
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。この記事ではヤマハRZ250/350の主要部品について解説する。
●文:ヤングマシン編集部(中村友彦) ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
TZの技術を転用しながら独創的な思想を随所に注入
伝統の2サイクルパラレルツインという構成を維持しつつも、数多くの新技術を導入したRZ。中でも最もインパクトが大きかったのは、市販レーサーTZを踏襲する形で行われた、エンジンの水冷化だろう。
吸排気をシリンダーに設けられた数多くの穴=ポートに依存する2サイクルの場合、シリンダーの変形を抑える発熱量の安定は昔から重要な課題で、TZは’73年から水冷エンジンを搭載していたのだ。そして水冷化に次ぐRZの新技術と言えば、’70年代初頭にモトクロッサーのYZ用として開発され、’76年からはTZにも採用された、モノクロス式リヤサスペンションである。
この機構の導入によって、RZは既存のツインショック車とは一線を画する、抜群の軽快感とトラクション性能を獲得。もっともそういったフィーリングは、昔ながらのダブルクレードルタイプから脱却し、ヘッドパイプとスイングアームピボットを直線的に結んだフレームを抜きにして語れるものではないのだが、このフレームもTZの影響が多分に感じられる構成だったのである。
とはいえ、RZはTZの単なるレプリカではない。流麗な外装部品やアルミキャストホイールは、RZならではの装備だったし(TZは’85年型までスポークホイール)、高回転域で発生する過大な振動を緩和するべく、エンジンとフレームの締結には独自のオーソゴナルマウントを導入していた。言ってみればRZは、見方によってはTZより先進的なモデルだったのだ。
ENGINE:エンジンの水冷化で高回転化を実現
従来は空冷だったエンジンの冷却法式を水冷に変更する場合は、ラジエターやウォーターポンプを筆頭とする補器類の追加による重量増が気になるものだが、’70年代のRDシリーズに対して、RZのエンジンは約12%の軽量化を実現。
空冷2サイクルエンジンのシリンダーとシリンダーヘッドに装着される冷却フィンは、実は相当な重さがあるのだ。なおRZのボア×ストロークは、250:54×54mm、350:64×54mmで、この数値は同時代のTZ250/350とまったく同じだった。
カタログに掲載された透視図では、水冷化されたエンジンとモノクロス式リヤサスペンションを強調。なお既存のYDS1~RDシリーズではキャブレターの後方だったエアクリーナーボックスは、エンジン上部に設置。
【クラストップの最高出力を発揮】前任に当たるRD250/350の最高出力が30/40psだったのに対して、水冷化でエンジンのシール性と充填効率を高めたRZ250/350は35/45psをマーク。もちろんこの数値は、いずれも当時のクラストップだった。
キャブを除くパワーユニットはブラックで統一。このカラーも当時としては斬新だった。
レスポンス向上を求めて、キャブレターはRDより口径が2mm小さいVM26SSを採用。
RZ250のピーキーさを表す性能曲線図。最大トルクは8000rpm、最高出力は8500rpmで発揮。
FRAME&CHASSIS:新設計の車体はレースの技術を投入
2サイクル特有の美点にさらに磨きをかけるべく、RZは車体に関しても軽量化を徹底追及。250:139kg、350:143kgという乾燥重量が実現できた背景には(前任のRD250/400は152/159kg)、エンジン重量の軽減に加えて、フレームやホイールの軽量化も大いに貢献したようだ。なおリヤブレーキをあえてドラム式としたのも、軽量化を追求した結果である。
形式で言うならダブルクレードになるものの、RZのフレームは後のツインスパーと同様、ヘッドパイプとスイングアームピボットを直線的に結ぶことを意識。モノクロス式リヤサスペンションは、本来は悪路走破性を重視するオフロード車のために生まれた技術だった。
窒素ガス封入式のリヤショックはプリロードを5段階に調整可能。リヤホイールのトラベル量は110mm。
【火炎をイメージしたアルミキャストホイール】専用設計の前後18インチホイールは、“大八車”と呼ばれた既存のヤマハ製アルミキャストホイールとはまったく異なるデザインで、軽量化を念頭に置いて設計された。
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