
BMW M3は現行モデルを含め6世代にわたるヒットシリーズですが、4気筒エンジンを搭載していたのは意外なことに初代E30のみ。もともと出来のいい6気筒エンジンから2気筒を省いた設計ですが、2.5リッターのレースエンジンは340psをたたき出したというBMWの底力を見せつけるもの。それゆえ、BMW党の中でもM3は4気筒の初代に限るというエンスーが少なくないのだそうです。そんな4気筒ラヴァーにとって、魅力的なDTM仕様のマシンが売り出されました。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
ニキ・ラウダも関わった「勝つためのホモロゲ」初代M3の軌跡
初代M3は、BMWがツーリングカーレース参戦に向けたホモロゲーションモデル。1986年に市販車をリリースすると、1987年から世界ツーリングカー選手権(WTC)、ヨーロッパツーリングカー選手権(ETC)、そしてドイツツーリングカー選手権(DTM)の3カテゴリーに参戦。
BMWはレース仕様の開発にあたって、元F1チャンピオンのニキ・ラウダをアドバイザーに据えるなど、勝ちたくて勝ちたくて仕方なかった模様です。その甲斐あって、M3はそれら全部のタイトルをかっさらって見せたのでした。
1988年にはM3エボリューションIIが発売され、2.3リッターのまま初代の195psから220psまでチューンナップ。クロスレシオのドッグレッグ(1速が左下)ミッションを介して、最高速245km/hを公称しています。
当然エボIIもレースに参戦しており、この年のETCでロベルト・ラヴァリアがタイトルを獲得。DTMではメルセデス・ベンツとフォードの後塵を拝したものの、ニュルブルクリンク24時間耐久では1-2-3フィニッシュを飾っています。
また、1989年のDTMでは再びラヴァリアがフォードとの激闘を制してチャンピオンに輝き、M3黄金期のピークを迎えたのでした。
DTMマシンをベースに、シュニッツァー仕様のスティーブ・ソーパー車に仕上げた1台。細かい違いはあれど、雰囲気はなかなかのもの。
米国流のDTMレストア?出品されたM3の再現度をチェック
さて、オークションに出品されたM3は商品説明によれば1989年のDTM仕様とのこと。カーナンバー11は、イギリス人のスティーブ・ソーパーということになるのですが、プラモデラー的な視点からすると不正確としか言えません。
シュニッツァー仕様の雰囲気こそありますが、メインスポンサーのヴェルシュタイナーのロゴや、ソーパー車にはついていなかったFINAなど、デカールについての考証は今ひとつかと。
また、レースカーにはありがちですが、フロントスポイラーもM3の純正パーツとはかけ離れたもの。せっかくDTM仕様を作るなら、このあたりは忠実にレストアしてほしかったポイントです。
もっとも、レストアを担ったのは車体にデカールがあるとおり、アメリカ、サンフランシスコのBMWディーラーとのこと。アメリカ人にとってDTMは縁もゆかりもないカテゴリーゆえ、多少の手抜かりは大目に見るべきかもしれません。
DTMマシンはBMWに限らず、レース後はワークス/プライベーター問わずじゃんじゃん売りに出されていたので、アメリカにわたったマシンは少なくない模様。ちなみに、グループAにほど近いツーリングカーなので、プリペアはさほど高い技術力がなくとも走らせられるのだそうです。
DTM仕様のエンジンヘッドは結晶塗装、M Powerは磨き出しだったものが、真っ黒に塗り替えられており、マニアは残念がるかもしれません。
相場4千万vs1200万。実戦派DTM M3の「走る」価値
エンジンから室内、あるいは外装を見ても、極上のコンディションとはいいがたいものの、DTMマシンのニュアンスはしっかりと残されています。
リヤクオーターガラスが樹脂製品に交換されている程度で、後から足されたり、引かれたりしたものもなさそうですし、メーター回りの表示もドイツ語のステッカーそのままというのがオリジナルを物語っています。
いささか手厳しくチェックしましたが、前オーナーはこのDTM仕様車でクラブマンレースに参戦していたらしく、「飾るのではなく、走れるクルマ」としては十分以上のクオリティと言って差し支えありません。
一方、コレクター向けの由緒あるDTM M3になると、オークションでは3000万から4000万円が相場。もちろん、ため息の漏れるようなコンディションで、前述のラヴァリアが乗ったとか、ジョニー・チェコットのスペアカーといったヒストリー付き。
こちらのクラブマンレーサーに仕立てたDTMマシンはずっとお安くて7万8000ドル(約1200万円)となると、BMWエンスージアストのみなさんもDTM M3は「コレクションにするか、ガチで走りに振るか」かなり迷われるのではないでしょうか。
それもまた、輝かしいレース歴を誇る初代4気筒モデルゆえの、嬉しい悩みに違いありません。
調整式リヤウィングはエボリューションモデルの特徴。なお、ラヴァリア、ソーパーともにブラックでなく、ホワイトにペイントされていました。
BBSのセンターロックホイールはDTMマシンそのものの装備。そのほか、エアジャッキも装備しています。
外観イメージ
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