
前編に引き続き、国土交通省により開催された「市街地における自動二輪車等の駐車スペース確保に係る関係省庁連絡会議」について紹介する。後編では3月に開催された第3回連絡会議から、駐車問題の本丸とされる東京都の特別区(23区)、業界団体、地方公共団体との意見交換結果に加え、今後の取り組み内容とその進め方について取り上げつつ考察する。
●文:田中淳麿
1. 連絡会議のまとめ【第3回 2026年3月24日】
東京都千代田区霞が関に建つ、国土交通省が入居する中央合同庁舎第3号館
2025年5月から始まった「市街地における自動二輪車等の駐車スペース確保に係る関係省庁連絡会議」(以降、連絡会議)も2026年3月で3回目の開催となった。バイクの駐車場・スペースの確保に向けて省庁横断で取り組まれている会議の内容に迫る。
●まとめ
ワーキンググループが二輪業界団体らへのヒアリング、東京都特別区(23区)への意見交換を行った。
業界団体からは地方公共団体とユーザーの現状認識、これまでの要請内容と結果および実施した取り組みなどについて情報共有を受けた。
東京都特別区とは現状認識とバイク駐車場確保のための取り組み、附置義務条例制定の可能性などが話された。
今後の進め方については、連絡会議を次年度以降も継続し意見交換の範囲拡大、データの整理、水平展開のための参考事例集整理の方針が共有された。
●主な出席者
国土交通省都市局街路交通施設課・道路局、警察庁交通局交通企画課、経済産業省製造産業局自動車課
●主な議事
- 第4回ワーキングでの二輪業界団体を対象としたヒアリング結果の説明
- 都内中心部の自治体である東京都特別区との意見交換結果の説明
- 来年度以降を含む、今後の対応等について
次の章からは上記内容について、提出資料と筆者の考察も交えながら詳しく見ていく。
2. 第3回連絡会議の概要と特記および考察
二輪業界の各団体はヒアリングの中でそれぞれの取り組みについて説明し情報を共有した。
※都市局提出資料「第3回市街地における自動二輪車等の駐車スペース確保に係る関係省庁連絡会議 説明資料」6Pより引用。黄色マーカー部は筆者によるもの
●関係省庁合同でのヒアリング概要
第2回連絡会議で共有された、二輪業界団体(6/4実施)、駐車場事業関係団体(10/9実施)、地方公共団体(11/12実施)へのヒアリング結果に続いて、関係省庁が合同で二輪業界団体との2回目のヒアリング(1/7)を実施した。
ヒアリングの対象となったのは、日本自動車工業会(自工会)、日本二輪車普及安全協会(日本二普協)、全国オートバイ協同組合連合会(AJ)の3団体。
3団体それぞれに対して以下3つの事項についてヒアリングが行われた。
①自動二輪車駐車場が不足している地方公共団体(地域)
②これまで実施した地方公共団体への要請内容と結果
③地方公共団体と連携して実施した取り組み、今後実施していきたい取り組み
「主な意見」とされた中では、①に関してはAJが、東京・神奈川・大阪など二輪車保有比率の高い都市部で「バイク駐車場もクルマと同じ水準での整備が必要」とした。
また②では、日本二普協が「全国バイク駐車場・駐輪場案内」ページに設置している駐車場リクエスト「バイク駐車場、ここにつくって!要望フォーム」で集めている要望情報の活用も要請している。
日本二普協の駐車場案内ページからジャンプできる「バイク駐車場、ここにつくって! 要望フォーム」。長年継続されており地方公共団体らにとってもユーザーニーズの目安となるデータだ。
※日本二普協公式サイトより引用
筆者は、バイク駐車問題を改善するためにはマッチングサイトの構築と活用が最も効果的かつ効率的だと考えている。日本二普協以上にバイク駐車場・駐輪場情報を集められている組織はないと考える。実効的な施策として「ここにつくって!」集計情報の分析と活用に期待したい。
なお、AJは「その他意見等」において、海外事例を参考に歩道上のデッドスペースや街路樹周辺を活用した駐輪スペースの設置、補助標識による路上駐車の許可など、柔軟な運用を要望している。
人とモビリティの移動空間、それらを包括する道路空間にバイクが置けるようなデッドスペースを見つけていく、そのスペースが活用可能かどうかを検討するような仕組みが欲しいところだ。
ビルと地下鉄駅の間のデッドスペースに白線を引いて駐輪場としている(東京都文京区)。都心部ではこうしたケースも少しずつ増えてきており、予約制駐車場として運用される場合も多い。
第1回連絡会議で道路局が示したように、歩道も含めた路上駐車場の活用に関しては道路法の制度上は整えられているが、実際に駐車場を設置するためには道路管理者(国・地方公共団体ら)、地域の警察、さらには民間委託事業者(駐車場事業者等)らとの連携が必要となる。
この場合は特に、地方公共団体ごとに関連する条例や規則などがさまざまで担当部署も異なるなど複雑だ。こうした路上駐車場の設置に特化した事例集(フレームワークやスキーム)なども欲しいところだ。
3. 駐車問題の本丸! 東京都特別区との意見交換
いずれの区も「客観的かつ具体的な不足箇所を把握可能な統計的根拠が不足している」という認識。日本二普協が集めている「ここにつくって!」集計データは届いていないのだろうか?
※都市局提出資料「第3回市街地における自動二輪車等の駐車スペース確保に係る関係省庁連絡会議 説明資料」9Pより引用。黄色マーカー部は筆者によるもの
2026年2~3月には、都市局が都内中心部に位置する4つの区を訪問し、自動二輪駐車対策に関する意見交換を行った。国交省はオートバイ議員連盟の場でも東京都の地方公共団体に対して“個別ひざ詰め”で取り組みたいと発言していたが、まさにそれを実践したことになる。
なお“個別ひざ詰め”とまで表現した理由は、東京都では自動二輪車駐車施設に関する附置義務条例を制定した区市町村がひとつもないためだ。
意見交換のテーマは以下の3点となっている。
①自動二輪車駐車需要に関する各区の現状認識
②自動二輪駐車環境確保ための現行の取り組み
③区・市による附置義務条例制定の可能性について
東京都特別区(23区)のうち意見交換に参加した4区の名称は明かされていないが、結果を見ると、区によって不足の認識や取り組みは様々のようだ。
A区では区営駐輪場への新基準原付の受け入れも行われ、自走式駐車場であれば四輪駐車場の自動二輪への転用も示唆されている。
ゲートバーのない自走式駐車場ならば四輪スペースを二輪用に転用しやすい。近年はゲートバーに加えて車止めやロック板などの設備もいらない「ナンバー認識有料駐車場」も増えてきたが、これならさらに転用しやすいだろう。写真は都内コンビニのもので精算機は赤色枠内に設置されている。
B区では、附置義務条例の制定を検討したものの、そのデメリットを考慮して地域ルールによって確保したほうがよいと判断している。
C区は、自動二輪駐車場の整備を優先事項として規定。D区は用地確保が困難とのことで、公開空地への駐車なら検討できるかもしれないとコメントしている。
公開空地とは、ビルやマンションなどの私有地内に設けられた関係者以外でも通行・利用できるオープンスペースのこと。私有地の一部を公共に提供することで容積率上限アップなどのインセンティブが受けられる。
都内JR駅直結の大型ショッピングモールの公開空地につくられたバイク駐車場。多くのバイクユーザーは駅や商業施設の近くに駐めることを望んでいるのだから最も理想的な形だろう。
4. 事例集の作成へ! 今後の対応について
札幌市中心部の歩道を使って雪のない季節(4~11月)のみ定期契約利用が行われる自転車等駐車場(自転車・原付一種置き場)。札幌市は自転車・原付一種の冬期保管も行っている(有料)。このように駐輪・駐車事情は地域によって様々だ。
連絡会議は第3回で終わりではなく、次年度(2026年度)以降も継続的に開催する方針で合意された。また、今後の進め方については以下の内容が示されている。
①意見交換の対象を全国に拡大する
東京都特別区以外にも、政令指定都市などに範囲を広げながら継続的に個別意見交換を開催していく。
なお都市局は、個別ではないところでも全国の地方公共団体向けに「全国駐車場政策担当者会議」を継続開催している。この場でも自工会からの講演、ユーザーアンケート結果と自治体の調査結果、事例集についての共有・周知を図っている(2026年1月、第39回開催時)。
②根拠資料の整理を目指す意見交換を実施した地方公共団体の多くは「バイク駐車場の利用率は高くはなく、路上駐車(放置駐車)台数も限定的」という認識を持ち、施策強化の必要性を認識していない。
都内某区の繁華街に設置された歩道上の有料自転車置き場。収容台数を超えた無秩序な状態だ。地方公共団体には駅前や繁華街の放置自転車対応で手いっぱいというところも多い。
そのため二輪業界からの情報提供(ユーザーの認識や駐車施設の利用状況など)をもとに根拠となる資料を整理してポイントを絞ったうえで、地方公共団体との意見交換に望むことが求められている。
③参考事例集を整理する
地方公共団体の取り組みや工夫は、他の地域に水平展開していく際に参考になるため、施策の概要をまとめた事例集を作成して以降も充実を図っていく。
5. 【私感】連絡会議から一段上の「連絡協議会」設置を!
都内・銀座にある大規模劇場の公開空地に設けられたバイク駐車場。白線を斜めに引いてチェーンロックシステム・精算機を設置している。
筆者の考察も交えつつ、第3回連絡会議の内容を紹介した。すでに私見も述べているが、改めて重要な点だと気づかされたのは、既存の業界活動の整理、そして中央省庁との連携をスタートとしたスキーム再構築の必要性だ。
地方公共団体の認識の低さとバラつきは、これまでの業界活動についてある種の限界点を示したと共に、地域課題に対して水平的に関わることの難しさを示した。
今後求められるのは、現連絡会議を一段引き上げた「連絡協議会」の設置だろう。情報の共有を主とした連絡会議で留まることなく、関係機関や業界団体が利害の調整までを行い、共通ルールやガイドラインの策定、具体的な施策の協働を目指す。
国交省や警察庁といった関係省庁をはじめ、二輪業界団体、駐車場事業者団体(バイクを駐める)、不動産業界団体(バイクを保管する)らが集まり、ロードマップを策定して目標と期限を置いた取り組みを行う。ガソリン原付一種が生産を終了したいま、約1,000万台という保有台数の維持も遠からず難しくなる。一日も早く、整理と効率化の目途を立てることが、まずもって急ぐべきことだろう。
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