
空冷911が高騰し続ける影響なのか、4気筒モデル、いわば末っ子ポルシェの人気が上がりつつあります。末っ子とはいえ、生産された年月や台数は長期にわたるため、ポルシェらしいレーシングヒストリーにも事欠きません。とりわけ、ル・マン24時間耐久レースで総合6位をもぎとった924GTPは最たる例であり、末っ子ながら根強いファンが少なくないのです。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
17台のみのレーサーベースは売れ行きパッとせず⁉
ポルシェ924は1976年の販売開始から、924S がラストモデルとなった1988年まで生産されるというロングライフでした。すると、ポルシェの場合スポーツ色が強めの派生モデル、あるいはレーシングモデルが生まれるのがお約束。ターボやSはもとより、カレラの名を戴いたGTやGTSといった限定モデル、極めつけの超高性能版GTRなど、さまざまなモデルが登場しています。
924は、ル・マン出場にあたってグループ4規定に合格すべく、400台からのホモロゲーションモデルが生産されました。924カレラGT(406台)と名付けられたモデルですが、同時にGTPのスペックに近いカレラGTR(17台)もプライベーター向けレーシングパッケージとして製造されています(ちなみに、売れ行きはかんばしくなく、ほとんどが公道仕様として販売されました)
ウェットコンディションが924に味方した
ともかく、924は1980年のル・マンに3台がエントリーしています。史家によると、販売のテコ入れとみる向きもあるようですが、参戦したGTPクラスは「絶対的なパワーよりも効率重視」の傾向にあり、924にとって好都合だったのではないでしょうか。もっとも、924だけでなく、同年のル・マンは935(総合8位)や908(総合2位)、あるいはクレーマー製935K3(総合5位)などコース上はポルシェだらけだったことも確かです。
1980年のル・マン24時間耐久レースに出場した実物のポルシェ924GTP。総合13位、クラス6位という成績を残しています。
今回オークションに出品されたのは、実際にレースを闘った3台のうちの1台。名手、デレック・ベルとアル・ホルバートのドライブによって総合13位(クラス6位)という成績を残しています。レースはウェットコンディションだったため、バランスの取れたシャシーは雨の中でも十分なグリップを発揮、よりパワフルで苦戦するプロトタイプを追い回すことができたのです。雨でレースペースが上がらなかったことも、どちらかといえば非力な924には味方したはずです。
ホモロゲーションモデルの924カレラGTは、924ターボをベースに204psまでパワーアップ。インタークーラーの追加、圧縮比を下げて若干のブーストアップも実施しています。さらに、後の944を思わせるフロント/リヤフェンダーの拡幅がなされたものの、その分、車重は924ターボよりいくらか重くて1180kgとなりました。また、オプションとしてLSDやピレリP7タイヤ(ストックはP6)が用意されるなど、公認取得モデルといえどもポルシェらしい生真面目な一面も垣間見えます。
リヤエンドは拡幅され、タイヤサイズや足回りの大幅な改造が見て取れます。燃料タンクの拡大に伴い、マフラーはボディサイドへと配置換えされています。
破格の指値が924GTPの価値を物語る
出品車両に目を移せば、さすがル・マン常勝チームだけあって、どこもかしこも完璧で美しい仕上がり。最高出力370psとされる4気筒エンジンにはじまり、エンジンルームのパイピング、応力担体箇所の強化、シリンダーやギヤボックスの温度計まで装備するなど、まさに24時間を闘えるクルマと言えるでしょう。なお、ル・マン参戦後はアメリカのホルバートのレーシングチームに送られ、1981年IMSAとトランザムのレースに参戦。その後オーナーが変わっても、1982年末までトランザムに出場し続けたとのこと。
ちなみに、こちらの3号車は総合13位だったものの、ユルゲン・バルト/マンフレート・シュルティが乗った4号車は総合6位、GTPクラス3位入賞という成績を残しています。初めてのFRマシンを24時間完走させただけでなく、十分以上の戦闘力を見せつけたポルシェの底力には、いまさらながら衝撃と畏怖を覚えます。オークションで30~40万ドル(約4500~6000万円)というレーシングカーとしては破格の指値こそ、その証左となるのではないでしょうか。
1980年のグリッド風景。3台の924GTPが並び、隣のピットにはクレーマーポルシェ935K、画面左端には911ターボらしきクルマがいるなど、ポルシェだらけな雰囲気。
実際のレースで走る3号車と、後ろはアンディ・ルース/トニー・ドロンが乗った2号車(総合12位/クラス5位)
3号車をドライブしたデレック・ベルのサイン。2007とありますから、後のイベントなどで書かれたものでしょう。
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