
本誌1979年8月号に掲載されたある主婦のコラムを掲載。家族、亭主、バイクに対する愛が溢れていて、今読んでも共感できます。 ※当時のバイク文化をお伝えするため、表現や仮名遣いをそのまま掲載しています
●文:ヤングマシン編集部
頑張ってね、オトーサン!
●我家はごく平凡な4人家族です。自分は、オートバイに跨って生まれ出たと思い込んでるような亭主1人と、良くも悪くもそんな父親の影響を受けて育ちつつある男児2人、そんな3人を持て余し気味の私と、以上4人のメンバーです。
●世に言うオトキチは、相当の猛者揃いと聞き及びますが、うちの亭主の場合も腕前の程は知りませんが、精神構造の方では、決してひけはとらないのではないかと思います。
例えば、オートバイを欲しがる事です。世のオートバイ乗りの皆さん全部に言えることでしょうが、どうしてああ何台も持ちたがったり乗り変えたがるのでしょう。いっぺんに2台も3台も乗れるわけでもないのに、 1台あれば十分でしょうに。
うちのオトキチも御多分にもれません。大怪我をして、オートバイはやめた筈だったのです。それが足替りと称して、小さいのに乗り始めたのはよしとしても、長男の出産費用を叩いて大きなオートバイを買い込むに至っては、私もただもう呆れるばかりでした。これは、危くて心配だとか、高価なものをとか言ってやめさせられるものではないと納得させられました。オートバイが欲しくなり出すと心ここにあらずで話しかけても上の空、大きな溜息などつき出してくると、もういけません。こういう時は、あくまでも無視するか、さもなきゃ「思い切って買いなさい」と煽るのです。
そして「内職してもいいわよ」と協力的な素振りを見せます。いかにオートバイに狂っているとはいえ、我家の経済状態を知らぬ筈はありません。一週間もすれば、言わなくなります(きっとどこかで泣いてることでしょう)。しかし,この作戦も、時期や度合をよく考えてやらないといけません。一度など、ちょうど折り悪しくボーナス時期で、うっかり煽ったところ、次の日新車を連れてこられてしまった事がありました。 お金はオートバイの為にあると思っているらしく、二児の父親である事などはすっかり忘れてしまっているようです。油断大敵!
●続いては、ツーリングという一種の家庭放棄があります。週末ともなると、ツーリングに出かけるオートバイを見かけますが、うちの亭主も 「ああせめて3日間でもいいから行きたいなァ」といつもいつも言っています。そこで,私としても一度はオートバイ乗りが泣いて喜ぶツーリングの実態を調査せんと、渋る亭主を説き伏せて連れて行ってもらいました。生まれて初めてのツーリングで、最初は恐くて緊張しましたが、 段々と慣れてくると、町々の雰囲気はステキだったし、郊外に出ると、土や緑の香が、体中に染み込むようですばらしかったです。又、カーブをガリッとステップを擦りながら曲るのも、話に聞いてた通りスリル満点で、オートバイの楽しさに取り憑かれてしまいそうです。ツーリングに行きたがるはずです。
しかしそこで理解ある態度に出ようものなら、敵は図に乗る一方で家庭サービスという言葉は、全くの死語になってしまいます。我家の場合、小さい子供が二人いるという現実を忘れてもらっては困ります。世の父親ライダーは、せめて家族と過す時位は、オートバイの事など忘れて、子供の遊び相手になって欲しいのです。そうすれば、奥様もいちいち目くじらを立てたりはしないでしょう?
亭主の前では、あまり言いたくないけど、この間のツーリングは、想像以上にすばらしいものでした。帰り道、オートバイのお腹あたりから煙が吹き出した時など、こんなになりながら走ってくれたのかと思うとかわいそうになってしまい乗っているのが申しわけなくなりました。オートバイに対して、こんな気持を持てるなんて、思いもしませんでした。我家の息子達の場合、環境的にも、オートバイを避けて通るわけにもいきません。オートバイ乗りの父親を持ってしまったからには、オ ートバイの持つ魅力やすばらしさを教えてやりたいと思いました。
●しかし、そういうすばらしさと同じ位、危険な乗り物だという思いは拭い切れません。母親の本能的なもので、亭主はさておき、子供にだけは、危いことをさせるわけにいきません。うちの亭主のオートバイ仲間から漏れ聞くところによると日頃安全運転だと言っている亭主の乗り様は、かなり乱暴で、黄色の線の左側に居たことがないとか……。子供が大きくなり、オートバイに乗り出す時代へバトンを渡すランナーとし て、あまり評判の良くない事は慎しんで欲しいのです。現在のライダー一人一人に、次代を担う若人の熱い視線が注がれている筈です。今こそ衿を正して模範的ライダーでいてもらいたいものです。頑張ってね、オトーサン! (主婦) ※トップ写真は同時代のイメージで、本文とは関係ありません
出展はヤングマシン1979年8月号
※本記事は2018年10月14日公開の記事を再編集したものです。※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
NEW MODEL IMPRESSION[1985年9月号]トレールコース&一般道でテスト これがそう、これが本物のトレール・バイクなのだ。ヤマハから発売されたセロー225は、トレール・バイクの原点に[…]
「Z900RSのような伝統を継承するモデルは今後も投入する」 2017年末の発売以来、大型クラスで4年連続ベストセラーに輝き、いまだ人気の衰えないZ900RS。2022年に入って2気筒の弟分・Z650[…]
以下、ヤングマシン1974年9月号の『NEW MODEL TEST(カラー&グラビア) KAWASAKI 400RS』より。 ※編註:以下の復刻記事は当時の雰囲気を再現するために、明らかな誤字やWeb[…]
幻のVTターボを発見! 4輪でターボチャージャーがブームになる中、ホンダは’81年に輸出専用のCX500ターボを発売したが、国内向けにVT250Fにターボを装着したのがこれだ。YMでもその存在をスクー[…]
クロスビー/クーリー組が世界選手権鈴鹿8時間レース優勝 マン島2位、アルスター優勝でTTフォーミュラ世界チャンピオンとなり、イギリス国内では連戦連勝を続けているクロスビー。TZ750を2度も破って優勝[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
タンク容量をアップし足回りも強化〈2017|H〉 容量の多いXL1200CXロードスターの燃料タンクに換装し、オリジナルペイント+リフトアップ。シートはトランプ製で、リヤタイヤ手前でスラッシュカットさ[…]
レプリカブームの終焉で、新たな模索は都会派シングルスポーツ 1980年代後半、隆盛を極めたレーサーレプリカブームも峠を越え、絶対性能一辺倒のスーパースポーツから、ツーリングをイメージさせるカテゴリーな[…]
エンジンが暖まり、キャブレターのエンリッチナーノブを戻せば、アイドリングが低い回転で落ち着く。インジェクション化した2007年式以降はこうした手間は要らなくなった。 そしてアクセルを大きく開け、アグレ[…]
400ccクラスにおけるカワサキの存在感の大きさ 昨今はそうでもなくなったけれど、一昔前の400ccは日本独自の免許区分を前提とする排気量だった。そして新型エリミネーター(400cc)とニンジャZX-[…]
オトナの本格派向けスーパーシングル、マイノリティなコンセプトを貫いたヤマハ 1978年、初のトラディショナルな単気筒ロードスポーツのSR400/500がデビュー。その後’80年代に入ると、レーサーレプ[…]
最新の関連記事(新型ヘリテイジ/ネオクラシック)
キャンディエメラルドグリーンからキャンディミディアムレッドへ!! 噂通りのキャンディレッドだ! 1977年誕生のザッパーことZ650(B1)をオマージュし、キャンディエメラルドグリーンをまとって202[…]
K3登場後も”話題作り”が続いている?! ホンダGB350が大ヒット中のアンダー400ccクラス。以前から予想しているとおり、カワサキもこのクラスに新型ネオクラの投入を画策しているようだ。長年に渡って[…]
日本では4バリエーション・6色を発売。価格は97万200円〜 コンチネンタルGT650はクラシックバイクの雰囲気を持ち、現代としては希少な空冷パラレルツインエンジンを搭載。シリンダーのフィンや丸みを帯[…]
日本への導入はX350だけじゃなかった! ハーレーダビッドソンのブランニューモデルとして中間排気量の2モデルが海外発表され、日本への導入もあるのではないかとザワつかせていたが、このたびその2車「X35[…]
MT-09/SPは10月6日、XSR900は10月31日に発売 ヤマハの国内モデルを販売するヤマハ発動機販売は、クロスプレーンコンセプトの並列3気筒を搭載する大型スポーツバイクの「MT-09 ABS」[…]
人気記事ランキング(全体)
K3登場後も”話題作り”が続いている?! ホンダGB350が大ヒット中のアンダー400ccクラス。以前から予想しているとおり、カワサキもこのクラスに新型ネオクラの投入を画策しているようだ。長年に渡って[…]
【CB1000ホーネット】SC77エンジンでフルチェン?! 身近なプライスで登場か “ネオスポーツカフェ”をコンセプトに2018年に登場した現行型CB1000R。このフルモデルチェンジ版としてスタンバ[…]
「ボアアップ」・・・ 排気量を上げてエンジンパワーを増大させる、なんとも甘美な言葉ではないでしょうか(ウットリ)。 本来、ボアアップキットはとても高価なアイテムですが、近年ネット通販の普及もあって、あ[…]
ロングセラーが電子制御の充実で正常進化して、国内初登場 ヴェルシス650は、以前のモデルは輸出専用モデルとして海外で販売されてきたが、2022年モデルで待望のフルモデルチェンジを果たし、日本への導入も[…]
慣らし完了のスーパーカブでツーリング三昧の日々 慣らしが終わったスーパーカブの1ヶ月点検が先日完了し、今も不具合もなく絶好調なバイクライフが続いています。 妻と一緒出かけることが増え、アイスを食べに行[…]
最新の投稿記事(全体)
バーグマン400ベースの水素エンジン車! スズキは来たるカーボンニュートラル時代に向けてさまざまな選択肢を研究するなかで、水素エンジンの研究開発にも取り組んでいる。同じく世界初公開される「eチョイノリ[…]
ホンダは、全世界のホンダ二輪販売店サービススタッフを対象とした技能コンテスト「Honda Global Motorcycle Technician Contest(ホンダ グローバル モーターサイクル[…]
透明シリコーンゴムで強力防錆。樹脂にも使えるサビンラップ 金属パーツをサビから守るには、水分を近づけないのが最善だが、屋外で使用するバイクやクルマはそうもいかない。ワックスやコーティングは、美観向上に[…]
動画はコチラ→スズキの超新星! GSX-8SはライバルMT-07とはぜんぜん違った!? 試乗インプレッション[…]
タンク容量をアップし足回りも強化〈2017|H〉 容量の多いXL1200CXロードスターの燃料タンクに換装し、オリジナルペイント+リフトアップ。シートはトランプ製で、リヤタイヤ手前でスラッシュカットさ[…]
- 1
- 2