
ニッポンがもっとも熱かった“昭和”という時代。奇跡の復興を遂げつつある国で陣頭指揮を取っていたのは「命がけ」という言葉の意味をリアルに知る男たちだった。彼らの新たな戦いはやがて、日本を世界一の産業国へと導いていく。その熱き魂が生み出した名機たちに、いま一度触れてみよう。
●文:ヤングマシン編集部(青木タカオ) ●写真:カワサキモータースジャパン ●取材協力:ZEPPAN UEMATSU
【TESTER:青木タカオ】片岡義男小説で魅了されて以来、W1SAを25年間にわたって2台乗り継ぐバイク業界きってのWフリーク。
世界市場へ挑戦した当時最高の運動性能が魅力
前後に光る太鼓ウインカー、水中メガネといわれる一体式メーター、深く回り込んだ前後フェンダー、W1初期型に乗れるなんて、飛び上がるほど嬉しい。まず、機会を与えてくれたカワサキにお礼を言いたい。大げさかもしれないが、W乗りとしてこの歓びは生涯忘れられないものとなるはず。
というのも生産台数は3282台で、Sの4848台、SAの9870台、W3の4330台に比べると、いかに希少であるかがわかる。しかもコンディションは、今まで乗ったW系のなかでも抜群といえる好調さであった。
さて、まずエンジン始動だが、儀式とか洗礼などと言われがちだが、完調に整備されていれば、さほど難しいことではない。ただし、しっかりとした手順を踏むのが前提。
ガソリンコックを開け、ハンドル右についたチョークレバーは冷間時なら反時計回りに引き上げる。そして、キックアームを少し動かしてピストンを上死点か下死点に置けばいい。圧縮がかかって、アームを下ろすのが重くなるところだ。
キックアームは体重を乗せつつ、クランクが勢いよく回るよう思いきって下まで踏み込む。エンジンが目覚めたら、アクセルを少し開いた状態を維持しつつ、排気音の歯切れが悪くなると同時にチョークレバーを少しずつ戻すのを繰り返す。
レバーが戻りきって、アイドリングが600~800回転で安定する頃には、右サイドカバー部に位置するオイルタンクが暖まっているはず。ドライサンプ方式だから暖まったオイルをエンジンに供給したい。焦って走り出すのは禁物である。
走り出せば、360度クランクならではの等間隔爆発のパルス感が心地良く、トルクが右手と連動するほど良い塩梅。2000rpm以下でもトップ4速での巡航ができるほど低速からトルクが潤沢で、4000rpmまでは力強くスムーズに、軽やかさも感じるほどキレイに回っていく。
4段ギヤは英国式の右チェンジで、一番上のニュートラルからシーソーペダルを踏み込んでいくに従いアップ。
ハンドリングはS以降の前19インチよりクイックで、前後18インチや細身の後タイヤが身のこなしを軽くしている。また、S以降の2キャブ&キャブトンマフラーは弾けるような排気音でさらに勇ましく、それに比べるとモナカマフラーが奏でるサウンドは低音が効いてジェントルなもの。もちろん、現代のバイクに比べれば音量は圧倒的に大きく、迫力は凄まじい。
5000rpmからはニーグリップが甘いとステップから足が外れてしまうほどに振動が増して、北米市場へ果敢に挑戦した獰猛さが姿を見せだす。そんな荒々しさがまたW1の大きな魅力で、決して味わい深さだけではないから、発売から50年以上が経った今もファンの熱が冷めることがないのだ!
【1966 KAWASAKI 650-W1】
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