
新型CBR400Rの登場に沸く今だからこそ、時計の針を1986年に戻したい。レーサーレプリカ全盛の熱狂の裏で、ホンダがあえて「大人の快適性」を追求した名車が存在したのをご存知だろうか。近未来的なエアロフォルムと、超高回転を正確に刻むカムギヤトレーン。ただ速いだけではなく、ライダーとバイクの一体感を極限まで高めた初代CBR400R。その妥協なき作り込みと秘められた魅力を、今こそ紐解こう。
●文:ヤングマシン編集部 ●写真/外部リンク:ホンダ
長時間の高速移動で悩まされる風圧
休日のツーリング。目的地に着く頃には、高速道路での強烈な風圧で首や肩が悲鳴を上げている。そんな経験を持つライダーも多いはず。かといって、風を防ぐために過激な前傾姿勢を強いるレーサーレプリカでは、今度は腰が痛くなってしまいがちだ。
速さと快適性は両立できないのか。そんな終わりのない悩みに、ホンダは1986年、ひとつの明確な答えを出した。それが、レーシングマシンとはまったく違うアプローチで空力特性を突き詰めた「CBR400R」だ。
風を切り裂くのではなく、受け流す「フルカバード・エアロ」
まるで新幹線のような、あるいは宇宙船を思わせる流麗なフォルム。フロントフェンダーからヘッドライト、そしてボディ全体をすっぽりと包み込むフェアリングは、ただの装飾ではない。
空気を切り裂くのではなく、ダイレクトに車体後方へ受け流すために生まれた形なのだ。この滑らかなカウルのおかげで、ライダーは風の暴力から解放される。長距離を走っても疲れにくく、どこまでも走り続けたくなるような快適性をライダーは手に入れることができたのだ。
官能と精密の極致。胸のすく「カムギヤトレーン」の咆哮
見えない部分にこそ、最大のコストと情熱が注がれている。カウルに隠された新設計の水冷直列4気筒エンジンには、当時の最高峰技術「カムギヤトレーン」を採用。通常のチェーン駆動では正確さが失われるほどの超高回転域でも、歯車が正確にバルブを動かす。
スロットルを捻れば、12,500回転で59馬力を叩き出す圧倒的なパワーと、精密機械が噛み合う独特のモーターサウンドがライダーの五感を強烈に刺激する。振動の少ないシルキーな吹け上がりは、長時間のライディングにおける疲労軽減にも大きく貢献した。
765mmの低シート高が生む、圧倒的な安心感
どんなに高性能なバイクでも、信号待ちでつま先立ちになれば途端に不安が押し寄せる。立ちゴケの恐怖は、日常の移動において最大のストレスだ。しかし、このCBR400Rは違う。シート高はレーサレプリカながらわずか765mmに抑えられ、しっかりと両足が地面に届きやすくなっている。
さらにアルミ製のツインチューブフレームは「目の字」断面構造を採用して強靭でありながらスリムに作られているため、足をスッと下ろしやすい。過激さを競い合っていた時代に、あえて足着き性という日常の安心感を重視したホンダの英断に拍手を送りたい。
速さだけではない、上質なバイクライフの先駆け
時代の熱狂に流されず、ライダーが真に求める「心地よさ」と「所有する喜び」に真っ向から向き合った初代CBR400R。見えないフレームの裏側にまでレーシングクオリティを注ぎ込みながら、それを大人向けの洗練されたパッケージで包み込んだ。その志は、現代のツーリングスポーツへと確実に受け継がれている。新型の登場があってなお、この偉大な先駆者の存在は色褪せることがない。
HONDA CBR400R(1986model) COLORS
【HONDA CBR400R】●シャスタホワイト/ミクロネシアンブルーメタリック
HONDA CBR400R(1986model) SPECS
| 項目 | スペック |
| 型式 | NC23 |
| 全長×全幅×全高 | 2.015m × 0.685m × 1.095m |
| シート高 | 0.765m(765mm) |
| 車両重量(乾燥重量) | 184kg(165kg) |
| エンジン型式・種類 | NC23E・水冷4サイクルDOHC直列4気筒 |
| 総排気量 | 399cc |
| 最高出力 | 59ps / 12,500rpm |
| 最大トルク | 3.8kg-m / 10,000rpm |
| フレーム形式 | ダイヤモンド(アルミ製ツインチューブ・目の字断面) |
| 燃料タンク容量 | 16L |
| 発売当時の価格 | 669,000円 |
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