
大盛り上がりのうちに閉幕したミラノ・コルティナ五輪。各競技に興奮しっぱなしでしたが、見た目的にモータースポーツを感じさせ、“氷上のF1レース”とも称されるボブスレーではバイク用ヘルメットが使用されていた模様です。そこでメーカーの担当者を直撃。サポート状況や裏話を聞くことができました。
ボブスレーではほぼ全員がバイク用ヘルメットを競技で使用
大盛り上がりのうちに閉幕したミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック。金メダルに輝いたフィギュアスケートやスノーボードなど、躍動するアスリートの姿に胸を熱くした方も多いのでは?
スキーやスノーボードはそのスピード感や体重移動の仕方などから、これまでにもバイクに乗ることとの親和性が語られてきましたが、最もモータースポーツを感じさせる競技は、“氷上のF1レース”と称され、ヘルメットを着用して鋼鉄製のソリに乗り込むボブスレーでしょう。
最高速度が時速150kmに達するボブスレーでは、IBSF(国際ボブスレー・スケルトン連盟)が厳格に定めた安全基準を満たした、ECE、OKMまたはDOT規格認証のヘルメットが使用されますが、一般入手可能な市販品であることも規定されていて、なおかつ空力部品の追加は禁止となっています。
バイク用ヘルメットはこれらの条件にぴったりのようで、おなじみのメーカーの製品がオリンピックでも数多く見受けられました。
AGVはイタリア代表をサポート!「K6 S」「K1 S」を供給
開催国イタリアはAGVがサポート。ヘルメットのおかげもあってか、男子4人乗りが5位、男子2人乗りが7位と健闘
開催国イタリアは地元老舗メーカーのAGVがサポートし、『K6 S』および『K1 S』を供給。MotoGPライダーのために開発されたすべてのテクノロジーが生かされた両モデルは、“AGV EXTREME SAFETY(エクストリームセーフティ)”独自の設計により、厳しいECE22.06ホモロゲーションの認証要件を満たすだけでなく、上回る性能を発揮。空洞実験により開発されたエアロダイナミクス形状は、高速走行時の安定性をもたらします。
AGV製品を輸入するユーロギアの鈴木克宜さんによると「ボブスレー競技ではフルフェイスヘルメットの着用が義務付けられており、広い視界を確保できることから、ほぼ常にモーターサイクル用ヘルメットが選ばれています」とのこと。
「特に前方に位置し風を受けるドライバーにとって、モーターサイクル用ヘルメットの空力性能は非常に重要な要素となります」
ちなみにイタリア代表チームのメンバーは、オリンピック開幕前にAGVミュージアムを来訪。展示されている4輪・2輪のレジェンドたちが使用したアイテムに目を奪われていたようです。
供給された『K6 S』と『K1 S』にはMotoGPライダーのために開発されたすべてのテクノロジーが生かされています
インディカー出身者が風洞実験の結果、“丸い”アライを選択
日本のメーカーでは、アメリカチームがアライヘルメットを使用し、メダルをつかみ取りました。
「2018年の平昌オリンピックから4輪レースのIndy Carシリーズのペンスキー・レーシングで働いていた人物がボブスレーチームを率いており、チームが風洞実験に多くの時間を費やした結果、“最も空気力学的に優れたヘルメットは丸くて滑らかな形状”であるとの結論に達し、その形状が大きな特徴のアライ製ヘルメットを使い始めたそうです」とアライヘルメット国内営業/広報部の上 幸一さん。
「それからアライは、ボブスレーの『A』チームにヘルメットを提供しています。ボブスレーでは頻繁にクラッシュが起こりますが、アライ製ヘルメットの使用を開始した後、選手たちの多くは脳震盪を起こすことが少なくなったそうで、アライの卵型形状からの“衝撃をかわす性能”がボブスレーにも生かされたと思われます」と語ります。
現在、アライではUSAボブスレーの要請により、選手向けのヘルメットに関するセミナーを開催し、ヘルメットの適切なケア方法や、卵型の丸くて滑らかな形状、丈夫な帽体、かわす性能に関する講習を行っているそう。
「選手たちは自らの責任で好きなヘルメットを使用できますが、コーチやチームのトップ選手たちはアライヘルメットが追求する卵型による“かわす性能”の重要性を実感し、アライ製ヘルメットの使用を選手に推奨しているそうです。アライとしてもバイク用ヘルメットを通して長年培ってきた卵型の形状からの“頭を護る”安全思想をオリンピック競技にも生かしていただいていることに嬉しさと会社としての誇りを感じております」
SHOEI使用選手も多数。カブトは日本代表が出場取り消しに
イギリスやスイス、ルーマニア、オーストリアなどの代表選手がSHOEI製ヘルメットを着用する姿も多く確認。SHOEIでは現地法人のサポートなどについては把握していないとのことでしたが、一般入手可能な市販品であることもルールで規定されているので、各々が自国で購入したということなのでしょう。
Lサイズが1300g台前半、XL・XXLサイズでも1400g台前半という軽さが競技特性にマッチしているのか『グラムスター』を選ぶ選手が多く、中にはガードナーレプリカで競技に臨む選手も。
オージーケーカブトは、日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟のオフィシャルサプライヤーを務め、日本代表選手が使用するモーターサイクル用ヘルメットを供給していますが、連盟による遠征計画に不備があり、残念ながらボブスレー競技への出場自体が取り消しに。夏季オリンピックの自転車競技ではおなじみだけに冬季の舞台でもカブトヘルメットを見たかったところです。
ドイツ代表はBMWモトラッド、ブラジル代表はビエッフェ
男子2人乗りでメダルを独占、男子4人乗りと女子2人乗りで金・銀、女子モノノブでも銀を獲得した強豪ドイツは、多くの選手が母国を同じくするBMWモトラッドの『M Pro Race Helmet』を選択。
イタリアのビエッフェからサポートを受けるブラジル代表は、国旗にインスパイアされた鮮やかなカラーリング。MotoGPで見慣れたHJCやLS2に加え、スイスブランドのIXS(イクス)や北アメリカで人気のJoe Rocket(ジョー・ロケット)など、日本であまり見かけないメーカーもちらほら見られました。
バラエティに富んだこれらギアのチェックは、バイク乗りならではのマニアックなオリンピックの楽しみ方といえるかもしれませんね。
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