
ポルシェ911ファンの中でも、空冷フラットシックス原理主義者にいわせると「全輪駆動にしてマルティニっぽいカラーリングにすればいいってもんじゃない」と911ダカール(2023)はお気に召さない様子。ならば、空冷911のレストアファクトリーとして有名なルフトオートが仕立てた「911サファリ・バイ・ルフトオート」はいかがでしょう。1987年モデルをベースに、エンジンや足回りを徹底的にレストア&チューニング。いわゆるレストモッドとも一味違う仕上がりは、うるさいファンも納得することしきりです。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
あえて勝てなかったサファリラリーをモチーフに
ポルシェ911にとって、サファリはなかなか勝たせてもらえなかった数少ないラリー。1974年はカレラ2.7RS、1978年は911SCラリーといったマシンを投入するも、惜しいところで優勝を逃しています。ちなみに、いずれのマシンもマルティニカラーだったことから、2023年のダカールにマルティニオマージュのモデルが追加されていますが、名前とカラーだけが勇ましいもので、筆者を含めてピンとこない方も少なくなかったはず。
ともあれ、ルフトオートもそんな気持ちだったのか、彼らは正統的なサファリ仕様、しかも現代のテクノロジーをふんだんに投入して作り上げたのでした。ベースに選ばれたのは、1987年モデル、3.2リッターのフラットシックスエンジンを搭載した911。ルフトオートはポルシェのレストアにかけて右に出るものがいないほどで、特に空冷911へのこだわりは半端なものではありません。ネジやケーブルといった細かな部品まで考証しつくし、また組み立てについてもツッフェンハウゼンの工程を忠実にフォローするという、一種のパラノイア(偏執狂)といっても過言ではありません。
1987年モデルの911をベースに、サファリラリーをオマージュしたルフトオート002。工場出荷価格はおよそ4500万円となかなかのもの。
ダックテールを見ると1974年のRS2.7サファリ仕様を思わせますが、中身は930や996のハイブリッドなチューンナップが施されています。
やりすぎないカスタマイズが911ファンにウケた
このサファリオマージュの911は彼らにとって2台目のコンプリートカー、ルフトオート002と名付けられました。カレラボディはシグナルイエローにリペイントされ、RS風ダックテール、アディショナルランプ、15インチホイール、そしてアニマルバーを模したフロントガードが目を引くポイント。ルーフラックや、軽量化がなされたリヤバンパーもルフトオートのオリジナルアイデアながらじつにいい雰囲気を醸しています。
やりすぎないカスタマイズは原理主義者にもウケがいいことでしょうが、ルフトオートの腕前は目に見えないところこそ発揮されています。例えば、930シャシーでネックとされるリヤサスは、ピックアップポイントを移動、ボールジョイントを用いたワンオフシステムに作り変えられました。車高はもちろん、アライメント変更も容易になり、またショックアブソーバーの選択肢も増えるというまさにラリーチューンと呼ぶにふさわしいもの。
フラットシックスを知悉したエンジンチューン
さらに、エンジンは高圧縮比、ハイカム、エンジン制御デバイスMotecの追加に始まり、996GT3のスロットルボディ、BBE製ヒートエクスチェンジャーなど、およそ考えうるフラットシックスのチューニングすべてを行っています。正確なパワーは未公開とされていますが、ストックの225psをはるかに上回ることは確かでしょう。加えて、向上したパワーに見合うべく、ルフトオートはポルシェの中でも高性能といわれるG50ミッションを搭載し、2/3/4速をショート化することでラリーマシンらしい味付けまで施しました。無論、LSDも装備されているので、ダートの上では面白いほどのターンが決められること請け合いです。
こうしたカスタムとレストアに対し、ルフトオートはドナー車体を含めて30万ドル(約4500万円)のコストを費やしたとしています。最近の空冷911が恐ろしいまでに高騰していることを考えれば、さほど驚くような金額でもありません。むしろ、レストモッド界隈が標榜する億単位のプライスに対し「ナンセンス」と言い切るルフトオートこそ潔いといえるのではないでしょうか。
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