
オフ車乗りでなくとも、パリ・ダカール・ラリーと聞けば胸のどこかがうずくもの。現在はパリもダカール砂漠も走らなくなってしまったものの、男子の冒険心を呼び起こすワードとしては横綱クラスではないでしょうか。今回ご紹介するバイクは、そんなパリ・ダカールに出場&完走したスズキDR650。1994年のレースでは唯一完走を果たしたスズキ車であり、パリからスタートして、再びパリに戻ってきたという歴史つき。オークションでの落札価格、約200万円というのも胸アツな金額です!
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
DR650は安くて壊れづらくて、ラリーにうってつけ!
1994年のパリ・ダカール・ラリーは前述の通り、古式ゆかしくパリをスタートして、ダカール砂漠を横断、そしてパリのゴールを目指すルートでした。これはフランス人ライダーのジル・フランクルにとって大きな意味があったはず。彼は1970年代からモトクロスやラリーで活躍したプロライダーで、とりわけ海辺の町、ル・トゥケで開催されるエンデューロでは破竹の勢いを見せていたのだとか。その当時はハスクバーナが愛車だったとのことですが、パリ・ダカールを闘うために選んだのはスズキDR650でした。
DR650は国内でもおなじみの名車ですが、ヨーロッパでは先代のDR600から導入が進んでおり、1990年になって排気量がアップしたDR650へと進化しています。比較的シンプルで堅牢な単気筒エンジンを採用しており、DR650も例外ではありません。SOHC、4バルブ、空油冷却、シングルキャブ、5速ギアボックスと、故障する要素が見当たりません。フランクルもこの点が気に入ったようで「値段が安いうえに壊れづらいなんて、パリ・ダカールにうってつけじゃないか」とのコメントを残しています。
5台のDR650がエントリーするも、完走は1台のみ
もちろん、ラリー向けのカスタマイズも施されており、後にダカールタンクなどと呼ばれる大容量燃料タンク(29~36リッター)に加え、シート後ろの予備タンク(20リッター程度)が目を引きます。また、レンズプロテクター付きフロントカウル、内側にはマップケースも装備。ラリーならではの装備といえるでしょう。ただし、エンジンチューンやサスペンションの詳細は明らかにされていません。当時のレギュレーションから推察しても、ほぼストックに近いものだったかもしれません。ちなみに、ヨーロッパ仕様では車両重量は170kg、最高出力46ps/6800rpm、最大トルク56.6Nm/5000rpmとされています。
1994年のパリ・ダカール・ラリーに5台がエントリーしたDR650のうち、1台だけ完走を果たしたジル・フランクルの40号車。
同年のパリ・ダカールには96台のバイクがエントリーしたものの、完走を遂げたのはほぼ半数の47台。フランクルをはじめ5台のDR650が出走していますが、前述の通り完走はフランクル車のみという厳しいリザルトに終わっています。ところで、オークション出品時の走行距離を見ると2万7846kmを刻んでおり、ちょうどパリ・ダカール2回分に等しいもの。このDR650が1993年式ということから「もしかして93年も出場していたのか?」との疑問が差し挟まれたものの、真実は不明のままだそうです。
どうやらファクトリーからのエントリーではなく、現地のショップレベルで仕上げたと思しきDR650。このほかの4台は残念ながらリタイヤしています。
ラリー人気の証か、落札価格は200万円
前述の通り、このDR650はオークションに出品されて約200万円という高値で落札されています。ヨーロッパでラリー車の相場は高いとはいえ、なかなか破格なお値段かと。純粋にパリとダカール砂漠を往復した最後の世代と考えた熱心なマニアがいるのでしょう。もっとも、DR650自体が30年近く生産された人気モデルですから、そういったプレミアも上乗せされているに違いありません。スズ菌保持者にとっては鼻の高くなるようなニュースでしょう。
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