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Z400RSまで待てない!『1974年、カワサキ「400RS」がライバルたちにもたらしたもの』【復刻】

21世紀の現代にも通じる、未来を見据えたマシンとして1974年に登場したカワサキ400RS。その詳細なインプレッションは前回の記事で紹介したが、当時のライダーたちは“体感加速”や“バイブレーション”についてどのような見識を持っていたのだろうか。それらをうかがい知ることができるライバル比較記事をお届けしたい。

●文/写真:ヤングマシン編集部

以下、ヤングマシン1974年9月号の『NEW MODEL TEST(カラー&グラビア) KAWASAKI 400RS』より。

※編註:以下の復刻記事は当時の雰囲気を再現するために、明らかな誤字やWeb向きでない特殊な記号を除いて原文の仮名遣いを可能な限り踏襲しています

ヤングマシン|1974年9月号

YOUNG MACHINE 9 / 1974
“クールヤングのオートバイマガジン”を謳う、創刊2周年を間近に控えた当時のヤングマシン。当時は輸入車を巻頭グラビアに掲載することも多く、この号では1937年の“エクセルシャー・マンクスマン”の姿やドゥカティ750SS、ドゥカティスクランブラーの姿も。誌面はモトチクリスモ誌の協力によるTZ700の試乗レポートなどテンコ盛の内容で、当時著名なトライアルライダーのひとりだった櫛谷久さん(現クシタニ会長)によるトライアル教室・第4回も掲載していた。 [写真タップで拡大]

400RSのライバルは? その1●カワサキ400SS

ここではRSの登場によって同排気量の先発車種400SSにどのような影響があるか……ということについて考えてみたい。

ヤングマシン|1974年9月号

NEW MODEL TEST「カワサキ400RS」 [写真タップで拡大]

SS(S3)もRS(KZ)もカワサキの同じ工場で造られているわけだが、現在国内の同一タイプ(ロードとかオフロードとかの)で2アンド4の組み合わせは4社中でもこれだけである。ただし前例はある。750クラスで名称も同じSS(H2)とRS(Z2)のカワサキコンビであるがH2の国内販売中止にともない2アンド4は一時消えていた。このスケールダウン版が今度の新コンビになったわけだ。

2つの異なったエンジンユニットで個々のメカのもつ特性、有効性を重んじた手法が思想上の根幹を形成しているのはいうまでもない。H2は“世界最速のロードスポーツ”の異名が与えられるほど、熱的に疑問視されていた空冷3気筒のメカですぐれたスプリンターぶりを披露したものだ。またZ2は現在カワサキ車のベストセラーに輝いている。DOHC4気筒のもたらす落ちつきはらった重厚感はまさに圧巻である。

さて、本テーマの400の場合では、S3が登場した昨年11月、我々が大いなるイメージ・チェンジで面喰ったことはまだ記憶に新しい。5000rpmからの加速感はあのH2に通ずる“マッハの血”であり、ライダーをシビレさせる魅力は十分にある。それにプラス低速性能の向上で日常の使用範囲は拡大された。350のS2のマイナス面はすっかり返上してエンジンの扱いやすさを得た。H1とH2とでは排気量の大きいH2のほうがエンジンに余裕をもち、その余裕で低速ではH1よりもはるかに乗りやすさを感じた例からみても、S3が100cc大きいH1よりもすぐれているのはイメ・チェン最大の産物。最大出力はKZの35psより7ps大きいだけだが、実際に走った感じでは15ps位は違うような加速をみせる。これは2と4のメカの差によるものだが、同じメカに置き換えてみると排気量の差は250/400よりも大きいと思われる。もっともKZにはバランサー機構があり、振動が少なく感覚的には不利ではあるが、ともかく体にはそう感じられる。S3でもエンジンをラバーマウントして手や足がはずれるような振動は解消されているが、まだわずかにラバーを介して伝わり、それがメカ・サウンドと相まってフィーリング向上に大きな役割を果たしているのも見逃せない。

性能的にはS3が完全にKZを上回っているが、低速でも使えるS3がKZに差をつけられるところがある。それはKZの性格「乗りやすさ」「騒音・排気などの公害対策」。

オイル消費量は改善されてクルージングではほぼ無煙で走れるが、加速時に発生する煙はS3に限らず2ストロークエンジンの宿命的欠陥であり、4ストロークとの比ではない。

まだ始動は、セル機構をもたないS3の場合、踏力が軽いとはいえ、毎度キックしなければならない手間が要る。シート形状と、3気筒の幅広いクランクケースで停車時の接地にはKZよりも長目の両脚を要求し、軽量で同寸法のS3を大柄にみせる。

以上のように、カワサキのS3とKZは、400ccの市場で同じロードスポーツに属するライバルには違いない。

しかし、この2車のもつ個性は互いに尊重すべきものがあることから、KZの出現は、いままでS3では不可能だったCBの領域を切りくずす有望な相棒を得たことになる、というように考えた方が妥当だろう。

(植田)

400RSのライバルは? その2●ホンダCB360T

CB360Tは現在のモデルにいたるまでに長い歴史をもち、その間に何度かのモデルチェンジを経ながら熟成されてきたことから商品としての完成度は高い。

ヤングマシン|1974年9月号

NEW MODEL TEST「カワサキ400RS」 [写真タップで拡大]

オリジナル当初には高性能スーパースポーツの名をほしいままにしていたが、2ストロークの同クラス他車が性能面で安定、高性能化し、加えて3気筒マルチが出現するにおよんでCBの高性能という看板は目立たない存在になってしまった。これが排気煙を出さない、力強いエキゾーストサウンドに魅了される一部の熱狂的4ストロークファンを失望させる要因になっていることは確か。

305cc→324cc→356ccへと次第に排気量増大をはかってきたCBは、かって36psの高出力をあたえられたこともあったが、現モデルのTでは31psへと低められ、リッター当たり馬力は大きくダウンしている。しかしこのクラスに前輪ディスクブレーキを持ち込んだのはCBが最初。Tでは6速ミッションを備え、スタイルもテールアップマフラーにするなど安全面・装備面での充実はいきとどいている。

こうして部分的にみれば、進歩するところと退化するところの相反する2つの面をもっているのが360Tだといえる。

エンジン性能では確かに“退化している”といわざるを得ないけれど総合的にみたCBの方向は2ストローク車たちとは違ったところで、「安全性・公害・乗りやすさの追求」に重点が置かれている。現在のロードスポーツの主流からはずれて、一歩前進したところにある。いいかえれば、ニューモデルのカワサキ400RSがこのCBと目的を同じくするものである。

今まで4 or 2で車種を選び、CBに流れていったもの、またはそのようにせざるを得なかった4ストローク支持者にRSは二者択一のチャンスをあたえてくれたことになる。

新参者RSはCBの独占する市場にはいり込もうという意志をもってはいるが、先輩格のCBを完全に模倣するのは避けている。メカ的にはバランサー機構を、スタイルでは落ちつきを備えて特色をうち出している。

CBの軽快なスタイルはそのまま軽快な、乗りやすい走行フィーリングと一致する。6速ミッションをもっていても中・低速でトルクのあるエンジンは6速/30km/hのトップスピードを可能にする、また、強制開閉のCVキャブを開けてやればレッドゾーンの9200rpmは誰でも経験できることだ。エンジンの使いやすさは両車ともほぼ同じレベルにある。

ただ、振動の発生はバイブレス機構をもったRSの方が低速から高速まで全般的に少ない。が、CBの振動は全回転域でライダーの忍耐力をうち破るほど大きくはなく、80km/hのクルーズでは風を切って進むライダーに「オレはオートバイに乗っているゾ」という実感をあたえるのに丁度よい。つまり、ある程度のバイブレーションはスピード感・加速感など、精神的な感覚性能の必要不可欠なファクターになる。CBの場合はまさにコレに適合している。

CBの装備重量172kgは約10kg軽く、ポジション・エンジン・サスのかねあいで走行感覚は軽快なもの。スラローム時の運動性も同じ。ただし、市街地ではシートの高さが気になる。

RSの登場によってCBの育成した独占市場に大きな影響があることは間違いないだろう。両車にコミューターとしての価値が共通する一方で、個々の持ち味は生かされオーバーラップすることはない。

(植田)

400RSのライバルは? その3●ヤマハスポーツTX500

国産オートバイ全体の設計傾向が二輪車に対する社会的反省を背景に乗りやすさへ、安全性への配慮へと流れていくなかで、TX500は昨年4月、少しばかり経路の変った登場をした。

といっても、ことさら乗りにくいとか安全対策に不備があるということではけっしてない。ただ、走る楽しみ、オートバイの本来もつ特性が社会的大義名分の前に全面降伏していない、ということである。

TX500発表の席で、ヤマハの技術者は“モーターサイクルらしさとスポーツ性を強調するため、よりコンパクトに、そして軽快に設計した。TX500は2ストロークロードスポーツRD350の4ストローク化である”といった。そして、エンジンは4ストロークでも、TX750とRD350の中間点よりはRDにより近いイメージを描いた、ともつけ足したものである。

400SSというものがすでにありながらあえて4ストロークエンジンの特性を生かすために生まれた400RSとは、出発時点の発想から異っているわけである。

TXのエンジンはバルブ作動用のカムシャフトを2本置くDOHC、バルブはシリンダー当り吸排気各2ほんずつの計8本、振動対策バランサーウェイト組み込み、とセールスポイントにはこと欠かない。

パワー特性の違いは、たとえばクランク配置にみられる。同じツインでもRSは360°であくまで低中速を重視し、TXは180°で高回転を効率的に引き出そうとしている。当然、トップスローのききにくい性格となり、混雑した市街地におけるかんまんな加速減速はギクシャクして得意ではない。とくにスロットル開閉に対するエンジンの反応が急激でショックをともないやすい。これは、4000rpm以下の低中速回転域ではほとんど実用的なトルクを発生しないためでもある。そのため、市街地でひんぱんなクラッチ操作とギアチェンジを必要とし、落ち着きのないうるさい走り方になりやすい。

高速道路はどうか。法定80km/hをキープすると5速でタコメーターは4300rpm前後を指している。この回転域ではまだ十分にトルクが出ていない。そのため、エンジンはもう少し回転を上げてほしいという欲求不満を現わし、ライダーにも1段シフトダウンしようかという迷いが生ずる。テストに同行した400SSとハスラー250(1000kmテスト車)にとって中央高速道での80km/hは快適そうにみえたが、TXにとってはたえず法定速度を突破したい衝動を抑えながらの走行となった。試みにスロットルを開けてみる。80km/hから加速する場合でもやはり4速に落としたい。すると一気に2コのメーターの針は上昇し、まさにTXのための世界が開けてくる。400RSではあまりはっきり聞きとれないバランサーの回転音ガカン高く発生し、速度感覚を刺激する。しかしたちまち、これはアウトローの世界だという意識に呼びもどされなければならない。

これほどぜい肉のとれたスリムなプロポーションと素直な操縦性、そしてシャープなパワーを身につけた4ストロークモデルはほかにはちょっと見当たらない。

しかし、オートバイが本来そなえているはずの熱いハートを素直に表現するTX500にとって、今の日本の交通事情はまったく寛容ではない。そこれはじめから発想を転換し、フラストレーションを六甲山のかなたに投げ捨てて出現したのが400RSということになる。両者のひらきはそれほどに大きいのだ。

(矢沢)

400RSのライバルは? その4●トライアンフ・デイトナ500

輸入モデルの中で400RSのライバルとなりうるのは?と考え、多少ムリがありそうにも思えたもののとにかく試乗したのがトライアンフ・デイトナ500。これはT100Rと呼ばれる72年モデルで、典型的な英国スタイルのOHVバーチカルツインである。

ヤングマシン|1974年9月号

NEW MODEL TEST「カワサキ400RS」 [写真タップで拡大]

エンジンはボア・ストロークが69×65.5mmの490cc。圧縮比9:1をとりアマル26mmのキャブレターを各シリンダーに装着して最高出力40ps/7200rpmを生む。

車体関係では、フレームに国産大排気量ロードスポーツにはみられないシングルクレードルを採用しており、車重の軽減とスタイリングに寄与させている。ホイールはフロント3.25-19、リヤが4.00-18、ブレーキはフロントにドラム径200mmの2リーディング、リヤは片ハブ式で180mm径。

全体的なスタイリングは同クラスの国産車に較べると非常にスリムで重量車としての雰囲気を漂わせながらも車重は160kgと軽い。これで最高速度は160km/hとカタログには記されている。

試乗車は、マフラーがオーナーの好みからキャブトン型に変えられており、いい音質だが大音響を発していた。しかし、そのほかはオリジナルのまま。

イグニッションをオンにし、ティクラーでキャブにガスを送り込んでやってから体重をかけてキック。このタイプのエンジンはスロットルを全閉にしておき、キックペダルを踏み下ろしたと同時にスロットルを開けるという手続きをふまないと、とくに冷態時には始動しない。セルボタンひと押しで回り出す国産車に鳴れた人には容易にかけられないだろう。

ポジションは、またがってすぐ体になじむようなものではなく、尻の下を風が吹き抜けるような、いかにもまたがりました、という違和感が先に立つ。

スイッチ類も、ウィンカーなどはハンドルバー左の貧弱なものを上下に倒して操作するもので、初めのうちは操作のたびに、ハテ左折は上だったか下であったかと考えてしまう。

右チェンジ、左ブレーキにも当然慣れは必要、緊急時には逆の操作をしかねない。イギリス車が伝統的なパターンを主張している間に世界市場から後退していく物的証拠?をみせられるかのようだ。

扱いやすさ、乗りやすさという点ではどうひいき目にみても国産車と格差の大きいデイトナだが、ひとたび走り出すとその走行フィーリングはやはり捨てがたいものがある。アクセルがとんでもなく重いため、手首と神経が無駄に疲労するが、中速域では自らの存在を確認しながらライディングを楽しむことができる。もちろん400RSを含めて、国産車はすべからくこのフィーリングを忘れてしまっている。よりスピーディに、よりイージーに、そしてちょっぴり安全に走ることが先に立ち、なぜオートバイに人が乗りたがるのか、というファンタジックな疑問に素直に答えてはくれなくなっている。

デイトナから下りたときに、やはり400RSのライバルとして引き合いに出したのはおカド違いもはなはだしかった、ムリがあった、と思わざるを得なかった。

400RSは二輪車を今後のトランスポーターとして、またコミューターそして実現しようとしたものであり、一方デイトナは、われわれの意識と生理の中にモーターサイクルに対するノスタルジアが今も息づいてことを再確認させるリトマス試験紙であったのだ。

(矢沢)


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