実践・樹脂製ガソリンタンクの補修

プラスチック樹脂亀裂の恒久修理は接着ではなく”溶着”で〈ストレート リペアキット〉

使い勝手が良好な、ストレートのケース入り「プラスチックリペアキット」には、利用機会が多いABS/PP/PE/PSなど様々な樹脂部品の修理が可能な溶着棒が各5本ずつ付属同梱される。特に、利用機会が多いPP/ ポリプロピレンやPE/ ポリエチレンの樹脂棒は、亀裂発見=即修理したい時など、タイムリーな作業では実にありがたい。

プラスチック部品の割れ修理に驚くほど強力な”溶着”をコードレスで

プラスチック部品の割れ修理と言えば、接着剤で結合するのが一般的だろう。確かに最近では、想像を超える強い接着がウリの商品も登場している。樹脂粉末(アクリル系粉末)に専用の充填液を染み込ませる修理方法も手軽で結合力が強いと評判が良いが、相手がポリエステル素材=ポリエチレンやポリプロピレンやポリスチレンになると、その強度は決して強くなく、やはり一番強力なのは”溶着”で意見は一致。割れた部分でも溶かして一体化できれば、通常の接着とは違ってその強度は素晴らしいもの。樹脂劣化で強度が落ちてしまうケースは多いが、間違いなく現状最善の修理方法と言える。

仕入れた商品を販売するだけではなく、自社開発商品の展開にも積極的な工具ショップ・ストレート。同社には、樹脂部分の亀裂に温めた金属クリップを押し込む(溶かして押し込む)、単純な接着ではなく”接合補強”する工具があるが、今回登場したのは充電式のコードレスタイプ。充電式なので、持ち歩くことができる商品でもあるのだ。

このコードレスタイプのリペアキットの発売後、オプション設定でより便利な各種先端ツールもラインナップされた。『モトメカニック』本誌テクニカルアドバイザー・マキシ板橋氏によれば「確かにこれは使いやすいですね」と太鼓判だ。

リチウム電池への充電式で、使い勝手がとにかく良好な機器本体。同梱の先端金具には、樹脂を溶かしながら流し込むことができる。これは標準装備だ。

ABS/PP/PE/PSなど、日常部品では利用される機会も多い。各種マテリアルの溶着樹脂棒が同梱されている嬉しい装備。

亀裂部分に金網をセットして、こて先で温めることで金網が加熱され、樹脂を溶かして内部へめり込んでいく様は、実に痛快そのもの。強度アップに効果的だ。

実例紹介:PP素材の燃料タンク、ノズル部分をプレート補強

スーパーカブの初代デラックスモデル、いわゆる「カモメシリーズ」の初期モデルは、初期型ダックスと同じようにPP製ガソリンタンクを採用していた。

劣化による硬化でカチカチになったガソリンチューブを無理に引っこ抜こうとしたのか? タンクから伸びるノズルの根元にはご覧の通り亀裂が入ってしまい、ガス漏れの原因に。

ノズル根元の亀裂部分だけを溶着することで、単純な修理は可能だが、ノズル部分の強度を高めたいため、今回はノズルの根元にプレートを追加補強することにした。

補強プレートの追加には様々な方法があるが、今回はPP製の樹脂板をカットして、2本の差し込みノズルの根元を溶着補強しようと思う。まずはノズルの寸法測定から開始。

カットしたPP製樹脂板は、大きな模型店やホームセンターのデザインコーナーなどで、樹脂素材板として購入できる。2本のノズル寸法に合せて穴加工を行うことにした。加工段取り中。

万力にセットした樹脂板ピースに穴加工を行う。ノズルパイプの返し太さ(ホースを差し込み漏れ止めする太い部分)に合わせて穴加工を行う。こんな作業こそ慎重に行わなくてはならない。

穴加工を終えた樹脂ピースをノズルに差し込んでみよう。ノズル根元のテーパー部分がカット板の内径と干渉してタンク本体まで押し込めないので、加工穴をスクレパーでテーパー加工した。

樹脂製ガソリンタンクのノズル部分と、2本のノズルを補強するための樹脂板。この時代のポリタンクはPP素材と判断し、PP素材板を切り出し補強プレートとして利用することにした。

補強作業の前に亀裂部分の修理から開始しよう。タンク内部を水道水で満たしてから完全乾燥させ、しっかりエアーブローした後に、亀裂部分を綿棒+アセトンで脱脂。

ノズルパイプが溶け過ぎないようにパイプ内径のアルミ棒(金属棒)をしっかり差し込んでから修理に取りかかる。念には念を入れて作業することをお勧めしたい。本機の方には充電もお忘れなく。

PP製樹脂板での補強ピースに合わせて、溶着樹脂棒にもPP製を利用。溶着棒がないときには、同じ素材の不要な部品をカットして短冊状に加工すれば、溶着棒として立派に使うことができる。

亀裂部分の溶着補修から開始。タンクキャップに掃除機の吸い込み口をガムテープで取り付けるのがよい。強烈に吸い込み吸引しないようにノズルをセットしよう。

カットした樹脂板をノズルに通してタンクに押し付けながら周辺を溶着した。後々気が付いたが、一体型補強ではなく、ワッシャ形状で片側ずつ溶着補強した方が好結果になるようだ。

温まって溶けるほどの樹脂板は、当然ながら熱い。指先をやけどしないように工具で先端を押えながら作業進行した。リペア本機はしっかり充電してから作業しよう。途中で充電切れすると面倒だ。

作業完了後は、2本のノズルに1本のガソリンチューブを差し込み、キャップ部分から息を吹き込みながら、水割り洗剤スプレーを補修部分に吹き付け、カニ泡が出ないか確認しよう。


●取材協力:ストレート ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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