
“現実的”な車格と価格を魅力とするのが軽二輪アドベンチャー&トレール。ʻ25~ʼ26モデルでカワサキが攻勢をかけ、その注目度が再び高まっている。国内メーカーの代表的な3車種を、岡崎静夏さんがインプレッション!!
●まとめ:ヤングマシン編集部(田宮徹) ●写真:楠堂亜希 ●外部リンク:カワサキ
カワサキの侵攻で勢力図に異変!?
アドベンチャーカテゴリーの世界的な人気は依然として高めに維持されているが、その一方で、主力となるリッタークラスのマシンに対して、「大きすぎる、重すぎる…」と感じているユーザーは少なくない。
そんな人たちの救いとなるのが軽二輪アドベンチャー。フラッグシップモデルと比べたら装備はベーシックだし、大陸横断レベルの本格的な冒険に使うにはちょっとツラいけど、等身大で楽しむ気軽なツーリングの相棒、アドベンチャー系のエントリーモデル、あるいはベテラン層が選ぶダウンサイジングモデルなど、幅広い役割を担える立ち位置にある。一方で、以前から公道用オフ車やトレールバイクのメインとなってきたのは軽二輪クラス。これは、林道などの荒れた未舗装路で多くのライダーが扱える車重やパワーという点では、軽二輪クラスの単気筒モデルがベストと考えられてきたからだ。
今回は、そんな軽二輪クラスの最新アドベンチャー&オフロードモデルを、ユーザー目線で岡崎静夏さんに吟味してもらった!
左から【SUZUKI Vストローム250SX】●価格:59万1800円 ●色:黄、赤、黒 ●発売日:’24年11月28日/【HONDA CRF250ラリー】●価格:79万2000円●色:赤 ●発売日:’25年3月20日/【KAWASAKI KLX230シェルパS】●価格:66万円 ●色:ベージュ、緑、灰 ●発売日:’25年9月15日
【TESTER 岡崎静夏】全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラスにフル参戦し、ときには表彰台に立つほどの驚速女子。ツーリングやオフロード遊びなどもマルチに楽しむ!
必要十分なトコトコ系エンジンと軽快に楽しめるハンドリング
ʼ24年11月にデビューしたKLX230シェルパの派生版として、ʼ25年9月に発売されたのがKLX230シェルパS。一番の大きな違いはシート高で、標準仕様の845mmから、前後サスペンションの変更で825mmに下げられています。
そもそも軽二輪オフロードモデルとしてはコンパクトにまとめられているシェルパですが、シート高の低減により、またがったときのフレンドリーな雰囲気はさらにアップ。スリムなシート形状のおかげもあり、やや後ろに座ったままでも地面に足が届きやすく、これだけで扱いやすそうに感じられます。
オフ車では定番となる単気筒のエンジンは、軽二輪の排気量上限とはちょっと差がある232ccで、しかも空冷。そのため強烈に引っ張られるようなパワー感ではないのですが、トコトコと小気味よく回り、気づくとそれなりの速度域に達しています。確かに最高出力は低めですが、車重も抑えられているので、十分な加速感を発揮してくれます。
ルックスは完全にオフ車なので、アスファルトの上は走りにくいのでは…と想像していましたが、まるでそんなことはなく、車重どおりにハンドリングも軽く、機敏かつ思いどおりに動かしやすい印象。純正タイヤは前後ともに細めのブロックパターンなので、オンロードだからといってハードに寝かせすぎることは避けたほうが無難ですが、気持ちいいツーリングレベルの走りであれば十分な接地感もあるし、フロントの旋回性も感じられるので、過度に身構える必要もありません。
ローダウン化により小柄な女子でもさらに足が着きやすくなり、しかも車体が軽いため片足あるいはつま先立ちでも支えやすく、単気筒エンジンなので低回転域でも粘りがあり、ハンドリングは軽快。これらの長所を考えると、KLX230シェルパSはバイク初心者が乗る最初の1台に最適。できれば避けたいところですが、仮に立ちゴケしちゃっても、タフで軽いシェルパならなんとかなりそうです。
一方で、これまでビッグバイクを楽しんできたベテランライダーが、セカンドバイクとしてチョイスするのも超オススメ。ビッグバイクではまず味わえない気軽さと俊敏性に、大満足できると思います!
ルックスは完全に“オフ車”だが、オンロードを機敏に走るのも得意。タフな日常の足としても活躍しそう!
低シートと標準装備パーツで林道デビューのハードルも下げる
エントリ―モデル/セカンドバイク/気軽なツーリングマシン/日常の足など、さまざまな用途に最適なKLX230シェルパS。でもそれだけで終わらせるには、ちょっとモッタイナイかもしれません!
というのもこのモデルには、オフロードビギナーが林道走行に挑戦してみたくなる装備が満載だから。ハンドガードは標準装備だし、ステップは最初からラバーレス仕様だし、前後ABSのキャンセルもできるし、S仕様は後輪がチューブレス化されているので、パンクの状態によっては修理も簡単です。
これはオンロードでも同じですが、車体は軽量コンパクトで、ハンドル切れ角は大きく、さらに足着き性も悪くないので、林道などのダートに踏み込んでみたけどダメだと思ったら、Uターンするのも簡単。押し引きも軽いので、あまりに厳しいときは一度バイクから降りちゃってもいいと思います。
今回集めた3台の中では、圧倒的にコンパクト。身長158cmでも両足の母趾球まで接地する。ただしハンドルはかなりワイドだ。シートが細く、オフでのライポジ自由度に優れる設計。
例えば、「ビッグアドベンチャーでワイルドな林道ツーリングに挑戦してみたいけど、ちょっとコワいんだよなあ…」なんて人が、オフロードのライディングスキルを磨くためのモデルとしても最適。でも私だったら、オフロードを走るならこれくらいで十分です。
走る/曲がる/止まるの基本性能は十分なレベルにあり、気軽さがたっぷり詰まっていて、オフロードデビューの憧れも叶えてくれそうな低シートシェルパ。まさに万能な1台だと感じました!
KLX230シリーズは大家族
ʼ26年型で、KLX230シェルパのS仕様と、シェルパにエンジンガードやリヤキャリヤなどを追加しながらミリタリーテイストに仕上げたKLX230DFが追加されたことにより、日本で展開されるKLX230シリーズは6バリエーションに増加!
KLX230シェルパ(‘25)
KAWASAKI KLX230シェルパS 車両解説
主要諸元■全長2080 全幅920 全高1125 軸距1355 シート高825(各mm) 車重136kg(装備) ■空冷4スト単気筒SOHC2バルブ 232cc18ps/8000rpm 1.9kg-m/6400rpm 変速機6段 燃料タンク容量7.6L ■タイヤサイズF=2.75-21 R=4.10-18 ●色:ベージュ、緑、灰 ●価格:66万円 ●発売日:’25年9月15日
ローダウン版オフスポーツのKLX230Sに、専用の外装類やアルミ製テーパーハンドルを換装し、ハンドガードやアルミ製スキッドプレートやスタックパイプを追加したのがKLX230シェルパ。その前後サスを変更してシート高を20mm下げ、後輪をチューブレス化したのがKLX230シェルパSだ。前後輪のABSをキャンセル可能。デジタルメーターはシンプルで、エンジン回転数は表示されないが、スマホ連携機能を備える。高張力鋼ペリメターフレームにアルミ製スイングアームの組み合わせ。
【動画】「軽二輪アドベンチャーの勢力図に異変!?」カワサキ KLX230シェルパS、岡崎静夏の試乗インプレッション
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