため、寝ている先輩を起こしている余裕なんてない、と思い交番をひとりで飛び出しました。
立ち上がりが早かったため、該当車両を現認することができました。ひとりなので、追跡しつつ、無線で応援パトカーを要請。かけつけたところで、車両を停止させました。 私は、車両を発見できたことが嬉しかったし、誇らしかったのですが、当然のごとく怒られました。
言われたことは理解できたけど、まだ若かった私は、「私のおかげで車両発見できたんやろ」って気持ちが強かったのを、いまでもよく覚えています。20年以上前のことなので、記憶もおぼろげですが、二度とやらないという約束をして、許してもらったような。他にも生意気でやんちゃな行いが多々ありましたが、ここでは伏せておきます(笑)。
現在はひとり乗りがほとんど許されていない
上記の通り、パトカー乗務は基本的に複数で行われます。例外として、駐在所に勤務する警官の話をしましたが、それに加えて、交番勤務の際に、警察署に忘れ物をとりに行ったり、取り扱った事案で急を要するような場合の書類の提出や、応援派遣で他の交番に行くときなども、ひとりでパトカーに乗ることはありました。
しかし2025年現在は、「ひとりで乗ることを認めない」といった風潮が以前よりも警察全体で強くなっているようです。海外ではとくに、ひとりの警官を狙った犯罪行為が見受けられますから。警察官とはいえ、自らの安全性を確保すべきだという傾向にあるのでしょう。
平和な世界を望みたいところですが、自分の身は自分で守らなければならない世の中です。警察官に限らず、みなさんも夜間はとくに、単独行動を避けてくださいね。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
7月上旬発売:ヒョースン「GV125Xロードスター」 ヒョースンモーター・ジャパンから、原付二種クラスに新型クルーザー「GV125Xロードスター」が投入される。発売は2025年7月上旬から日本国内向け[…]
モリワキイズムを変えずに継承していく モリワキの面白さは、ライダーが主役のもの作りだと思っています。サーキットを速く走るにはどうしたらいいのか、ライダーの意見を聞いて解決策をプロダクトとライダーの両方[…]
【モリワキエンジニアリング取締役名誉会長・森脇護氏】1944年、高知県生まれ。愛車だったホンダCB72のチューニングをヨシムラに依頼し、それをきっかけにPOPこと吉村秀雄氏に師事し、チューニングを学ぶ[…]
北海道という「ハードルの高さ」 ライダーにとってのひとつのあこがれ、北海道ツーリング。しかしフェリーの予約が面倒だったり、北海道までの移動で疲れてしまったり。 そういったライダーの悩みを解決し、「手ぶ[…]
カワサキ「エリミネーター」2026年モデルへ!! カワサキが人気ミドルクルーザー「エリミネーター」シリーズの2026年モデルを発表。2025年7月15日に発売予定だ。主要諸元に変更はなく、カラーリング[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
規制の根拠は「道路法・第46条第3項」 高速道路などを走っていると、時折インターチェンジの手前などで「危険物積載車両ここで出よ」という表示を目にすることがある。この表示を見かけた場合、その先に危険物積[…]
地域活性化ツーリングを開催、移動課題改善への提言も 2024年9月29日に開催された地域活性化・ライダー誘致イベント“伊豆ライダー誘致ツーリング”。 主催は若年層を中心に構成。バイクやクルマ、特定原付[…]
バイク駐車場の拡充に取り組む千葉市 千葉市内には6区で50の鉄道駅がある。中でも千葉駅は千葉県の中心駅として、JR東日本の在来線6線と京成電鉄、さらに千葉都市モノレールが乗り入れている。 都心や成田空[…]
「危険なら道路を改善しないの?」との疑問を感じるが…… 市中の道路を走っていると「事故多発交差点」と書いた立て看板を見かけることがあります。 その交差点で交通事故が多発しているので気を付けて運転してほ[…]
情熱は昔も今も変わらず 「土日ともなると、ヘルメットとその周辺パーツだけで1日の売り上げが200万円、それに加えて革ツナギやグローブ、ブーツなどの用品関係だけで1日に500万円とか600万円とかの売り[…]
人気記事ランキング(全体)
カバーじゃない! 鉄製12Lタンクを搭載 おぉっ! モンキー125をベースにした「ゴリラ125」って多くのユーザーが欲しがってたヤツじゃん! タイの特派員より送られてきた画像には、まごうことなきゴリラ[…]
エンジン積み替えで規制対応!? なら水冷縦型しかないっ! 2023年末にタイで、続く年明け以降にはベトナムやフィリピンでも発表された、ヤマハの新型モデル「PG-1」。日本にも一部で並行輸入されたりした[…]
スズキが鈴鹿8時間耐久ロードレースの参戦体制を発表! スズキは2025年8月1日(金)から3日(日)に鈴鹿サーキットで開催される「2025 FIM 世界耐久選手権 鈴鹿8 時間耐久ロードレース」に「チ[…]
高評価の2気筒エンジンや電子制御はそのままにスタイリングを大胆チェンジ! スズキは、新世代ネオクラシックモデル「GSX-8T」および「GSX-8TT」を発表。2025年夏頃より、欧州、北米を中心に世界[…]
なぜ「モンキーレンチ」って呼ぶのでしょうか? そういえば、筆者が幼いころに一番最初の覚えた工具の名前でもあります。最初は「なんでモンキーっていうの?」って親に聞いたけども「昔から決まっていることなんだ[…]
最新の投稿記事(全体)
7月上旬発売:ヒョースン「GV125Xロードスター」 ヒョースンモーター・ジャパンから、原付二種クラスに新型クルーザー「GV125Xロードスター」が投入される。発売は2025年7月上旬から日本国内向け[…]
モリワキイズムを変えずに継承していく モリワキの面白さは、ライダーが主役のもの作りだと思っています。サーキットを速く走るにはどうしたらいいのか、ライダーの意見を聞いて解決策をプロダクトとライダーの両方[…]
青春名車録「元祖中型限定」(昭和51年) CB400FOUR(CB400フォア)は、CB350フォアをベースとしたリニューアルバージョンとして1974年12月(昭和49年)に発売。クラス唯一のSOHC[…]
【モリワキエンジニアリング取締役名誉会長・森脇護氏】1944年、高知県生まれ。愛車だったホンダCB72のチューニングをヨシムラに依頼し、それをきっかけにPOPこと吉村秀雄氏に師事し、チューニングを学ぶ[…]
北海道という「ハードルの高さ」 ライダーにとってのひとつのあこがれ、北海道ツーリング。しかしフェリーの予約が面倒だったり、北海道までの移動で疲れてしまったり。 そういったライダーの悩みを解決し、「手ぶ[…]
- 1
- 2