
イギリスのレジェンドバイク、ノートンが再々復活というニュースに喜んでいる方もいらっしゃるかと。今度はインドの大きな資本、TVSモーターカンパニーが巨額の出費をしているので、ノートンのファンならずとも期待が膨らむというもの。なにしろ、たったの50台限定だったドミレーサーの再生産だってあり得るわけですから。その時のために、ちょっと珠玉のマシンをおさらいしておきましょう。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
日本が文明開化している頃に生まれたメーカー
ノートンは言わずと知れたイギリスの古参メーカー。日本が文明開化の真っただ中、19世紀末に創業されています。
その後、激動の社史をつづりつつ、1976年には100年近い歴史に終止符が打たれかけたのですが、1991年にJps(ジョン・プレイヤー・スペシャル:いわずと知れたタバコメーカー)の出資によって復活。1994年にはスーパーバイク選手権の英国タイトルを獲得する躍進を遂げています。
その後、マン島TTでの優勝や、ボンネヴィル・スピードウィークで記録を樹立するなどした後、2013年には栄光のメイクス「コマンダー」の新型をリリースしています。
このコマンダーをベースに、ノートンが持てる技術をあますことなく投入し、熟練のエンジニア&職人たちによって製作されたのが「ドミレーサー」にほかなりません。
バイクの歴史に詳しい方なら、ドミレーサーはドミネーターという往時のモデル(1952)をレース仕様にカスタムしたバイクと認識しているはず。ですが、2014年に発売されたドミレーサーは、新型コマンドーをベースとしたもの。
当時のノートンはゼロからドミネーターを作るリソースに乏しかったのだとされています。
2014年に限定50台が生産されたノートン・ドミレーサー。15番目のシリアルナンバーがついた1オーナーの中古車、約490万円で落札されました。
カフェレーサーのお手本のようなプロポーション。フランスで公道登録されているものの、ウィンカーなど保安部品が省かれている模様。
ほとんど手作りされた典型的カフェレーサー
コマンドーベースといっても、流用されたのは961ccの並列2気筒エンジンと、一部のフレームぐらい。タンクやスイングアーム、ランニングコンポーネントはドミレーサーのために、ほとんどが手作りされているとのこと。
たとえば、タンクはアルミ板金、フレームは往年のフェザーベッドを思わせるチューブラスチール、さらにエアボックスはカーボンでの成形と、まさにノートンらしい性能のための贅を尽くしたパッケージに違いありません。
一方でコマンドー譲りのエンジン本体のチューンナップはなされておらず、80馬力/6500rpm、90Nm/5200rpmという出力は変わっていません。
が、あくまでドミレーサーはレースにも出場できるカフェレーサーを前提としているため、ほぼストレートな排気管が用意され、エキゾストノートは往年のレーサーと変わらないボリュームと音質。イギリスのテスターでさえ「自宅でエンジンをかけると10km離れた従妹から苦情が届いた」とこぼすほど。
いささかオーバーな気もしますが、レース仕様のノートンはたしかに耳をつんざくような排気音が大きな魅力ですからね。
ドミレーサーは名前の通り、サーキット走行を想定した仕上げなので、スピードメーターは装備されずにタコメーターのみ。
10台限定だった日本仕様は瞬殺で完売
また、ドミレーサーはクラシカルな雰囲気を大切にしたかったとのことで、オーリンズのダンパーを装着しつつも黄色でなく、ブラックのスプリングにしたり、ブレンボのキャリパーもことさらに目立たせないといった工夫もなされています。
さらに、スピードメーターはオプションで、タコメーターのみを標準装着。発売時にはカーボン製フライスクリーンも用意されました。で、前述の通り50台限定生産となり、日本国内には10台が割り当てられ、世界中で即座に売り切れたのは言うまでもないでしょう。
ちなみに、日本仕様はナンバー登録できるものとなっており、スピードメーターや保安部品が装備され、お値段529万2000円。ブランドのプレミア、パフォーマンス、そして希少性を考えたらバーゲンプライスといえるでしょう。
これほどのプレミアムバイクですから、50台のほとんどがコレクターのガレージに納められているかと思いきや、オークションに出品されたレアなケースもありました。
フレームナンバー001を刻みながら15台目のモデル、フランスからの出品で、公道向け登録ができるオプション込み。新車からの1オーナーということで、落札価格2万6910ユーロ(約490万円)というなかなか良心的なプライス。
発売時に買い逃した、ドミレーサーが欲しくなってきたという方々には夢が広がるサンプルではないでしょうか。
92db/3850rpmとなると、国内では車検を通りそう。ですが、相当なボリュームに違いありません。
後ろからも流麗です。
パーツの細部にまで美しさが。
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