CRやTMRに憧れつつも…

カワサキZR-7用CVKキャブレターをKZ900LTDに流用〈分解/洗浄/復元編〉

他機種用の純正キャブレターを流用するのは一種定番メニューのようなものである。ケーヒンCRやFCR、ミクニTMRといったスペシャルキャブよりもリーズナブルに、イマイチ落ち着きのない純正VMより調子が良くなることを期待して、カワサキZ1/Z2系エンジンへの装着例も多いケーヒンCVKの流用を実践してみた。

CVKキャブの流用に気持ちが傾き…

最初に所有したGPZ250からVF750F、GSX-R1100に至るまで、筆者が所有してきたバイクはすべて負圧キャブ車ばかりで、街乗りでケーヒンFCRやミクニTMRキャブレターを使ったことがない。そんな自分にとってカワサキKZ900LTDの純正VM26のスロットル操作感は、開けたり閉じたりを繰り返す分には気にならないが、ちょっとだけ開けた状態をキープするような街なかではなかなかに重たい。

カワサキKZ900LTD

加えて言えば、ピストンバルブの同調調整がデリケートで、アジャストスクリューで合わせてロックナットをキュッと締めただけでバキュームゲージの針がズレる。ズレ分を見越してスクリューを決めても、ナットを締めると狙った所にはなかなか行かず…。

VMの調子が出るようにもっと精進するのが本来の道だが、Z系の取材をしていて意外に多く出合うケーヒンCVKキャブレター流用に気持ちが傾き、オークションでZR-7用を落札。TMRやCRの方が高性能なのは百も承知だが、以前Z+CVKを試乗した時「これってゼファーじゃん!!」と叫んでしまったスロットル操作感の軽さは大いに魅力だ。

だったらゼファーに乗りなさいよというごもっともな意見もあるだろうが、自分のLTDでもCVKの味を試してみたいという単純な動機で横道に逸れていくのだった…。

カワサキZR-7用キャブをオークションで落札

ネット情報によると、カワサキ空冷車用のホリゾンタル4連CVKのベンチュリー径には、ゼファー系のφ30、ゼファー750/ZR-7用のφ32、ゼファー1100用のφ34があるらしい。

自分のKZ900LTDは点火系にASウオタニのSP II フルパワーキットを装着しており、後付け部品でTPS(スロットルポジションセンサ)にも対応するので、純正TPSであるK-TRIC付きのZR-7用を落札。現状品ということもあり、見た目はかなりくたびれている。

温水高圧洗浄と定番のヤマルーブで徹底洗浄

バラバラに分解したボディは、カーベック(愛知県東海市)のスプラッシュショットでクリーニング。研磨剤不使用で、温水と専用ケミカルだけを高圧噴射するので、キャブの通路内も躊躇せず洗浄できる。

アルミ地肌の腐食は致し方ないが、ウェットブラストを当てたかのような光沢が蘇った。繰り返しになるが、スプラッシュショットはブラストメディアを使わないので洗浄後が圧倒的に楽。

外観の汚れはきれいに落ちたが、ベンチュリー内のカーボン汚れは薄まったものの完全除去とはいかなかった。そんな時はワイズギアのスーパーキャブレタークリーナー(原液タイプ)の登場。

ガソリン7:原液3の溶液にボディを半分沈めて15分ほど待つと、クリーナーが触れた部分は地肌がクッキリ。先にクリーナーに漬けてからスプラッシュショットで仕上げるのが正解のようだ。

ジェットやニードルは泡タイプのスーパーキャブレタークリーナーで洗浄。ロック付きのビニール袋にパーツを入れて、クリーナーをスプレーしたら泡で揉んでしばらく待つ。

洗浄前後を比較すれば効果は一目瞭然。腐食で閉塞しているような場合は別だが、針でつつかなくてもジェットの穴は完全に通っている。不動キャブ以外でも定期的に洗浄するとよい。

キースターの燃調キットで復元したら静的調整でベースセッティングを決める

キースターの燃調キットは絶版車キャブの必需品で、ゼファー750の各年式用とZR-7用が揃う。ZR-7のメインジェットは初期型では#105/108だが、ZR-7S最後期のみ#85/88。

キャブをつなぐフィッティングはカワサキ純正パーツでも購入できるが、樹脂パイプとOリングがセット販売となる。燃調キットはOリング単品で入っているので、これだけでも価値がある。

洗浄のために分解したキャブを組み立てる際に、スロットルバルブのリンクと連結プレートは取り扱いに注意。プレートのビスはボディがズレないよう平面に押しつけながら締めると良い。

正確な同調調整はエンジンに装着後バキュームゲージを使って行うが、スロットルバルブの隙間を目視で簡易的に合わせておく。ベンチュリーの奥に光源を置き、同調スクリューを回してみる。

スロットルストップスクリューと同調スクリューを回しながら、1番と2番、3番と4番のスロットルバルブを同期させ、最後に2番と3番の開度を合わせる。写真は右のバルブが開いた状態。

エンジンに装着する前にキャブ単体でガソリンを流し、フロートバルブの機能をチェックする。点滴タンクとの落差が大きいほど燃圧が高くなるので、テスト条件としてはシビア。

フロートはマニュアルどおり17±2mm に合わせたが、4番キャブがオーバーフロー。溢れたガソリンはキャブの外ではなくベンチュリー内部に流れるので、取り付け前の確認が重要なのだ。

フロートバルブとバルブシートの当たり面やフロートピンを再度清掃、フロート自体の浮力を比較して油面を再調整。CVKを恒久的に使うならフロートは新品に交換すると良い。4個で1万円弱だ。

分解洗浄で見違えるほどきれいになった。ダイヤフラムとピストンも交換すればさらにベターだが、ピストンは1個1万円するので、コスト的にスペシャルキャブに近づいていくのが考えもの。


●取材協力:カーベック 岸田精密工業 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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