
今も絶大な人気を誇る名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回は、ゼファーシリーズ旗艦モデル「カワサキ ゼファー1100」について、メンテナンス上のポイントを明らかにする。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●写真:富樫秀明 YM ARCHIVES ●取材協力:バグース! モーターサイクル
細かな問題はあるものの、基本的にはかなり丈夫
エンジンも車体も電装系も、基本的には丈夫と言われているゼファー1100。ただしユーザーの間では、ヘッドガスケットからのオイル漏れ/2速ギヤの抜け/点火不良/エンジンの発熱量の多さなどが、問題点として話題になることが多いようだ。これらに関して、土屋さんの見解を聞いてみたい。
「まずヘッドガスケットは、構造的に抜けやすいのは事実ですが、ヘッドカバーかシリンダーヘッドが歪んでいるケースもあります。2速ギヤの抜けは初期型の問題で、対策が施された後期型ではめったに起こりません。点火不良については、パルシングコイル付近への水分の侵入や、速度計かイグナイターを輸出仕様に変更したことが、ネックになっているケースが少なくないですね。発熱量は確かに多いですが、オイルポンプが正常に機能して、良質なオイルを使っていれば、オーバーヒートに至ることはないと思いますよ」
なお一昔前のゼファーの中古車は、エンジンは点検だけでOKという個体が多かったものの、最近は分解整備がごく普通になりつつあるようだ。
「どこまで手を入れるかは状況次第ですが、シリンダーヘッドのバルブガイドはかなりの確率でガタが出ています。また、工具が入れにくい中央2本のプラグホールの雌ネジがナメていることは珍しくないですし、最近になって新規で整備依頼を受けた中古車の中には、転倒が原因でクランクケース右側に入ったクラックを、アルミパテで補修している車両が何台かありました」
カワサキ ゼファー1100 メンテナンスポイント
シリンダーヘッド:吸排気バルブのガタとガスケットの劣化
シリンダーヘッドは、全体の歪みや吸排気バルブガイドのガタが発生している個体が多い。ラバー製ガスケットは、“カエシ”が存在しない端部が抜けやすい。なおカムシャフトを交換する場合、同店ではヨシムラST-1が一番人気。 [写真タップで拡大]
キャブレター:ボディの選択で、異なるフィーリングが味わえる
パルシングコイルカバー:点火系を守るためガスケットは必須
トランスミッション:アウトプット側はギヤの損傷が目立つ
リーフスプリング:破損の可能性が高いBTLの主要部品
エンジンマウント:ラバーの劣化によってエンジンが傾く
フロントのマウントラバー×2が劣化すると、エンジンは正規の位置を保てなくなる。なおダイレクトなフィーリングを重視するライダーのために、バグース! ではリジッド式強化マウントを準備。2万7280円。 [写真タップで拡大]
オイル&オイルポンプ:上質なオイルをきっちり循環させる
トロコイド式オイルポンプ(写真は750用)も、長い目で見れば消耗部品。内部にキズや磨耗がある場合は要交換だ。同店の推奨オイルは100%化学合成のA.S.H.で、用途に応じてFSEEスペックレーシングとFSを使い分けている。 [写真タップで拡大]
オイルクーラー:チューニングエンジンは大容量化がマスト
フューエルコック:分解整備よりASSY交換が得策
スプロケット&ドライブチェーン/リヤショック:レースで実績を積んだ社外品を推奨
フロントブレーキ:純正OHは可能だが社外品も考慮したい
アクスルシャフト:クロモリ素材でフィーリングが激変
タイヤ:ラジアル化という選択肢もアリ
スパークユニット:強力な火花を実現するASウオタニが定番
メーター:安易に交換すると中高回転域が不調に
バグース! オリジナルパーツ:ゼファーを知り尽くすゆえの品揃え
バグース! の人気商品となっているフェンダーレスキットは、単にリヤまわりがスッキリするだけではなく、シート下を整然とし、収納スペースとして使いやすくなるという美点を備えている。写真左はゼファーχ用で、価格は3万7180円。写真右はゼファー1100用で、その他にゼファー750用/ZRX1200ダエグ用/GPZ900R用などが存在。いずれの製品もアルマイトは黒と銀の2種。 [写真タップで拡大]
※本記事は”ヤングマシン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。
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