市販モデルも装備する驚異のバルブ駆動メカニズム!

【ドゥカティの「デスモ」は何が凄い?】MotoGPとWSBで圧倒的な速さのカギになり、多くの市販車に採用!

MotoGPマシンにはバルブスプリングが無い!?

市販車はともかく、性能追求のために技術やコストをふんだんに投入できるMotoGPマシンの場合、バルブスプリングのデメリットはどうしているのか? ドゥカティを除くMotoGPマシンはニュウマチックバルブと呼ばれる「空気バネ」を使っている。

これは金属製のバルブスプリングの代りに、シールで密閉した空間に入れた空気(正しくは窒素ガス)を往復させる仕組み。金属スプリングのように共振せず(バルブサージングを起こさない)、空気が出入りするのでパワーロスも無い(カムを追従させるのに反発力を強くする必要が無い)。もちろん空気なので、金属より圧倒的に軽いのも大きなメリットだ。

ニュウマチックバルブは先に四輪F1で採用され、MotoGPマシンは2002年にアプリリアが初めて採用。06年にスズキのGSV-R、そして08年にホンダRC212VとヤマハYZR-M1が採用し、現在はドゥカティ以外のすべてのマシンが装備していると思われる。

それではデスモドロミックとニュウマチックバルブ、どちらが優れているのか? MotoGPマシンにおいて優劣を決めるのは難しいが、ニュウマチックバルブは現時点では市販車には採用できない特殊な装備、というのが現実。なぜなら数百km走行毎に空気(窒素ガス)を車体に積んだ専用のタンクに充填しなければならないからだ(保管時も空気圧の維持が必要)。

対するデスモドロミックは、MotoGPマシンとほぼ同様の機構が多く市販モデルに採用されている。これはすごいことだ。

超豪華なリアルレプリカだがニュウマチックは非装備

2022年 ホンダ RC213V
ホンダのMotoGPマシンは、2008年のRC212Vからニュウマチックバルブを初めて採用し、現在のRC213Vも装備している。

2105年 ホンダ RC213V-S
MotoGPマシンのリアルレプリカとして登場(国内販売価格は2190万円)したが、ニュウマチックバルブは採用されなかった。

公道を走れるMotoGPマシン

2008年 デスモセディチRR
MotoGPファクトリーマシンのデスモセディチGP6のフルレプリカ。エンジンはカムギヤトレーンの90度V型4気筒で、もちろんデスモドロミック機構を装備。カムのプロファイルやバルブタイミングまでGP6と同じといわれる。日本での販売価格は866万2500円。

ドゥカティは市販車もデスモドロミック

前述したように、ドゥカティは多くの市販モデルにデスモドロミック機構を採用。パニガーレV4等スーパーバイク系のV型4気筒はもちろん、水冷のV型2気筒エンジンもカムやバルブ周りはMotoGPマシンとほぼ同じレイアウトだ(カムシャフトの駆動方式はMotoGPはギヤ、市販モデルはチェーンまたはコグドベルト)。

またネオクラシックなスクランブラーが搭載する空冷L型(90度)2気筒の「デスモデュエ」はSOHCの2バルブだが、もちろんデスモドロミック。古くは1979年の500SLパンタに始まり、40年以上も熟成と進化を重ねるドゥカティ伝統のエンジンだ。

ちなみに、もっともリーズナブルなV4デスモドロミック搭載車はストリートファイターV4の268万9000円。このプライスでMotoGPマシンに極めて近似したエンジンを手にして味わえるのは、間違いなくドゥカティだけだ。

MotoGP直系のV4エンジンを搭載

2023年 パニガーレ V4 R
スーパーバイクレースのレギュレーションに合わせた排気量998ccのホモロゲーションマシン。レブリミットは1万6500rpmで218psを発揮。レーシングエキゾースト装着で237ps、さらに専用オイルを用いれば240.5psに達する。

2023年 ストリートファイター V4S
パニガーレV4をベースとする1103ccのデスモセディチ・ストラダーレ・エンジンは208psを発揮。バイプレン(複葉)タイプのウイングレットも装備するスーパーネイキッドだ。

2気筒もデスモ装備!

2023年 モンスター SP
かつては異端と呼ばれたが、いまやドゥカティを代表するスポーツネイキッド。エンジンはテスタストレッタ11°、水冷の90度V型2気筒4バルブは937ccで111psを発揮。

2023年 スクランブラー ICON
ドゥカティ伝統の空冷L型(90度)2気筒はデスモドロミックの2バルブで、803ccから73psを発揮。排気量の大きいスクランブラー1100(1079cc)も空冷デスモを搭載する。

じつはノンデスモ車も存在する

じつはドゥカティの市販モデルで、デスモドロミックを採用しないエンジンもある。2021年に登場したムルティストラーダV4が搭載する「V4グランツーリスモ」エンジンで、発表間もないディアベルV4もこのエンジンを積んでいる。

これを残念に感じたドゥカティファンも少なからずいるだろうが、V4グランツーリスモにはフィンガーフォロワーなど高性能エンジンの最新トレンドをしっかり投入している。そしてバルブクリアランス点検/調整:6万km、オイル交換:1万5000kmという、驚くべきロングスパンのメンテナンスサイクルを実現。デスモドロミックの性能とメンテナンスの難易度を、耐久性の側に大胆に逆振りしたともいえ、これもドゥカティの技術力を示す一端だろう。

ムルティストラーダ V4S
2021年に初めてV4エンジンを搭載したムルティストラーダ。新規に開発した「V4グランツーリスモ」エンジンは、デスモドロミック非搭載のバルブスプリング仕様。排気量はパニガーレやストリートファイターを上回る1158cc。

ディアベル V4
2023年モデルとして新登場のディアベルV4は、ムルティストラーダ系の「V4グランツーリスモ」エンジンを搭載する。


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