
ピアッジオグループジャパンは、’23年のミラノショー(EICMA)で世界初公開したモトグッツィのニューモデル『STELVIO(ステルビオ)』の受注を7月10日より開始した。8月より全国の正規販売店にて順次販売予定だ。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●外部リンク:モトグッツィ
水冷Vツインを搭載したアドベンチャーツアラー、ステルビオがいよいよ日本に上陸
このたび新発売となる『ステルビオ』は、モトグッツィの最新鋭エンジンとなる1042cc水冷V型2気筒を搭載するアドベンチャーツアラーで、フロント19インチ、リア17インチのクロススポークホイール(チューブレスタイヤ対応)を装着する。
ステルビオのエンジンは、先に発売されたV100マンデッロの水冷式と同じ『コンパクトブロック』だが、モトグッツィの縦置きV型2気筒初となる水冷エンジンの詳細をおさらいしておこう。
モトグッツィ従来の空冷縦置きV型2気筒エンジンは後方吸気/前方排気だが、水冷式コンパクトブロックエンジンではシリンダーを90度回転させて上方吸気/下方排気とした。これにより吸排気効率が高まるとともに、ライダーの足元のクリアランスを拡大。クランクシャフトの回転方向を従来とは逆となる右回転(時計回り)とし、同時にクランクシャフトを軽量化することでジャイロ効果を抑制、加減速時の挙動を安定させている。クラッチは湿式多板としてスリッパーシステムも搭載し、操作性と耐久性を向上させた。
オイル潤滑方式はウェットサンプで、オイルパンをリードバルブで分離することでクランクケース小型化を実現。これはクランクケース内のオイル量を減少させ、結果としてフリクションロス軽減効果も併せ持つ。
エンジンはV100マンデッロと共通だが、フレームその他はステルビオ専用に再設計されている。
駆動方式はやはりシャフトドライブだが、オフロード走行に対応するためアルミ製スイングアームをV100マンデッロよりも延長した。これによりシャフトドライブ特有のテールリフトはさらに抑制されている。また、6段ギアボックスは再設計され、よりスムーズなシフトチェンジを実現するとともに、クイックシフト(オプション)のパフォーマンスも向上した。
オフロード走行にも対応するべく、鋼管チューブフレームはステルビオ専用に再設計し、フロントアンカーポイントをV100マンデッロの2カ所から4カ所へと増設し、剛性を20%向上。キャスター角は24.7度から25.6度とし、ホイールベースは1475mmから1520mmへ延長している。
サスペンションは、フロントにザックス製46mm倒立式フォーク、リアにKYB製モノショックを装備し、前後ともにストローク量は170mmで、リバウンドとプリロード調整が可能だ。
ブレーキシステムはブレンボ製で、フロントは320mmセミフローティングダブルディスクにラジアルマウントモノブロックキャリパー、リアは280mmデュアルピストンキャリパーを備える。ブレーキ/クラッチともにレバーはラジアルポンプマスターを採用した。
電子制御デバイスでは、ライド・バイ・ワイヤの採用に加え、マレリ製11MPコントロールユニット、加速度センサーとジャイロセンサーによる6軸慣性プラットフォームを採用。ABSとトラクションコントロールはコーナリング対応だ。また、クルーズコントロールも搭載する。
ライディングモードは『ツーリング』、『レイン』、『ロード』、『スポーツ』、『オフロード』の5種類を持ち、各モードはエンジンマップは2種、トラクションコントロールは4段階、エンジンブレーキは3段階、ABSは2段階からそれぞれ最適なパラメータが設定されている。これらはデフォルト設定以外に、好みに応じて各パラメーターを微調整することもできる。また、トラクションコントロールはすべてのモードでキャンセルすることも可能で、オフロードモードでは前後輪のABSもキャンセルできる。
ヘッドライトはフルLEDで、デイタイムランニングライト(DRL)を備え、車体が傾斜している際にコーナーの内側を照射するコーナリングライトシステムを搭載。メーターパネルは5インチフルカラー液晶ディスプレイで、その横にはUSBポートを装備する。
ステルビオという名称は、モトグッツィの本社工場があるマンデッロ・デル・ラーリオからも近い『ステルビオ峠』(標高2757m)に由来する。この峠はヨーロッパで2番目に高さを誇るアルプス越えの峠で、幾重ものつづら折れで厳しい傾斜(平均斜度7%以上、最大斜度約15度)を登っていく。ヨーロッパの自転車乗り、バイク乗りの間では有名な峠で、週末には多くのライダーが訪れる観光名所である。また、モトグッツィが完成間近の開発車両のテストコースにしていたこともある、縁の深い峠だ。
モトグッツィは2008年に1151cc空冷V型2気筒OHC4バルブエンジンを搭載した『ステルビオ1200 4V』を発売し、10年間生産した。新型ステルビオは、7年間の空白を経て登場した後継モデルだ。
モトグッツィというとV7シリーズを筆頭とするロードスポーツのイメージが強いが、かつては小排気量オフロード車も生産し、’84年には空冷V型2気筒を搭載するV65TTとV35TTを発売。V65TTはパリダカールラリーでプライベーターが走らせたことをきっかけに、その後はモトグッツィもワークス参戦した経緯がある。’87年にはそのレプリカモデルで30Lの大型燃料タンクを装備したNTX750のほか、NTX650、NTX350を発売。’89年にはNTX750の後継モデルとなるクォータ1000(その後クォータ1100にモデルチェンジ)を生産してきた歴史を持っているのだ。
新世代となる水冷Vツインエンジンを搭載する新型ステルビオは、そんなモトグッツィの伝統を受け継ぎつつ、現代にアップデートした最新鋭アドベンチャーツアラーなのである。
MOTO GUZZI STELVIO
主要諸元■全長2195 全幅―― 全高945 軸距1520 シート高830(各mm) 車重246kg■水冷4ストロークV型2気筒OHV4バルブ 1042cc 116.6ps/8700rpm 10.7kg-m6750rpm 変速機6段 燃料タンク容量21L■タイヤサイズF=120/70R19 R=170/60R17 ●価格:242万円 ●色:バルカンブラック ●発売次期:2024年8月
MOTO GUZZI STELVIO
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(モトグッツィ)
電子制御スロットル採用でユーロ5+適合、走行モードやクルコン、トラコンなど電子制御も充実 ピアッジオグループジャパンは、EICMA 2024で初公開された新型V7シリーズの国内正式導入を発表。2025[…]
シャフトドライブでロングツーリングも安心なミドルアドベンチャーがアップデート 2023年のミラノショーで発表された新型V85TTは、翌年に上位グレードとなるV85TTトラベルが日本に上陸した。そして今[…]
ツーリング装備をプラスした長距離走仕様 2019年に初登場したモトグッツィ「V85TT」は、最新V7系853ccの縦置きV型2気筒エンジンを搭載したアドベンチャーツアラー。ロングツーリング仕様の「V8[…]
公式コミュニティ10周年記念のグラフィックをまとった特別仕様車 Moto Guzzi The Clan(モトグッツィ・ザ・クラン)は、モトグッツィの公式コミュニティで、入会するとモトグッツィに関する情[…]
バッテリーコンディションがいまひとつ…。Kナナゴー用バッテリーを載せたら、これがイイ!! 還暦をすぎた筆者は、大型バイクで気楽に走り回ることができない情けない体調…。リハビリのつもりでバイクいじりは積[…]
最新の関連記事(新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
フェイスリフトと前後サスペンションの再設定 ホンダが「XL750トランザルプ」の国内2025年モデルを発売する。CB750ホーネットに似た2眼ヘッドライトを新たに採用し、センターダクトを設けたウインド[…]
見晴らしがいい! オンロードバイクとアドベンチャー/オフロード/クロスオーバーなどの大きな違いのひとつは、走破性をよくするために車高が高くなっていること(最低地上高も同時に高まる)だろう。加えて、ステ[…]
AMAスーパークロス2位の実績を持つモトクロッサーのエンデューロ仕様が上陸! トライアンフが開発したオフロードマシンには、250cc4ストローク単気筒エンジンを搭載するモデルと、450cc4ストローク[…]
GT+にはY-AMTを標準装備 ヤマハは、今夏発売と予告していた新型「TRACER9 GT+ Y-AMT」を2025年5月28日に発売すると正式発表。今世代のトレーサー9 GTシリーズでモーターサイク[…]
3/14発売:スズキ「Vストローム800/DE」127万6000円~ スズキが製造する、並列2気筒エンジン搭載のミドルアドベンチャーが「Vストローム800」「Vストローム800DE」だ。 2025年モ[…]
人気記事ランキング(全体)
【ご注意】本記事は、エンジンオイルの過剰注入がエンジンに与える影響を確認するための実験であり、一般使用車両での実施や再現を推奨するものではありませんのでご了承ください。 オイルの規定量は守らなくちゃイ[…]
インフレの今、価格破壊王のワークマンがまたやってくれた! 春から初夏にかけ、ツーリングのシーズンがやってきた。爽やかな空気を全身に浴びてのライディングは最高だ。しかし…この期間はジメジメ・シトシトの梅[…]
その姿、まるでGB400TT MkIIの正統後継者! 欧州ホンダは、2025年も例年通りカスタムコンテスを開催。これは正規ディーラーがホンダ車をベースにカスタムを手がけ、オンライン投票で最優秀マシンを[…]
圧倒的に軽いCB1000Fコンセプト。足着き性も良好だ CB1000FコンセプトをCB1300スーパーフォアと比較すると、前者の方がコンパクトで引き起こしも圧倒的にラク。ただ跨ってみると意外と大柄な印[…]
フェイスリフトと前後サスペンションの再設定 ホンダが「XL750トランザルプ」の国内2025年モデルを発売する。CB750ホーネットに似た2眼ヘッドライトを新たに採用し、センターダクトを設けたウインド[…]
最新の投稿記事(全体)
1位:CB400FOURは前期型→後期I型/II型でなにがちがう? 1974年に初登場したホンダCB400フォアは、初代とそれ以降でなにが違うのかを紹介した。ご存じ初代モデルは全車408ccのために発[…]
“Neo Retro”ロードスポーツ:2016年モデル 発売は2016年4月15日。現代的ストリートファイターのMT-09をベースに、アルミタンクカバーなど金属の質感を活かした専用外装などでネオレトロ[…]
2003年モデル概要:MotoGP直系の先進技術を取り入れたSSとして登場 2003年当時、最先端のMotoGPマシンだった「RC211V」で培った先進技術とスタイリングを随所に取り入れ開発された。初[…]
歴史的な価値のあるパーツに使われることが多いマグリコート ホイールやエンジンカバー、といっても一般的な市販モデルではなく、アフターマーケットパーツやレース用のホイールやカバー類に使われることの多い、マ[…]
ネオクラシックながら”新しさ”で対抗 ヘリテージやネオクラシックと呼ばれるカテゴリーで、登場以来絶対的な人気を誇るカワサキのZ900RSシリーズ。現代スポーツネイキッドをベースに、名車Z1を絶妙にアレ[…]
- 1
- 2