
今も絶大な人気を誇る名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はゼファーシリーズを主力とするバグース! の店長であり、その技術力の高さが高じて同シリーズの専門店「ソイルマジック」を創設するまでに至った土屋雅史氏にお話を伺った。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 YM ARCHIVES ●取材協力:バグース! モーターサイクル
ゼファーに特化してきた結果、ノーマル志向の別店舗立ち上げに至る
メンテナンスとカスタムを主軸とするバグース! とは異なり、土屋氏が新たに立ち上げたソイルマジックは、オリジナルのゼファーシリーズに特化した中古車専門店。世の中には特定の車種に力を入れるショップが数多く存在するけれど、別店舗を立ち上げるケースはめったにないと思う。土屋氏がソイルマジックを創設した背景には、どんな事情があったのだろうか。
「一番の理由は、近年になってウチに新規で入庫するゼファーの程度が、どんどん悪くなってきたことです。具体的な話をするなら、新規のお客さんが100万円で購入した車両を点検させてもらうと、整備に100万円かかりますよ、というケースが増えて来た。そういう状況を踏まえて、ゼファーシリーズに特化した活動をして来たウチが、本来の資質をきっちり味わえる車両を準備するべきじゃないか、と考えたわけです。そのために別店舗を立ち上げたのは、お客さんの趣向の違いを意識したからですね。ノーマルに乗ってみたい人が、カスタムゼファーが主力のバグース! を訪れたら、この店は違う…と感じるかもしれませんから」
ソイルマジックの取り扱い車種は走行距離が少ない極上車のみで、納車整備のメニューは、“そこまでやると儲けが発生しないのでは?”と言いたくなるほど多岐に及ぶ。なおコロナ禍における予防策として、’22年2月以降の同店は、電話かLINEによる完全予約制という姿勢で営業している。
「中古車はミズモノと言われることが多いですが、ソイルマジックで販売するゼファーにその言葉は当てはまりません。コンディションには絶対的な自信がありますから、ゼファーの購入を考えている方は、ぜひとも来店して欲しいですね」
「ゼファーはカスタムもノーマルも楽しい」
土屋さん自身は、ノーマルとカスタム、どちらを推奨しているのだろう。
「どちらもアリだと思いますよ。もっとも昔の僕は、ゼファーはいじってナンボと考えていたのですが、最近はノーマルに乗ると、これはこれでいいなあ…と思う機会が増えました。加齢と共に認識が変わりましたね(笑)」
ソイルマジックの納車整備メニューはとてつもなく充実しており、その内容を知ると、これからゼファーシリーズを購入するのであれば、この店以外の選択肢はない…ような気がして来る。
「そう言ってもらえると非常に嬉しいですが、最近になって中古車の仕入れ価格が急激に上がって来たので、納車整備メニューは改訂を考えています。ソイルマジックを始めた当初の僕は、750と1100の販売価格は200万円を上限と考えていたのですが、現状の納車整備を行っていると、なかなかその範囲には収まらないので。と言っても、程度を落とすつもりはないですよ。例えば、これまでは仕入れ時の程度に関わらず、ステムベアリングやバッテリーの交換、前後ショックとブレーキのOHなどを行っていたのですが、点検で問題がなかったら、一部の分解組み立て作業は省略しようかと。このあたりはお客さんと相談しながら、今後の方針を決定するつもりです」
大型2輪免許を所有するライダーがゼファーを購入する場合、悩みの種になるのは、750と1100のどちらを選ぶか。お客さんから相談された場合、土屋さんは何と答えるのだろう。
「車重に約40kgの差がありますから、体格が小柄で、街乗りで使うことが多い人には、750を薦めることが多いですが、絶対ではないです。逆にフラッグシップの迫力を求める人や、高速道路を頻繁に使う人なら、1100のほうがいいでしょう。もっとも、購入後の楽しみ方に大きな差はなく、カスタムパーツはどちらも豊富ですが、あえて言うなら維持費に関しては、オイル容量が約1L多く、スパークプラグが8本の1100のほうが高いです。いずれにしても、ゼファーシリーズに関することなら、ウチにはいろいろなノウハウがありますから、どんなことでも気軽に相談して欲しいですね」

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