今も絶大な人気を誇る’80年代の名車たち。個性の塊であるその走りを末長く楽しむには、何に注意しどんな整備を行えばよいのだろうか? その1台を知り尽くす専門家から奥義を授かる本連載、今回はすべてを一新した第2世代の空冷Z「カワサキZ1000J/R」をあらためて紹介する。まずはこの名車の特徴と歴史について振り返ろう。
●文:中村友彦 ●写真:富樫秀明/YM ARCHIVES ●取材協力:ブルーサンダース
- 1 全面的な改革によって大幅なレベルアップを実現
- 2 多種多様なバリエーションモデルを展開
- 3 中古車相場は150~600万円:Rシリーズ以外も着実に上昇中
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全面的な改革によって大幅なレベルアップを実現
第2世代の空冷Zとして、’81年にデビューしたZ1000Jは、既存のZ1系の問題点を解消し、ライバル勢へのアドバンテージを広げるべく、ほぼすべてのパーツを新設計したモデルだ。当時の開発陣がもっとも重視したのは、軽量化とパワーアップだったが(Z1系の最終型=Z1000Mk.Ⅱの乾燥重量245kg/最高出力93psに対し、Z1000Jは230kg/102ps)、エンジンのラバーマウント化や気化器の刷新を行い、安定性重視のディメンションを採用した第2世代は、快適性や扱いやすさでも大幅なレベルアップを実現した。
第1世代のZ1系を継承する形で、第2世代のZ1000Jはレースでも強さを発揮し、’81/’82年には世界耐久選手権とAMAスーパーバイクでシリーズチャンピオンを獲得。また、’82年からアメリカで警察用バイクとして採用され、20年以上に渡って生産が続いたことも、Z1000Jの素性を語るうえでは欠かせない要素だろう。
もっとも、’90年代から空冷Zの再評価が始まる中で、第2世代の人気は、全体として見るとなかなか盛り上がらなかった。具体的な話をするなら、第1世代の各機種に熱烈なファンが存在するのに対して、第2世代で突出した人気を獲得したのは、’82年に北米市場で900台が限定販売されたエディ・ローソンレプリカのZ1000R1のみで(2位は後継車のZ1000R2とZ1100R)、スタンダードのZ1000Jと、その兄貴分に当たるZ1100GPは、空冷Zの中では不人気車…と言っていい存在だったのだ。
ただし、世界的な旧車ブームが影響を及ぼしたのか、近年になってZ1000J/GPの価格は急上昇。ひと昔前のように2ケタ万円で購入するのはほぼ不可能で、程度が良好なら150万円以上が珍しくなくなっている。
「JとGPを含めて、ここ最近の旧車の価格高騰はちょっと常軌を逸していると思います。でも現行車とは異なる世界が楽しめること、程度が良好な中古車が減ってきたこと、2輪の価格が全体的に上がっていることを考えれば、やむを得ない…気はしますね」
そう語るのは、今回の取材に協力してくれたブルーサンダースの岩野慶之氏。空冷Z全般に精通する同店では、市場の動向に左右されることなく、創業当初から数多くのZ1000Jの整備とカスタムを行なっており、岩野氏はすべての空冷Zに対して、ニュートラルな視点で接している。
多種多様なバリエーションモデルを展開
第1世代では1機種が2つの役割を兼務していた空冷Zだが、第2世代では、J=プロダクションレースの排気量規定に適合するスポーツモデル、GP=並列4気筒のフラッグシップ、という役割を担当。GPは旗艦としての高級感を構築するべく、気化器を燃料噴射とし、J以上に安定性重視のディメンションを導入した。なお第2世代の空冷Zは、スクエアスタイルが標準だったものの、’81年型Jの北米仕様は丸タンクを採用した。
Jの派生機種となるRの特徴は、ビキニカウル/段付きシート/ゴールドにペイントされた前後ホイール/リザーバータンク付きリヤショックなど。排気系は、北米仕様が4-1式のカーカー製で、欧州仕様はオーソドックスな左右出しだ。
’70年代中盤以降の空冷Zは、2~3年で新型車にバトンを渡すのが通例で、GPは’82年、JとRは’83年、それらの後継車に当たるZ1100R/GPz1100は’85年に販売が終了。ただしZ1000Jをベースとする警察用車両・Z1000P=ポリスの生産は’05年まで続いた。
中古車相場は150~600万円:Rシリーズ以外も着実に上昇中
ひと昔前はR仕様を作るベース…という扱いが珍しくなかったZ1000JとZ1100GPだが、近年は安くても150万円台、程度が良好な個体なら200万円以上が一般的になりつつある。’82年以降に登場した他の空冷Zの中古車相場は、Z1000R1=500万円以上、Z1000R2/Z1100R=200~500万円、GPz1100=150~250万円。
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