初代生誕100周年という記念すべき年にフルモデルチェンジし、’22年モデルとして日本に上陸したインディアンのパフォーマンスクルーザー・新型チーフ。同時に登場したバリエーション3機種のうち、最もミニマルな装備の「チーフダークホース」に試乗した。
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:インディアンモーターサイクル
「エンジンも車体も、可能なかぎりシンプルにしたかった」 デビューから100年の節目に復活した「チーフ」は全3モデル。「チーフダークホース」「チーフボバーダークホース」「スーパーチーフリミテッド」だ。エ[…]
とことん無駄を削ぎ落とした美しいスポーツクルーザー
ここまで”無駄を削ぎ落とした”というフレーズが似合うバイクもないだろう。走るために必要な最小限のパーツのみで構成されており、この潔いまでのミニマルなスタイリングは、バイクのことをよく知らない人ですら魅了してしまうはずだ。
搭載されているのは1890ccの空冷49度Vツイン、通称「サンダーストローク116」だ。162Nm(16.5kg-m)という途方もない最大トルクを、わずか3200rpmで発生するという。このとんでもないスペックを聞いただけでも身構えてしまうが、いざ意を決して走り出すと、いつしか畏怖の念は薄まっていた。
ライディングモードは、出力特性の穏やかな方からツアー/スタンダード/スポーツの3種類が用意されており、まずは中間のスタンダードモードで発進する。ほぼ2000cc近いVツインでありながら、アイドリングの900rpm付近でクラッチをつないでもスナッチせず、スムーズに走り出せることに驚いた。クラッチレバーの操作力は意外にも軽く、シフトチェンジもスムーズ。こうした細かな部分に緊張を強いられないだけでもありがたい。
高速道路に入り、少しだけスロットルを大きく開ける。すると、まるでアスファルトの上を滑空しているかのように加速した。このエンジン、驚くほど振動が少なく、かすかにVツインの脈動感が混じるといった雰囲気だ。トップ6速/2000rpmでの速度は約90km/hで、ここからでもスロットルを開ければフワッと豊かなトルクでスピードを上げ、しかも体に伝わる脈動感が実に心地良い。
サンダーストローク116の持つトルクをおおよそ把握したところで、今度はスポーツモードに切り替える。だが、これが大きな間違いだった。先ほどと同じような感覚でスロットルを開けたところ、背中がのけぞるほどの怒濤の加速を見せたのだ。まさに突進とか追突されたと表現できるもので、ボタン操作ひとつでこのエンジンは本性を現した。これと比べると、ツアーモードは排気量が半分になったかのような穏やかさであり、それでいてスタンダードモードで感じた豊かなトルクフィールは健在。ここまで性格を豹変させるエンジンは稀であり、インディアンの技術力の高さと遊び心を見せつけられたようだ。
ハンドリングも優秀だ。新型チーフ3機種の中で唯一、フロントに大径の19インチホイール(他は16インチ)を履くが、スタイリング優先のクルーザーにありがちな低速域での切れ込みは一切なく、すべてのシチュエーションで非常に扱いやすい。シートにほぼ全体重が載るライディングポジションだが、リヤショックは短いストロークの中でうまく衝撃を吸収してくれ、乗り心地に不満はない。ブレーキは、リヤにφ300mmというフロントと同径の大きなディスクを採用していることもあり、リヤを主体としたクルーザーらしい使い方がしっくりくる。とはいえ、フロントも十分以上に制動力が高く、エンジンパワーと車重に見合うブレーキシステムと言えるだろう。
さて、冒頭で”無駄を削ぎ落とした”と言ったばかりだが、それはあくまでデザイン面であり、電脳の部分ではむしろ先進的だ。キーレスイグニッションに始まり、今や必須と言えるUSB電源ポートももちろん備えている。クラシカルな丸型メーターはなんとタッチスクリーン式で、2種類のアナログ風メイン画面を用意するほか、スマホをブルートゥース接続してオーディオを操作することも可能なのだ。
インディアンにとってチーフというモデルは特別な存在であり、その思いはスタイリングだけでなく走りにも込められている。ぜひ多くの人に知ってほしい秀作だ。
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